国民の手取りを増やす「年収103万円の壁」引き上げを掲げる国民民主党が22日、少数与党の自民、公明両党に具体化への協議再開を迫った。石破茂首相率いる自民党は抑制にこだわり、公明党と回答を保留した。立憲民主党の野田佳彦代表も「財政に責任を持つのが、あるべき態度」と述べるなど与野党の「反減税派」の動きも活発化している。「増税・高負担路線」脱却を求める国民の厳しい視線が集まる。
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「協議を早期に再開し、前進させなければならない」
国民民主党の浜口誠政調会長は3党会談後、自公与党に壁突破の具体案を明示するよう求めたことを明かした。これに対し、自民党の小野寺五典政調会長は「かなり重い話」「政局よりも、(何が)国民生活に一番資する政策か検討し、前に進めたい」と慎重な姿勢だ。
「壁」の突破をめぐっては昨年末、自公国幹事長が「178万円への引き上げ」で合意した。ところが、大蔵官僚OBで「緊縮派のラスボス」こと自民党の宮沢洋一税制調査会長が反発し、新年度予算の裏付けとなる与党税制改正大綱で引き上げを「123万円」と明記する〝ドケチ査定〟を示して大炎上した。
補正予算案で与党に協力した国民民主党は激怒し、3党協議も中断したが、果たして、24日召集の通常国会で合意の機運は生まれるのか。
一方、立民の野田氏は22日、日本記者クラブで会見し、「(減税が)選挙に有利で野党連携もしやすいが、それでいいのか。未来世代から搾取する政治はやめるべき」と述べた。減税の公約化を求める党内の動きも念頭に牽制(けんせい)を繰り出した。
ある野党幹部は「野田氏は『大連立』を否定するが、石破首相と増税路線で共闘しかねない危うさがある。自民党の小野寺政調会長は3党協議について『税に詳しい議員同士の協議』を示唆したが、自民党で『税に詳しい』議員といえば宮沢氏で、後ろ向きな姿勢が如実だ」と突き放す。
産経新聞とFNNの合同世論調査(18、19両日)では、103万円の壁の引き上げについて「140万円~150万円程度」との意見が32・5%と最多で「178万円」は32・0%、自公が示す「123万円」は18・5%だった。
政治評論家の有馬晴海氏は「壁の突破は『国民の声』が求めている。ムダを徹底排除し、財源を生み出すのは政府の責任だ。働いただけ手取りが残るのが本筋で、増税や保険料引き上げで補塡(ほてん)を画策すれば国民の大反発は必至だ。世論が納得する政策を実行すれば党勢回復も見えてくる。抵抗する自民党は意味不明だ」と語った。