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ぴいぷる マリンバ奏者・出田りあ マリンバの可能性を響かせる 初アルバムをリリース「日常をちょっとだけ彩ることができれば」

zakzak by夕刊フジ 2024年8月14日 11時0分

幼い私の目線は鍵盤と同じ高さ

凜とした美しさを持った人だ。その気高さで、マリンバの音色も澄みわたるかのようだ。

新たな可能性を求め続けるマリンバ奏者は世界的にも珍しい。父は作曲家・指揮者で平成音楽大学学長の出田敬三氏、母はピアニストという音楽一家。

「たぶん、私が母のおなかの中にいたときから、音楽に触れていたんだろうな。よちよちと歩くようになってからは、音楽がかかると菜箸を持ち出して、指揮者のまねごとをしていたらしいです」

マリンバを初めて目にしたのは6歳の頃。

「父が興味を持っていた楽器だったようで、その父から『木琴する?』と言葉を掛けられたのがきっかけでした」

同時にピアノも始めたが、椅子に座ってじっとしているのが苦手。むしろ動き回って演奏できるマリンバのほうはお気に入りになり、どんどんと魅了されていった。

「マリンバはとても大きくて、幼い私の身長と変わらないくらい。ちょうど目線は鍵盤(音板)と同じ高さ。たたくとポコっと揺れてかわいくて…。でも、そのままではたたけないので、近所の大工さんに作ってもらった足台に乗って練習するうちに、とりこになっていきました」

一度聴いたら譜面がなくても奏でることができるという特殊な才能を持っている。

「中学の頃から大ファンのドリームズ・カム・トゥルーの『LOVE LOVE LOVE』をどうしたらきれいに演奏できるかと工夫するなど、マリンバの曲が少なかったおかげで、ギターやバイオリンなどの楽譜をアレンジして、勉強していましたね」

高校在学中にフランス留学を決めてからは、活動の拠点は海外。世界のトップアーティストと共演を重ねてきたが、いよいよ日本で本格的に演奏活動を開始。6月に初のアルバム「SUGARIA~シュガーリア」(WISTERIA RECORDS)をリリース。

「マリンバの音色はナマのほうがいいと思っていたのですが、安定したマリンバの響きを残すことができました。今回のレコーディングでCDの魅力にも気づかされました」

多彩な表現力と原曲の美しさを壊さない自由自在な編曲。繊細で心地よい揺らぎに満ちた表現力と華麗なマレットさばきは打楽器という概念を一瞬で覆される。

「通勤のときや、夕食後のワインタイムなど大人の夜やドライブにも。それぞれの生活に溶け込んだBGMになれば、日常をちょっとだけ彩ることができれば、と意識しました」

次の世代の人の道しるべ目指す

アルバムには、マリンバとの音楽人生の中で印象に残った曲や影響を受けた曲を収録。

「アルバムタイトルと同じ『Sugaria(全3楽章)』は、パリで勉強していたときの恩師(エリック・サミュ)が私の名前をタイトルに込めてくださったコンチェルト。焼きたてのクロワッサンのようにフワッと包み込んでくれる音楽で大切に弾いていきたい」

アルバム発売を記念したコンサートも6月に東京で開催した。

「長女、長男がお留守番できるようになったので日本の活動を少しずつ多くしています。9月8日の沖縄(南城市文化センター・シュガーホール)と、10日の熊本(ラフカディオホール)では、ジャズ・バーで昨年共演した仲間と演奏します。さまざまな楽器とのコラボレーションなども増やしていきたい」

プロのマリンバ奏者として20周年を迎えたが、「マリンバの魅力」を尋ねると…。

「シロホン(木琴)と違い、共鳴管があることで音が豊かに響くのがマリンバ。楽器の音はドラマやCMなどに使われていますが、見たことがある人は少なくて。ソロもできる楽器でもあり、マリンバの可能性を広げていきたい。次の世代の人たちへの道しるべになれれば、と思っています」

■出田りあ(いでた・りあ) マリンバ奏者、アレンジャー。1982年12月25日生まれ、41歳。オーストリア・ウィーン出身。2歳から熊本に移り住み、6歳でマリンバとピアノを始める。九州女学院高等学校(現ルーテル学院高校)を卒業し、フランスへ留学。パリ・コンセルヴァトワール(CNR)で学ぶ。2003年、第1回パリ国際マリンバコンクールで第1位を受賞。12年からミュンヘン室内オペラの専属アーティストとして活動。平成音楽大学、ロンドン芸術アカデミー(LPMAM)の客員教授を務め、世界各地で活躍を続ける。夫はバイオリニストでベルリン・フィルハーモニー管弦楽団コンサートマスターの樫本大進。ドイツ・ベルリン在住。

<ペン・高山和久/カメラ・酒巻俊介>

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