国内、海外のフリーエージェント(FA)権を取得した選手が権利を行使できる期間が5日、始まった。巨人では菅野智之投手(35)が海外FA権を行使し、米大リーグ移籍の意向を明言している。今季15勝3敗で復活を果たし4年ぶりのリーグ優勝の原動力となったが、10月に35歳となり全盛期を過ぎての挑戦は不安も大きい。そんな菅野に心強い金言の数々を送ったのが桑田真澄2軍監督(56)だ。17年前に39歳でメジャーを目指した背番号18の先輩が〝オールドルーキーの心得〟を説く。 (片岡将)
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FA権の行使名言
菅野にとって米球界挑戦は長年の夢だった。4年前の20年にポスティングシステムを利用しての渡米を目指したが、コロナ禍の影響もあって交渉がまとまらず。東海大4年時にも独立リーグを経てのメジャー行きを模索した時期がある。
「僕自身もやっぱり向こうでプレーするっていう気持ちでいる。20年に行けなかったのがずっと僕の中であったので、そういう決断をしました」とFA権の行使を明言。球団側も「彼の意思を尊重してあげたい」(吉村球団本部長)と復活を果たしたベテランエースを送り出すつもりだ。
06年オフに自由契約となって巨人を退団した桑田2軍監督も若いころから興味を強く持っていたメジャーへの挑戦を決断。パイレーツにマイナー契約で入団も翌07年は39歳を迎えるオールドルーキーで、スプリングトレーニングに招待選手として参加し、メジャー昇格を目指す厳しい立場に置かれた。それでも「すごく楽しかったね。最高のアスリートが集まるリーグだし、見るもの、触れるものが全て新鮮だった」と懐かしそうに振り返る。
自身は開幕メジャーを目前としたオープン戦で一塁ベースカバーに入った際に右足首ねんざの重症。6月にメジャー昇格し19試合の登板で未勝利に終わったが、あのアクシデントがなければ、違う結果となっていたはずだ。
菅野もまた、メジャーでは大型契約が結びづらいとされる30代後半での挑戦だ。「行ける権利があるのなら、行くべきだと思いますね。きっと彼の今後の野球人生に大きなプラスになる」と桑田監督は大きくうなずき背中を押した。
「ボールの違いはすごくある。いくつか手に入れてなじませておくことは大事」
「ただ、ボールの違いはすごくある。こちらでもいくつか手に入れてなじませておくことは大事。本当に違うからね。コンディションを整える他に必要なのはそれくらいじゃないかな」と経験者しか知り得ない貴重な情報を伝授。「試合や練習の流れは菅野くらいの経験があれば、順応できるはず。野球をやることで簡単には遅れは取らないでしょう」と巨人の屋台骨を支え続けた右腕の豊富なキャリアに敬意も払っている。
メジャーの高速化は進み、いまや160キロ超の剛速球を操る投手は珍しくない。しかし「目的は160キロを投げることじゃない。すごい変化球を投げることでもない。投手に必要なのはアウトを取ること。それが三振でも凡打でもいいんですよ。今季の菅野はそこが誰よりも優れていた。今年のスタイルできっと勝負できるはず」と優れた投球術はメジャーでも通用すると太鼓判を押した。
「どこのチームに、どんな契約で行くんだろうね。僕もすごく楽しみにしてます。年俸も桁が違うわけだし、胸を張っていい契約を結んでほしいね」と桑田監督はエール。右腕の雄飛のときを楽しみにしつつ見守るつもりだ。