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ニュースの核心 次期米大統領の就任直前、ロス大火事の影響は トランプ氏は「2028大統領選有力候補」カリフォルニア州知事の責任追及

zakzak by夕刊フジ 2025年1月18日 10時0分

ドナルド・トランプ次期米大統領の就任式は来週20日(日本時間21日)、首都・ワシントンで開かれる。米メディアによると、イタリアのジョルジャ・メローニ首相や、ハンガリーのオルバン・ビクトル首相らが招待されており、日本からは石破茂首相ではなく岩屋毅外相に招待状が届いた。日米同盟の先行きが不安視されるなか、米国ではカリフォルニア州ロサンゼルスや周辺で起きた大規模な火事が政治問題となってきた。トランプ氏の復活で「自国優先」に一変する世界。日本は大丈夫なのか。ジャーナリスト、長谷川幸洋氏が迫った。

トランプ氏の就任式を目前に控えて、米国はいま、国中が沈鬱な気分に包まれている。政権交代とは関係ない。ロサンゼルスの大火事が収まらないからだ。

テレビのキャスターたちは続々とワシントンやニューヨークを離れて、現地入りした。彼らは申し合わせたように、黄色の防火服に身を包み、メガネも外してゴーグルとマスクを首から下げている。視聴者に「現場からの中継」を訴えているのだ。

トランプ氏は火事を受けて、政敵であるカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事を攻撃した。「知事は『ワカサギが絶滅の危機にある』という理由で防火対策を怠り、水源環境の保護を優先した。とんでもない間違いだ」と訴え、辞任を要求した。

ニューサム氏は2028年大統領選で、「民主党有力候補の1人」とみられている。トランプ氏に次はない。この際、徹底的にたたいて「自分の影響力を残そうとしている」のだ。

火事は鎮火どころか、拡大する気配さえ出ている(現地14日現在)。就任式直前に起きた今回の大火事は、まさに誰も予想しなかった形で「28年大統領選の前哨戦」になってしまった。

トランプ氏は就任前から、各方面で外交攻勢に出た。ウクライナについては停戦の可能性を探る一方、中東では「イランの核施設空爆」を検討している。

これは、いまや「秘密」ではない。ウォールストリート・ジャーナルは昨年末、「トランプ氏の政権移行チームが選択肢として検討している」と報じた。今年1月には、有力ネットメディア、アクシオスが「イランが大統領就任式前に核開発に動くなら、バイデン政権は核施設の空爆を検討している」と報じた。

ジェイク・サリバン国家安全保障担当大統領補佐官は「トランプ・チームと情報を共有している」と公に認めている。

それだけではない。

トランプ氏はデンマークの自治領であるグリーンランドの購入と、パナマ運河の管理権を握りたい意向も表明した。グリーンランドには、軍事力行使も示唆している。

なぜ、「いまグリーンランドとパナマ運河なのか」と言えば、トランプ氏は「国家安全保障上の理由」を挙げている。それぞれ、ロシアや中国の脅威に対抗するために不可欠と判断しているのだ。

デンマークは反発しているが、グリーンランド自治政府の首相は会見で「防衛や資源探査をめぐって、トランプ政権と協力する方法を模索している」と語った。

中国やカナダ、メキシコを相手に、関税を外交交渉の武器にする方針も表明している。中国からの輸入品には60%、麻薬と不法移民が流入しているカナダとメキシコには25%、その他の国には10~20%の関税だ。

日本には、在日米軍の駐留経費を含む「防衛費の大幅増」を要求してくるだろう。

トランプ氏の復活で、世界が一変するのは確実だ。「米国流の自由と民主主義が広がれば、世界は平和になる」という楽観的かつ攻撃的なリベラリズム(理想主義)は影を潜め、代わりに、何よりも自国の利益を優先する考え方が勢いを増すだろう。

トランプ氏の「米国第1主義」だけでなく、欧州でも国家優先の保守主義を掲げる政党が躍進している。日本政治の流動化は避けられない。

■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。

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