1979年、ザ・ドリフターズの人気番組「8時だョ！全員集合」（TBS系）で、子供たちに大流行したのが加藤茶と志村けんのコンビによる「ヒゲダンス」だ。
鼻ひげに黒いえんび服姿の加藤と志村が、軽快なリズムに合わせて、ペンギンのように下に伸ばした両手を上下させながら登場すると、それだけで拍手喝采だ。そして、一人が投げたグレープフルーツを、もう一人が剣で刺すといった大道芸を披露するわけだが、子供たちは学級会で牛乳の早飲みなどの形でまねをしたものだ。
BGMとなった曲は「『ヒゲ』のテーマ」としてレコード化されるが、元ネタは米ソウル歌手のテディ・ペンダーグラスの「Do Me」というアルバム収録曲だからシブすぎる。作曲はフィリーソウルの代表的な作家チームであるギャンブル＆ハフ。これだけみても、志村のR＆B、ソウルへの造詣の深さがうかがわれる。
10月には、学校ドラマのエポックメーキング的な作品が誕生する。それが「海援隊」の武田鉄矢（75）が主演を務めた「3年B組金八先生」（TBS系）だ。金曜の夜8時からの放送だから「金八」というわけ。
このころの金曜夜8時といえば、「太陽にほえろ」（日本テレビ系）と「ワールドプロレスリング」（テレビ朝日系）があり激戦区だったが、生徒の妊娠を描く「十五歳の母」など衝撃的なテーマを扱い、最終回で最高視聴率39・9％（ビデオリサーチ調べ、関東地区）を記録する人気となった。翌年放送された「第2シリーズ」では深刻化する校内暴力を取り上げ、やはり最終回は34・8％という驚異的な数字をたたき出している。
このドラマからはいわゆる「たのきんトリオ」（田原俊彦、野村義男、近藤真彦）といった人気アイドルを生み出すことになる。
この年、「機動戦士ガンダム」（テレビ朝日系）が放送されたが、視聴率が振るわず全52話の予定が全43話となった。また関西ローカルだが現在も続く「おはよう朝日です」（ABCテレビ）が始まったのもこの年。紙ふうせんの歌う「朝（あした）の空」と聞いてから登校する小学生は多かっただろう。
8時だョ！全員集合 1969年10月4日～71年3月27日、71年10月2日～85年9月28日にTBS系で土曜日夜8時から放送された。「ヒゲダンス」のほか「早口言葉」や「カラスの勝手でしょ」「ちょっとだけよ～」など多くのギャグをはやらせた。