2024年前半はSNSを通じた投資詐欺が流行し、筆者も無許可で写真を使われ、間接的に投資詐欺の被害を受けた。
警察庁が公表しているデータを見ると、特殊詐欺の認知件数は22年が前年比21・2%増、23年が同8・4%増となっており、24年も9月末までの累計で前年同期比1・7%増と伸び続けている。しかし、一時期に比べれば筆者の元に寄せられる被害報告の件数は減少した。
24年後半になると、今度は「闇バイト」に関する相談が寄せられるようになった。毎日のように闇バイトのニュースが報道され、自民党は「治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会」を立ち上げて対策を本格的に検討する方針を固めた。
闇バイトの加害者として検挙された人々を見ていると、どうしても若い人に目が行ってしまう。同じく警察庁が公表しているデータをみてみると、強盗で検挙された少年の数は23年が前年比40%増、24年は9月末までの累計で前年同期比22・3%増と大幅に増え続けている。
投資詐欺や闇バイトで受け子や出し子、運び役、叩き(強盗)役などをやると、短期間で大金を稼ぐことができるという甘い誘いに乗ってしまうのかもしれないが、そもそも犯罪行為をするという認識が抜けてしまっている。
詐欺の場合は初犯でも実刑になる可能性があり、ましてや強盗殺人となれば初犯であろうが無期懲役または死刑となる重罪だ。
しかし、リクルーターはそもそも逮捕されるリスクは低く、仮に捕まっても初犯なら執行猶予がつくから大丈夫と説明してくるらしい。
闇バイトについて調査を進めていると、申し込むのは必ずしも若年層だけではなく、なかには高齢者もいるという。物価高が家計を圧迫するなかで、年金生活だけだと厳しいのだろう。身体的に叩き役は無理だとしても、運び役などは高齢者の方が警戒されないので適任という話も聞いた。
闇バイトの指示役がどのような経路で押し入る住宅のリストを手にしているのかは分からないが、自宅に大金を保管していそうな住宅をリストに基づいて順々に下見をしてから押し入るという。日本でも拡大する格差に少しずつ関心が向けられているが、格差社会が行き着く1つの景色の一端を見ている気がしてならない。
■森永康平(もりなが・こうへい) 経済アナリスト。1985年生まれ、運用会社や証券会社で日本の中小型株のアナリストや新興国市場のストラテジストを担当。金融教育ベンチャーのマネネを創業し、CEOを務める。アマチュアで格闘技の試合にも出場している。著書に父、森永卓郎氏との共著『親子ゼニ問答』(角川新書)など。