日本維新の会がフラついている。政府の補正予算案の撤回と組み替え編成を求める動議を国会に提出していたが、12日の衆院本会議ではあっさりと賛成に回ったのだ。党内外から「腰砕け」という批判が噴出している。吉村洋文代表(大阪府知)は今月初め、与党との対決姿勢を強調して就任したが、国会議員団長である前原誠司共同代表は〝妥協〟を主導した。石破茂政権と同様の「ガバナンス崩壊」を予見する声もある。
「われわれの考え方を実行するには、与党とも話し合うことが大事だ」「(自公の過半数割れという)新たな状況に対して野党がどう対応するのかが問われている」
前原氏は12日、補正予算案に賛成した後の党会合で、執行部の判断をこう説明した。
維新は前日、吉村氏の対決方針を踏まえ、補正予算案を撤回し、組み替え編成を求める動議を提出していた。
ところが、一夜明けた12日朝、教育無償化に関する自民、公明、維新3党の協議体を設置することで合意したなどとして方針転換したのだ。
党会合では、文書も作成せずに合意した執行部に対し、「紙に残るものは何もない。口約束で予算案の賛否を決めるほど、わが党は軽いのか」(浦野靖人衆院議員)と厳しく批判する声があがった。
政治評論家の有馬晴海氏は「維新は国政、地方議会で勢力を伸ばし、自民党との『是々非々路線』で期待を集めてきたが、先の衆院選で6減の38議席に減らした。党内にはジリ貧の『万年野党』に転落する危機感が強い。一方で国民民主党は4倍増の28議席となり、玉木雄一郎代表が『手取りを増やす』と世論に猛アピールしている。維新の焦りにつながっている」と指摘する。
自民党ベテランは「石破政権は苦しいが、単独過半数がないのは野党各党も同じだ。維新と国民民主を競わせて、良いとこどりをした」と語る。
維新内には、前原氏への不信感も根強い。希望の党との合流で民進党を分裂させた経緯などを念頭に、「政局でことごとく失敗してきた『壊し屋』」(党ベテラン)と揶揄(やゆ)する声まである。
維新はどこに向かうのか。
有馬氏は「維新の存在意義は『新しい保守勢力』の位置づけだった。既得権益を壊せない自民党に対し、癒着なく改革に踏み切れるという期待だが、衆院選の結果から国民の期待は薄らいでいる。『身を切る改革』にこだわる吉村氏と、政界再編を念頭に石破首相との距離感も近い前原氏のスタンスは違う。厳しい局面が続くだろう」とみる。