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ぴいぷる 大鶴義丹「舞台の上って不自由の塊…やっと自由になりだした」 父で演出家・唐十郎さんの死を乗り越え…上がる新たなステージの幕

zakzak by夕刊フジ 2024年6月28日 11時0分

7月19日から上演「松井誠PRODUCE公演Vol2」に出演

■今年10作の舞台

最近は舞台づいている。昨年6作に出演したときも「これは多すぎる」とぼやいていたにもかかわらず、今年はなんと10作もの舞台に立つ。

「50代も最後に近づいて、どこまで踏ん張れるかという、言ってみれば〝人体実験〟のようなものかな(笑)。でも、なんか6作、7作じゃ少ないなと思うようになってね。でも10作はやりすぎだよね」

10本も舞台に立っていると、一定のジャンルにこだわっているわけにはいかない。いや、むしろジャンルを超えて、さまざまな舞台に挑戦することになる。

「舞台ではジャンルにはこだわらないですね。ドラマとか映画の仕事は役者のイメージが大きく影響します。僕ぐらいの年齢だと、部長役とか父親役とか。しかし舞台は役者のイメージは関係しない。そして、やることが盛りだくさんだから、くたくたになれるんですよ。それが楽しくて。中年になると力を出し切ってくたくたになって帰るってこと、なかなかないでしょう。舞台は容赦ないんです」

これだけの数の舞台を踏むとなると、年中、稽古と本番の繰り返しになってしまいそうだが…。

「時代劇の舞台と、2時間ドラマの撮影が重なったときはさすがにちょっと苦労したかな。時代劇の殺陣は好きなほうなんだけど、なかなか立ち回りが覚えられなくて、共演者に迷惑をかけてしまって…。でも、これだけやっていくと、せりふが膨大な量でも不思議と1時間ぐらいで頭に入ってくるようになります」

■大衆演劇の魅力

そう、体は完全に舞台モードに仕上がってきている。そんな中、新たな挑戦に乗り出すことになった。7月19~21日、東京・浅草公会堂で上演される「松井誠PRODUCE公演Vol2」に出演するのだ。〝松井誠〟というからには、「大衆演劇」の舞台だ。自身は第2部「月夜の一文銭」で悪役を演じる。

「母(李麗仙さん)がもともと松井さんと知り合いで、僕も交流があって。実は僕が殺陣や立ち回りが好きだってことに気付いたようで、『義丹くん、やってみないかい』と声をかけていただいたんです」

「やりますよ」と二つ返事で受けたという。

「舞台を始めたばかりだった10年ほど前の僕なら、大衆演劇の舞台とはちょっと距離があったかもしれない。でも、いろんな舞台に上がる中、時代劇が面白いってこと、そして舞台はある程度、役者の自由にできるということに気づいちゃったらね。そりゃ、引き受けるでしょう」

自身の俳優人生も、あと15年、20年あるかわからないという。だからこそ、面白いと思うこと、好きなことをやろうと思うようになった。大衆演劇の舞台も楽しみで仕方がない。

■父の死乗り越え

今年5月4日に父である演出家、唐十郎さんが死去したことも、舞台への思いをさらに強めるきっかけとなっている。

アングラ舞台の先駆者だった父を見てきたからこそ、若いころの自身はどこか舞台を避けていた。舞台に身を投じるようになったのは40代になってからだ。それでも、どこか父親の影を追っていたのだろうか。

「自分も含めて、さまざまな人がさまざまな形で、唐十郎の戯曲をやっていますが、なかなか当時のものにたどり着けないというか…。結局、みんな間違った方向に向かって努力しているんじゃないかと、最近は思っているんです。中学生のころに通っていた近所の町中華のラーメンも、昔はうまかったけど、今食べたら、あれ? ってことがあるじゃないですか。当時のむちゃくちゃなエネルギーだったから、面白かった舞台を、今の時代にブラッシュアップしても同じものはできないのかなって思い始めています」

越えるべき壁だった父が旅立ったからこそ、どこか客観的に見ることができるようになったのかもしれない。

「自分のやることが見えてきたというか、舞台の上って不自由の塊なんですけど、やっと自由になりだしたかなあと思えるようになってきたので、僕も自由にやっていこうと思っています」

ここから、大鶴義丹の新たなステージの幕が上がる。

(ペン・福田哲士 カメラ・酒井真大)

■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 俳優、小説家、映画監督。1968年4月24日生まれ、56歳。東京都出身。88年、映画「首都高速トライアル」で俳優デビュー。90年に「スプラッシュ」で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビューを果たす。主な小説に「湾岸馬賊」「女優」など。95年には「となりのボブ・マーリィ」で映画監督としての活動も開始する。YouTube公式チャンネル「大鶴義丹の他力本願」も更新中。29日から7月7日まで俳優座で上演される「帰って来た蛍~永遠の言ノ葉~」に出演。

初の大衆演劇の舞台となる「松井誠PRODUCE公演Vol2」は7月19~21日、東京・浅草公会堂で上演される。問い合わせはMAKOTO(03・5327・8978、平日午前11時~午後5時)。

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