パリの街に降り立って10日がたった。毎日のように地下鉄で東奔西走するが、必ずといっていいほど遭遇するのが音楽を奏でる正体不明、〝謎のおじさん〟だ。
地下鉄1号線に乗っていたある日、ルーブル美術館の最寄り駅でギター片手に乗ってきた男性。ドアが閉まって列車が動き出した途端、気持ちよさそうに大熱唱である。別の日はまた同じ1号線で、別の男性がラジカセ片手に音楽をかけて、ヒップホップを歌いながら踊っていた。
日本の電車内ではまずご法度の行為。一体、何者なのか? 地元民に聞いてみると、大道芸の一種だという。「彼らはあれで小遣いを稼いだり自分を表現している。あまり長くやるとヤジが飛んでくるので、2、3駅乗ったら降りていき、また別の列車に乗り換えることを繰り返している」
ちなみに、私の目の前でユーロ札が手渡される光景もあったが、相手にすると「もっとカネをくれ!」とせがまれることも。遠目で鑑賞するのが一番安全です! (山戸英州)