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徹底解説・第6弾 男性更年期 患者はどうやって克服したか テストステロン値は正常範囲なのに違和感 受容体の感度低下で不足時と同じ状態に ホルモン補充療法で改善するケースも

zakzak by夕刊フジ 2024年9月11日 11時0分

新古賀病院 糖尿病・甲状腺・内分泌センター長明比祐子医師に聞く

男性ホルモンのテストステロンが低下すると、生活習慣病の悪化や気分の落ち込み、睡眠障害など多様な症状を引き起こす男性更年期障害(LOH症候群)につながる。その診断は、AMSスコア(男性更年期障害質問票)を参考とした自覚症状、血液検査による総テストステロン値 250ng(ナノグラム)/dl未満、遊離(フリー)テストステロン値 7・5pg(ピコグラム)/ml未満といった検査結果を考慮して判断される。

「しかし、フリーテストステロン値が8pg/mlでも、男性更年期障害の症状がひどい場合もあります。血中のテストステロン値が正常でも、それを受け取る細胞の受容体の感度が低いと、テストステロンが不足したときと同じ状態になるのです」

こう指摘するのは、新古賀病院(福岡県久留米市)糖尿病・甲状腺・内分泌センター長の明比祐子医師。日本メンズヘルス医学会の理事で、日本肥満学会専門医・指導医などの資格を有し、「男性更年期外来」で診断・治療を行っている。

「総合的に診て男性更年期障害であれば、テストステロン値が正常範囲でも、ホルモン補充療法(TRT)によって症状が改善されるケースは珍しくありません」

50代のGさんは、仕事のミスをきっかけに体調を崩すようになった。イライラして夜はよく眠れず、ミスのことを思い出して気分は落ち込み、大好きだった野球観戦もする気がなくなった。体の疲れは抜けず、めまいにも襲われるようになった。

そんな症状を身近で見ていた妻から「男性更年期障害ではないか」と指摘され、男性更年期障害外来を受診することに。ところが、血液検査のテストステロン値は正常域。「やっぱり心の病か…」と思ったGさんに対し、医師は「症状は男性更年期障害の疑いが強いので、TRTを試してみますか?」と尋ねる。Gさんは気乗りがしなかったが、精神科を改めて受診するのもおっくうだったため、TRTを受けたという。

数日後、Gさんは目覚めがよくなったことに気づいた。ふとんから起き上がるのも重かった体が軽くなったように感じる。「調子はどう?」と尋ねた妻に「なんか、いいみたいだよ」と、自然に笑顔を見せた。TRTの効果が現れたのだ。

「TRTの治療がうまく合った患者さんは、再診のときに、はつらつとした表情で診察室へ入って来られる方が多いです」(明比医師)

調子が上向いたGさんは、医師の勧めでジムに通うことにした。最初は週末の1回だけだったが、仕事のストレスを抱えたときにジムで汗を流してスッキリして以来、平日も含めて週に3~4回通うようになった。TRTは3カ月後に止めたが、その後も、男性更年期障害の症状は再発していない。

「TRTによって調子が上向いた状態で食生活や運動習慣を見直すと、相乗効果で男性更年期障害を克服しやすくなります。改善のきっかけとして薬もうまく活用しましょう」と明比医師はアドバイスしている。 (取材・安達純子) 【10日発売の「健活手帖37号」でも男性更年期障害の克服術を特集しています】

■明比祐子(あけひ・ゆうこ) 新古賀病院糖尿病・甲状腺・内分泌センター長。1988年大分医科大学卒。福岡大学内分泌・糖尿病内科准教授などを経て、2015年徳島大学先端酵素学研究所糖尿病臨床・研究開発センター客員准教授(兼務)、23年から現職。

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