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ニュースの核心 中国軍機〝領空侵犯〟で「目に見えない日本侵略」開始か 習政権、総裁候補の反応見極める絶好のチャンス 次はインフラが危ない

zakzak by夕刊フジ 2024年8月31日 10時0分

中国軍機による「重大な主権侵害」である日本領空の侵犯について、習近平国家主席率いる中国が居直っている。日本政府の抗議や、訪中した超党派の日中友好議員連盟の二階俊博会長(自民党元幹事長)の遺憾の意の表明に対し、「いかなる国の領空にも侵入するつもりはない」(中国外務省)と繰り返しているのだ。中国軍機は領空近くで旋回を続けた後、日本領空に侵入しており、「確信犯=意図的」の可能性が高い。ジャーナリストの長谷川幸洋氏は、自民党総裁選(9月12日告示、同27日投開票)を見据えて、中国が「総裁候補を値踏みしてきた」「目に見えない日本侵略が始まった」と分析し、新たな挑発の危険性を警告した。

中国軍機が26日、日本の領空を侵犯した。ところが、日本は外務省の岡野正敬次官が中国の施泳駐日臨時代理大使を同省に呼んで抗議した程度で、総じて反応は鈍い。日本の主権は大丈夫か。

中国軍のY9情報収集機は同日午前11時29分から約2分間、長崎県の男女群島沖の日本領空を侵犯した。自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)して追い返したが、軍用機による領空侵犯は初めての事態だ。

岡野次官は同日、中国の施臨時代理大使に対し、「厳重に抗議するとともに、再発防止を求めた」。

「靖国」「NHK」も延長線上に

事件は単発の出来事ではない。私は6月から立て続けに起きた中国人による靖国神社での放尿・落書き事件や、先日のNHKラジオ国際放送での電波ジャックという一連の事件の「延長線上にある」とみている。

少しずつ挑発のレベルを上げてきた周到さ、タイミングからみて、「関係がない」とみる方が不自然だ。これまでは、少なくとも表面的には民間人の行為だったが、今回は中国軍そのものが登場した。はるかに深刻な事態だ。

なぜ、このタイミングだったのか。それは、自民党総裁選と関連がある。

岸田文雄政権の中国に対する腰砕けぶりは、2年前の「非公式警察署」問題をみても、いまさら言うまでもない。自民党参院議員の関与が疑われる事態だったのに、首相が積極的に動いた形跡はない。

中国にとって、今回は「ポスト岸田」候補が、どう反応するかを見極める絶好のチャンスだった。

中国とすれば、激しく反発されたところで、岸田政権はレームダック(死に体)状態なので、どうせ大事にはならない。逆に、反応が乏しければ、この先も挑発を続けていくうえで、新政権の出方を事前に推し量る貴重な情報が得られるのだ。

候補者たちの反応は、まったく鈍かった。

事件発生当日は完全に黙殺し、翌27日になってから、「主張すべきは主張し、冷静かつ毅然(きぜん)と対応する」(上川陽子外相)、「極めて厳重な抗議と再発防止を強く要求した」(林芳正官房長官)などとコメントした。

有力候補の1人、小泉進次郎元環境相の発信はいまだに見当たらない。

高市早苗経済安保相は27日の記者会見で、「わが国の主権の重大な侵害であるということだけでなく、安全を脅かすもので、全く受け入れられない」「首相や防衛相を中心に警戒監視に万全を期していく」と強調した。

次はインフラが危ない

候補者たちの鈍さは、マスコミの責任でもある。

事件発生を1面トップで報じたのは、産経新聞と読売新聞で、あとは雑報扱いだった。総裁候補の動向を追いかけている記者たちは「オレたちは総裁選担当。領空侵犯は外務省と防衛省担当の仕事」くらいに思っているのではないか。

中国は政治家やマスコミの反応の鈍さを確認して、作戦の目的を達しただろう。「この調子なら、もっと激しく挑発しても大丈夫だ」と自信を持ったはずだ。これまでの岸田政権と自民党の甘さが招いた事態である。

靖国神社とNHK、それに領空侵犯と続いたからには、次は電力やガス、水道、新幹線や航空路の交通網などのインフラが危ない。自衛隊と警察もターゲットになる。

中国は「いかなる国の領空も侵犯する意図はない」とシラを切っているが、中国は「目に見えない日本侵略を開始した」と認識すべきだ。

長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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