ここのところ、各局で「鳴り物入りで始まったバラエティー番組が、すぐに打ち切られる」のが相次いでます。この件について先日、あるバラエティーのプロデューサーと話しました。彼は「視聴者が保守的になってしまって、新しい企画に視聴習慣がつかないから、視聴率がとれず新番組が持続しない」と嘆きます。「確実に面白い〝おなじみ〟の番組しか視聴者が見ない」のです。さらに、若者はチャンネルをあちこち変える「ザッピング」をほとんどしません。なので、新しい番組には絶望的なほど見てもらえるチャンスがないのです。
「昔から同じような番組ばかりやっていて飽きた」と言っている視聴者が、新しい企画も見てくれないから一層テレビがつまらなくなる、という現象はなんとなく皮肉で、切ないですねえ。
テレビ業界の現状を簡潔に説明すると「日テレやテレ東は〝おなじみロングラン番組〟でなんとか数字を稼ぎ、TBSとフジは新企画に積極的にトライしているが、〝お年寄り専門チャンネル〟と化したテレ朝は、数字はとるけどCMは売れない」という感じになってます。
まあ新番組がすぐ打ち切られてしまうのは「そもそも企画がそんなに面白くも、新しくもないから」というのも大きな原因です。この状況なのでチャレンジしにくいのはそうなのですが、「安全策を狙いつつ始めた新番組」みたいな感じになると、そんなに斬新じゃないから「新番組っていっても、やっぱつまんないわ」みたいな後味を視聴者に残してしまって残念です。
なんだか、「冒険できない」のは、各局の編成の問題というより、東京キー・大阪準キーあたりの社内体質を根本的に変えないと解決しなさそうですよね。
われわれの間で意見の一致を見たのは、「地方局の若手が制作する番組がテレビを救うのでは」ということです。
実はここのところ、私は仕事の関係で地方局の制作したバラエティー番組をたくさん見る機会があるのですが、キラッと光る「原石」のような面白い発想の番組がポツポツ見かけられます。結構斬新で、自由。そして実際問題、最近ゴールデン・プライムで話題になるような面白い番組の中にも「東京・大阪以外の局が制作した番組」が増えてきていますよね。
経営環境が厳しいのは地方局も同じ、いやむしろキー局より厳しいくらいですが、ぜひぜひ頑張ってもらいたいものです。まさにテレビ業界は日本全体の縮図。「地方の時代」にしないとまずいんですよ、ホント。
■鎮目博道(しずめ・ひろみち) テレビプロデューサー。1992年、テレビ朝日入社。「スーパーJチャンネル」「報道ステーション」などのプロデューサーを経て、ABEMAの立ち上げに参画。「AbemaPrime」「Wの悲喜劇」などを企画・プロデュース。2019年8月に独立。新著『腐ったテレビに誰がした? 「中の人」による検証と考察』(光文社)が発売中。