日本の調査捕鯨を妨害したとして国際刑事警察機構(ICPO)の国際手配を受け、デンマークの自治領グリーンランドで拘束されていた反捕鯨団体「シー・シェパード」の創設者、ポール・ワトソン容疑者(74)が17日、釈放された。日本政府はデンマークに引き渡しを要請していたが、フランスを中心に欧米でワトソン容疑者の引き渡しに反対する動きが強まっていたなかで拒否された。識者は「情報戦」に敗北したとの見方を示して、国際世論への発信強化を訴える。
「日本に移送されなくてよかった」
釈放されたワトソン容疑者は支持者にこう述べた。
シー・シェパードは、調査捕鯨団の監視船に抗議船を衝突させたりするなど、数々の過激行動で知られる。東京海上保安部は2010年、同団体のメンバーが調査捕鯨船団に酪酸入りの瓶を投げて船員にけがをさせた事件の共犯としてワトソン容疑者の逮捕状を取得して、日本の要請を受けたICPOが国際手配していた。
ワトソン容疑者は今年7月、グリーンランドの中心都市ヌークへ給油などで立ち寄った際、地元の警察に拘束された。だが、「反捕鯨国」であるフランスのエマニュエル・マクロン大統領が引き渡しに反対するなど、欧米で解放を求める声が高まっていた。
今回の釈放をどうみるか。
経済安全保障アナリストの平井宏治氏は「日本政府の情報発信が足りなかったという側面があるのではないか。捕鯨に反対する考えを表明するのは自由だが、日本の調査捕鯨船に対する暴力行為が許されるわけではないというメッセージを、英語などでしっかり発信していくべきだ。それとともに、ワトソン容疑者の滞在国に対して、引き続き身柄引き渡しを求めていく必要がある」と話した。