氷上のシーンはほぼアドリブ
幼いころからフィギュアスケートをやっているとあって氷上はお手の物かと思いきや、今回はそうもいかなかったそうだ。
「とにかく氷の上を滑ること、歩くことに本当に苦戦しました。スケートを始めたころに感じたちょっとした怖さを、大人になって感じるとは思いませんでしたが、これは試練だと思い、乗り越えました」
8日公開の「カーリングの神様」(本木克英監督)で主人公の香澄を演じている。タイトルの通り、〝氷上のチェス〟と呼ばれるカーリングに打ち込む高校生たちの友情や葛藤、挫折などを描く青春ムービーだ。
「スケート靴って親指の付け根あたりに重心をかけるんですが、カーリングの靴は全然違うんですよ。むしろ重心は後ろにかける。スタッフからは望結ちゃんは大丈夫だよって言われたんですけど、ほかのキャストの方はすぐにコツをつかんだのに、私はなかなかうまくいかず何度も氷の上で転びましたよ」
劇中のカーリングのシーンは、ほとんど本人たちが実際に行ったものだという。それだけ彼女をはじめ、キャスト全員がカーリングに真剣に取り組んだということだ。
「本当に部活みたいな感じで。みんなカーリング選手の気持ちで、撮影の休み時間もリンクを使わせてもらって練習していましたね。氷上での演技は、練習の量についてくるって思っていましたから。だから氷上のシーンはほぼアドリブ。それだけ監督やスタッフが私たちに任せてくれたんだと。本当にリアルで、自分たちでも自信が持てる仕上がりです」と胸を張るのも納得だ。
3歳のころからキッズモデルや子役として活躍し、「家政婦のミタ」(2011年、日本テレビ系)で注目されたのが7歳だった。
「私って結構、みなさんにすんなりと知っていただけるようになったと思われていますが、実は何百回とオーディションに落ちているんですよ。それでも〝本田望結〟じゃない人になれるってことが面白くて、ずっと続けているんですよね」
幼いころからせりふ覚えはよかったという。やはり、彼女は〝天性の女優〟なのだろう。
「せりふは長ければ長いほど、ワクワクしますね。いつまで続くのっていうぐらいの長ぜりふなんて楽しくて仕方がないんです。現場でせりふが変わることってよくありますが、量が増えていると、めっちゃうれしいですよ。逆に短いとドキドキしちゃうかも(笑)」
〝望結ちゃん〟と呼ばれなくなり
人気子役だったからこそ、今、女優として思うことがある。世間のイメージを覆したい。見る人を驚かせたい。いつもそう思っているそうだ。
「いろんな役をするほど、自分と同じところや違うところを感じるので、本来の自分を客観的に見ることができるようにもなりました。でも、世の中的には『家政婦のミタ』の希衣(きい)ちゃんのイメージが強くて、今でも〝大きくなったね〟って言われるんです。覚えていただいていてうれしい半面、皆さんをまだ驚かせていないんだなとも思うんです。だから〝本田望結がこんな役をしているの!?〟って驚かせたいのが今のモチベーションですし、お芝居で心がけていることです。ライバルは常にあの頃の子役の自分ですよね」
そんな彼女は、いつから子役じゃなくなったのだろうか。
「いつからでしょうね(笑)。でも最近、現場で〝望結ちゃん〟って呼ばれなくなったんです。〝本田さん〟とか〝望結さん〟とか呼ばれるの。それは寂しいですね。何だか距離を置かれているみたいで。やっぱり〝望結ちゃん〟って呼ばれるとめっちゃうれしいですよ(笑)」
今年20歳になった。すっかり大人の女性だ。何か変わったことはあったのだろうか。
「変わったことですか…お酒が飲めるようになったことかな。20歳の誕生日を迎えたとき、両親と乾杯したんですよ。それがもうすごく楽しくて。いろいろなお酒をちょっとずつ飲ませてもらったんですけど、ジンですか…それが一番好きでした。まだ酔っ払ったことはありませんが、お酒は強くなりたいですね。何だか世界が広がった感じです(笑)」
(ペン・福田哲士 カメラ・酒巻俊介)
主演映画「カーリングの神様」8日公開
■本田望結(ほんだ・みゆ) 女優。2004年6月1日生まれ、20歳。京都府出身。3歳から芸能活動を始め、「家政婦のミタ」への出演で注目される。映画「ポプラの秋」(2015年、大森研一監督)で映画初主演を果たす。近年の出演作はNHK連続テレビ小説「らんまん」(23年)、「少年のアビス」(22年、MBS)、「ばかやろうのキス」(22年、日本テレビ)、映画「それいけ!ゲートボールさくら組」(23年、野田孝則監督)、「きさらぎ駅」(22年、永江二朗監督)など。フィギュアスケーターとしても活躍している。