少数与党の石破茂政権は、今月開会する通常国会でも厳しい政権運営を余儀なくされる。
石破首相は昨年末のテレビ番組で、「夏の参院選で衆参同日選挙もあり得る」と発言した。夏まで石破政権があるのか危ういが、ジョークなのだろうか。2025年度予算を否定されたら解散もあり得るとも話した。
昨年末、歳出予算の政府案と税制改正大綱を閣議決定した。大綱の中で歳入の見積もりがあるが、税制改正の条文を分かっている財務省は当然見積もりを計算できる。しかし、税制改正の条文が国会に提出されるのは1月下旬以降だ。
歳入の見積もりでは、基礎控除などについて、「103万円」から「123万円」への引き上げに伴う減収額は、平年度ベースで所得税が5830億円、住民税750億円の合計6580億円とされている。これまでの財務省試算の報道などに比べて少ない。
この理由は、国民を煽るために試算を盛っていたか、それとも基礎控除も給与所得控除も収入に応じて階段的であり、その階段の形状によって減収額を少なくする、つまり減税規模を少なくしたかのいずれかだ。
どちらにしても、これでは、国民民主党は政府予算を否定し、税法改正案を出さないと、基礎控除等の「178万円」は達成できない。そのタイミングは2月末までにくるだろう。
25年度政府予算案では、経済成長率は実質1・2%、名目2・7%を見込んでいるが、基礎控除等178万円が実現できれば実質2%以上も夢ではない。名目4%程度になるだろうから、名目国内総生産(GDP)が1%変化したときに税収が何%変化するかを示す「税収弾性値」が2としても、6兆円以上の増収になり、財源問題はほぼ解決できる。
いずれにしても、野党間で自民党、公明党の分断工作に乗らず、抜け駆けをしないで結託できれば、少数与党に対し、各野党が参院選に向けて政策をアピールすることも可能だ。
これは政府予算案の否定にもなるが、前述したように石破首相は衆院解散もあり得ると語っている。問題は、自公としてそう簡単に解散を受け入れられるかどうかだ。昨年惨敗した石破首相の顔で再び衆院選ができるか議論となるのは必至だろう。となると、石破首相は「自らの首と引き換えに政府予算案を通してほしい」と出ざるを得ない。石破首相は辞任せざるを得なくなる。
このタイミングは2月末までだ。「ポスト石破」の政局が自公主導になるか野党主導になるかは、それまでに野党がどれだけまとまるかにかかっている。
いずれにしても、国民の怒りのマグマは相当たまっており、今年前半のうちに石破首相の退陣は不可避であるように筆者には見える。その際、野党が首相指名でまとまらなければ自公政権のままであるが、直ちに衆院選になるか、夏に衆参同日選になるかは予断を許さない。政権交代の可能性もなくはない。
ただし、野党が自公の分断工作に引っかかれば、石破政権は延命し、参院選の前になって退陣という可能性もある。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)