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肉道場入門! 熊本で地元民が並ぶ馬ホルモンの味噌煮込み ただただ食欲を刺激「かつ美食堂」

zakzak by夕刊フジ 2024年9月24日 6時30分

★絶品必食編

ある土地へ、足が呼ばれるように、立て続けにご縁をいただくことがある。なぜか今年は熊本で馬肉を食べる機会に恵まれている。馬刺しに馬しゃぶ、馬焼き肉…。

正直、何を何食食べたか記憶が怪しいほどだが、馬肉食に舌の肥えた地元民が列をなす、馬ホルモンの味噌煮込みがある。「かつ美食堂」。創業から50年以上にわたり、地元民に愛され続けた定食店だ。

とろとろと口の中に吸いつくような口当たりにして、内臓肉特有の弾むような食感も残している。にも関わらず、軽くあごに力を入れただけで噛み切れるという、素晴らしく絶妙な煮込み加減。立ち上る香りは透明感さえ覚えるほどに美しく、ただただ食欲を刺激する。

内臓についた脂が味噌に溶け出して、なんとも言えない、甘やかでクリーミーな味わいが口の中に広がっていく。濃醇なのにくどくなく、どこか清らかさすら感じさせる味わいだ。

その味わいにはわけがある。毎日3頭分の新鮮なホルモンを6時間かけていくつもの大鍋で煮込み、煮え加減を見ながら、店の味になるよう、それぞれの鍋の中身をかけ合わせる。

しかも味つけは、味噌とにんにくと水のみ。新鮮な馬ホルモンからしみ出る旨味が、味噌の深い味わいとにんにくの香りを伴って肉に戻っていく。余計なものを加えていないから、味わいも清らか。毎日のように通う常連客も少なくない。

味加減も実に精妙で、ホルモンを一切れずつつまむように食べてよし、卓上の一味をかけてもよし。単品で食べてよし、ごはんにぶっかけるのもまたよし。

受け止める白飯も、ハリのある炊きたてだから。先にホルモンを口に入れてから白飯をかっこんでもいいし、ぶっかけたってまた旨い。

ひとつだけ難があるとすれば、空港からも市街地からも少々遠いこと。観光で訪れるとしても車の手配をお忘れなく。

味噌煮込み定食は、ホルモン(大)(中)(小)×ご飯(大)(中)(小)という9パターン。お腹の具合に合わせて、好きな組み合わせを選ばれたい。もっとも、どれを選んでも夢中でかっこんでしまうこと請け合いだ。

■松浦達也(まつうら・たつや) 編集者/ライター。レシピから外食まで肉事情に詳しい。新著「教養としての『焼肉』大全」(扶桑社刊)発売中。「東京最高のレストラン」(ぴあ刊)審査員。

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