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勝負師たちの系譜 将棋「順位戦」始まる(上)最近「振り飛車」転向、佐藤天彦九段が連勝 勢いある若手から名人挑戦者が出るのではと期待

zakzak by夕刊フジ 2024年8月10日 15時0分

2024年度の順位戦が、6月11日のC級1組を皮切りに始まった。

どのクラスも若手が上がり、年配者が降級するのが常だから、上がった若手が活躍できるかどうかが、見どころとなる。

まだ各クラス、始まったばかりだが、大まかな流れを見ていきたい。

A級は6月14日の、永瀬拓矢九段―佐藤天彦九段戦が初戦だった。

最近は振り飛車党に転向した佐藤が、角交換の四間飛車に誘導したが、永瀬は相手の攻めを逆用して歩切れに追い込み、優勢となった。

しかし佐藤は竜を自陣に引き付けて粘り、玉頭戦に持ち込んで逆転。最後は永瀬の玉側の金を剥がして勝ち切った。

振り飛車で天下を取ったのは、昭和30~40年代(1950~60年代)の大山康晴十五世名人以来いない。振り飛車では限界があると感じる棋士が多いのか、振り飛車から居飛車への転向はあっても(永瀬、広瀬章人九段など)、佐藤は珍しいケースだ。

しかしそれがうまく回ったか、今期は次の対千田翔太八段戦でも、四間飛車から攻める振り飛車の神髄を見せつけ、2連勝と気を吐いている。

佐藤も名人3期を務めた猛者。この数年の停滞を打破すべく、気合が入っている。

まだ始まったばかりだが今期のA級は、順位上位の豊島将之九段、渡辺明九段らが黒星スタートで、下位の佐々木勇気八段、中村太地八段、増田康宏八段といった若手が白星スタートだ。勢いのある若手から名人挑戦者が出るのでは、という期待がある。

新A級は降級候補と言った昔の常識は、今や通用しない時代となっている。

B級1組は12局の総当たりと、他より対局数が多いため、すでに3局終わっているが、休み番の入った近藤誠也七段が2勝0敗でトップ。3連敗が一人もいないという、混戦の様相を見せている。

中での注目は、やはり羽生善治九段だ。50歳を過ぎて降級候補と言われた年もあったが、最近はまた調子を上げてきた。

大山十五世名人も会長時代、忙しさをうまく将棋に生かしていたが、羽生も公務と対局をうまくこなしているように見える。

7月にコロナに疾患して、対局を延期するということがあったが、復活してすぐに大石直嗣七段に勝って2連勝。その後、糸谷哲郎八段に敗れたが、羽生のA級復帰を期待するファンは多いと思う。

■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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