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ニュース裏表 有元隆志 派閥解消時代の皮肉な結果 田中角栄元首相を「政治の師」とする石破首相、来年1月末の時点で政局はどうなっているか

zakzak by夕刊フジ 2024年10月4日 11時0分

夕刊フジが来年1月31日発行(2月1日付)で休刊となる。この場を借りて、個人的な経験を言わせてもらうと、夕刊フジには1996年から1年間、報道部記者として勤務した。今日まで政治報道に携われているのは、この1年間の経験が大きい。

それまで産経新聞政治部記者として、永田町や霞が関の取材しかしてこなかったが、政治を「斜め」から見ることができたからだ。週刊誌やフリーの記者、証券会社の株担当、そして、「ブラック」と呼ばれる情報誌の発行人まで、まったく違う人たちとの付き合いが広がった。

そうしたなかで、ある情報誌の人が「大手建設会社の元役員が96年11月、東京地裁民事法廷で重大証言をした」と教えてくれた。時の蔵相に「6億円」を工作資金として渡したと証言したというのだ。

早速、裁判の速記録を入手し、夕刊フジの1面トップで報じた。衆院予算委員会でも取り上げられ、蔵相は「夕刊フジが報道したものでございますから、名誉毀損(きそん)で告訴をしております」と答弁した。

私は、法廷証言を報じたもので名誉毀損にはあたらないと自信を持っていた。結局、蔵相はほとぼりが冷めて告訴を取り下げたのだったが、貴重な経験をした。

夕刊フジ時代、一番勉強になったのは「永田町超大物秘書」の連載担当だ。「表」の取材とはまったく異なる、「裏」の永田町の世界を知ることができた。

例えば、選挙でいかに効果的にカネをばらまいて票を獲得するかなど、生々しい話を聞くことができた。その「超大物秘書」が仕えたのは派閥幹部だったので、派閥の運営をいかにするかについても詳しく聞けた。

時代が移り変わり、自民党最強「田中派」を率いた田中角栄元首相を「政治の師」と仰ぐ石破茂氏が総理総裁となった。主要派閥が相次ぎ解散してから初めての自民党総裁選で、石破氏が勝利したのは皮肉な結果といえる。

しかも、石破首相は、最大派閥を率いた安倍晋三元首相を「国賊」とまで呼んだ村上誠一郎氏を総務相に起用した。派閥全盛時代では考えられないことである。派閥を敵視しているはずの村上氏だが、その著書『自民党ひとり良識派』(講談社現代新書)を読むと、「私は議員が劣化したもうひとつの背景に、派閥が弱体化し、新人議員の教育機関の役目を担えなくなったことがあると思っています」と書いている。

一方で、派閥の短所としては、資金集めで無理が生じることが挙げられる。

リクルート事件後、自民党若手として「ユートピア政治研究会」というグループを立ち上げたのが石破首相だった。まだ若かりし頃にインタビューしたことがあるが、「中選挙区制はカネがかかるうえ、二世議員だらけになり構造汚職の元凶となっている」と述べ、小選挙区制の導入を強く訴えていたのが印象に残っている。

来年1月末の時点で政局はどうなっているか。最後までお付き合いをお願いしたい。 (産経新聞特別記者・有元隆志)

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