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日本の解き方 デフレ崖っぷちの中国経済 「習体制の失敗」不良債権処理も楽観できず 日本が経済取引で距離を置くべき理由

zakzak by夕刊フジ 2024年7月19日 11時0分

中国国家統計局は15日、4~6月期国内総生産(GDP)を発表した。物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同期比4・7%増加した。1~3月期は5・3%増だった。

実は、恒例となっている記者会見は開かれず、国家統計局の公式ウェブサイトで発表すると予告されていた。15日から中国共産党の重要会議、第20期中央委員会第3回総会(3中総会)が開幕することが影響したのだろう。

GDP成長率に関する中国政府の通年目標は5%前後であり、4・7%では胸を張っていられない。3中総会は基本的に5年に1度開催され、経済と政治の大きな変化が発表される会議だからだ。

公表された統計の中身を見ると、1~6月の上半期で、消費財小売総額は前年同期比3・7%増だった。やはり、消費がさえない。

また、設備投資の固定資産投資(農村世帯を除く)は上半期で前年同期比3・9%増だった。内訳は、インフラ投資5・4%増、製造業9・5%増、不動産開発10・1%減と、不動産不況は、公式発表でも隠しきれなかった。

上半期の消費者物価指数(CPI)は前年同期比0・1%上昇だった。CPIが上がっていないというのは、デフレ一歩手前の崖っぷちにいることを示している。

こうした中国経済の状況をみれば、3中総会では、「不動産市場に関する追加対策」や、地方財政悪化に対して「中央から地方への財源移譲」といった税・財政改革の方向性が示されるのは当然で、その可能性が指摘されている。

ただし、不動産対策について筆者は悲観的だ。というのは、不動産不況の根本的要因として不良債権処理問題がある。これは、どこの国でも議論があったが、不良債権処理をしなくても追加対策などで経済成長すれば不良債権問題がなくなるかどうかに帰着する。

不良債権処理という社会のウミを出さずに、経済成長で解決するならその方が誰でもいいだろう。そのためには、「債務超過になった場合、破綻させる」という当たり前のルールを破る必要がある。

だが、そうした明快な社会ルールがないと、各経済主体で疑心暗鬼が生じて経済全体のパフォーマンスが著しく低下する。こうした理由から、先進国ではまず不良債権処理を行うのが大前提となっている。

幸いにも先進国では、不良債権問題は前の政権などに問題転嫁できるが、中国では習近平体制が長いのでそれもできない。習体制の失敗となってしまうのだ。これらが中国での不良債権問題の解決に筆者が楽観的になれない理由だ。

米国で対中強硬姿勢をみせているドナルド・トランプ政権の誕生が確実視されるなか、日本はできるだけ中国との経済取引で距離を置いた方がいいのではないか。

特に、特定国への輸入依存品目で、日本は欧米を上回って中国への輸入依存が高い。その是正が必要となるだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

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