東京地下鉄(東京メトロ)がいよいよ23日に東証プライムに新規上場する。公開価格(売出価格)は1200円で初値と、その後の株価動向は投資家の関心を集め、社会的にも注目されるだろう。好調な業績、今2025年3月期末配当40円見込みで公開価格での配当利回りは3・3%、株主優待制度も新設していることが材料として注目される。
東京都以外の株主にとっては株主優待の魅力が薄れるが、資産株として保有するには有望な銘柄とみることができるだろう。東京メトロの上場後の株価展開を占う意味で、株式需給関係に視点を当ててみたい。
今回の新規上場では政府(財務大臣名義)と東京都の保有株式が売り出される。株式保有比率は政府が53・42%から26・71%に、東京都は46・58%から23・29%にそれぞれ低下する。また、新設された東京メトロの従業員持ち株会に全体の2%が割り当てられる。
そして、来年4月20日まで政府と東京都は売り出し幹事団の動意がなければ、追加で売り出すことができないロックアップ期間が設定されている。つまり、上場後の売り圧力は株式売り出し時に取得した国内外の投資家に限られることになる。
こうした中、定期的に従業員持ち株会の買い付けが行われ、TOPIX(東証株価指数)組み入れに伴うファンドの買い需要の発生。将来の日経平均採用銘柄としての思惑も機関投資家に「持たざるリスク」を意識させることになってくる。
過去の大型IPO(新規上場)の場合、次の株式売り出しや公募増資を伴うファイナンスまで需給は締まり、株価は堅調に推移するケースが多くみられている。今年度内の株価は上昇基調となる公算大だ。
東京メトロ株が人気化すれば、人気波及効果が出てくる銘柄も出現してくる期待がある。関西を主力に有料老人ホームの運営事業を展開する東証プライムの「チャーム・ケア・コーポレーション」(6062)が面白い存在になる。
同社は東京メトログループが初めて開発した介護付き有料老人ホーム「チャームスイート旗の台」(東京都大田区)の運営を受託している。東京メトロで使用された鉄道用レールを展示品や館銘板として再利用するなど、ユニークなデザインが複数採用されている物件だ。
今後も同社が物件を受託する確約はないが、東京メトロが不動産事業を強化する可能性は十分にあり、運営実績を持つ同社の商機につながってくる期待がある。
買収案件の収益動向などから、今25年6月期は売上高501億5000万円(前期比4・9%増)、営業利益49億500万円(同8・9%減)と減益予想であることから、株価は5月高値1717円から調整しているものの、1300円近辺の時価は年間配当34円で、配当利回りは2・6%ある。東京メトロ関連の意外な銘柄としてチェックしておきたい。
■ザ・覆面(ざ・ふくめん) 金融業界では知る人ぞ知るベテラン。株式の分析と着眼点の鋭さに定評がある。名を出せばハレーションが大きいため、覆面で参戦。