今年設立80周年を迎えたタニタは、体重計や体組成計などを開発・販売してきた。2012年以降、「タニタ食堂」「タニタカフェ」事業や、企業や自治体の健康づくりを支援する「タニタ健康プログラム」など、「健康をはかる」だけでなく「健康をつくる」健康総合企業として事業展開している。谷田千里社長(52)は「今後も多様な社会、お客さまのニーズに対応した商品、サービスを提供していく」と話す。
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――「タニタ暑さ指数管理サービス」の提供を始めました
「〝地球沸騰時代〟といわれるほど夏の暑さが厳しくなっています。このサービスは、任意の地点に暑さ指数センサーを設置し、計測したデータをパソコンやスマートフォンのブラウザー上で確認できます。計測・表示する項目は暑さ指数、気温、湿度、黒球温度(日射や地面からの照り返しによる熱を計測)で、6段階の注意レベルを色やアイコンで知らせます。学校や保健所、建設や製造、運送の作業現場、スポーツ施設や公園など、複数地点の熱中症リスクを管理することが必要な法人向けにサービスを提供しています」
――アスリートの体づくりをサポートするポケッタブルスケール(持ち運び用はかり)「GRAMIL(グラミル)」が注目を集めています
「世界最薄(タニタ調べ)の厚さ8ミリメートルのサイズです。はかりメーカーとしての技術を高めたいという思いから開発しました。携帯してあらゆるシーンで手軽に計量できるという特徴を生かし、食事量を計量・記録することでアスリートの減量をサポートする商品に仕上げました。計量した結果をスマートフォンに転送し、新たに開発したアプリで食事や水分の摂取量を記録し、体重と併せて管理できます」
――多くのアスリートをサポートしてきました
「競歩の日本代表選手、プロサッカーやプロバスケットボールのチームなどさまざまな競技のアスリートの体づくりに役立つ商品や栄養のアドバイスを提供してきました。現在、12チーム約190人のアスリートをサポートしています」
――「私たちメンテナンス」サービスとは
「希望する企業や団体にタニタのスタッフが訪問し、プロフェッショナル仕様の健康計測機器を使った健康チェックと計測結果に基づいたカウンセリングや健康セミナーを行います。設立80周年記念事業の一環として7月からスタートさせ、2025年3月まで無料でサービスを提供します。ひとりひとりが体づくりや健康づくりを継続的に行うことを『私たちメンテナンス』と定義して支援していきます」
――働き方改革「日本活性化プロジェクト」についてお聞かせください
「希望する社員を『雇用』から『個人事業主(フリーランス)との業務委託』に切り替える取り組みで、17年から始めました。『主体性』を生み出して高い成果につなげるとともに、個人が自分の人生をデザインできる働き方を選択できるようになってほしいと思っています。ネーミングは、タニタだけでなく、他企業や日本中を活性化したいという願いを込めています」
――メリットは
「個人としては、手取り収入が増える可能性が高く、幅広い経験をすることで、スキルの向上や能力開発につながります。企業としては、仕事を成果で評価するので、働く人の『主体性』に磨きがかかり、緊張感と責任感を持って取り組んでもらえることです。『頑張った分、報われる』と感じてもらえれば、個人と会社の利益が一致し、シナジー効果が期待できます」
――これからのタニタについて
「人生100年時代、健康寿命を延ばすことが個人にとっても社会にとっても重要です。健康づくりを通して世界の人々が『幸せを感じられる』社会づくりに取り組んでいきます。全ての人が自分らしく生き、周囲の人たちとの大切な時間を過ごせるように、『Healthy Habits(健康習慣)』の継続をタニタがサポートしていきます」
調理師 エスカレーター式の学校が嫌で高校卒業後、調理師専門学校に進学し、調理師免許を取得した。しかし、椎間板ヘルニアを患い、立ち仕事中心の調理師を諦めた。家庭科の授業が男性も必須となった時期で、家庭科教員免許と栄養士の資格が取れる九州の短期大学から、さらに佐賀大学に進学した。「調理師、栄養士の資格が後に役立つことになりました」
ウオーキング 時間があるときは、東は隅田川、荒川を渡り東京都足立区の西新井大師方面へ。西は杉並区高円寺あたりまで歩く。「歩きながら見るさまざまな光景は刺激になります」という。
おかしクラブ 和菓子から洋菓子などお菓子に目がない。社員らと同じフロアのデスクには常にお菓子があり、時々お菓子の情報交換が始まる。それが「おかしクラブ」に発展したという。数年前のハロウィンの日は、ゾンビの仮装でお菓子を分けた。「コミュニケーションのよい機会となりました」
漫画 「週刊少年ジャンプ」(集英社)に連載された『バオー来訪者』や、10月から実写ドラマ(テレビ東京)として放映されている『ウイングマン』などに熱中した。「なかよし」(講談社)に連載された『魔法騎士レイアース』『カードキャプターさくら』などをアニメなどでよく見る。「日常とかけ離れた世界を楽しむことができます」
歩数計でコラボ 漫画好きが高じて、少女漫画誌「花とゆめ」(白泉社)とコラボレーションした歩数計を発売した。『ガラスの仮面』『ぼくの地球を守って』など5作品のキャラクターの絵柄43種類をデザインに使用している。3Dセンサー搭載により、カバンの中や、ネックストラップで首から下げていても歩数を計測できる。「好きなキャラクターの歩数計で健康を気にしてほしいと思っています」
家族 妻、11歳と9歳の娘の4人家族。今年、結婚20年目を迎え、フォトスタジオで家族の記念写真を撮った。背景は高原や海辺などさまざまなシーンを選ぶことができ、4人で相談しながら決めた。「記念写真を撮りながらワイワイガヤガヤ、家族の絆が一層深まりました」
座右の銘「1粒で2、3度おいしい」。新たな事業展開や、これまでの取り組みの改善の際、1つの目的だけで行うことは非効率で失敗しやすい。意図して2つ、3つの成果を生み出すよう行動、リスク対応もしたほうが、生産性は高まるという。
■谷田千里(たにだ・せんり) 1972年6月生まれ、52歳。大阪府吹田市出身。97年佐賀大学理工学部卒。98年船井総合研究所入社。2001年タニタ入社。05年タニタアメリカINC取締役。07年タニタ取締役。08年代表取締役社長に就任する。著書に『タニタの働き方改革』(日本経済新聞出版社)がある。
【会社メモ】1944年谷田無線電機製作所として設立する。59年家庭用体重計を製造・販売し健康分野へ進出する。86年タニタに商号変更、92年に世界で初めて乗るだけで計測できる体脂肪計付きヘルスメーターを発売。以来、世界初の内臓脂肪チェック付き体脂肪計など健康計測機器分野で「世界初」の商品を生み出してきた。「タニタ食堂」や「タニタカフェ」を全国に展開。レシピ本『体脂肪計タニタの社員食堂』も出版する。連結従業員数約1200人。
ペン/危機管理・広報コンサルタント 山本ヒロ子 カメラ/酒巻俊介