前回、バフェットの「よき経営者だからよき投資家であり、逆も真なり」という考え方について解説した。注意しなければならないのは、バフェットは米国人であり、米国を本拠地として活動しているが、いわゆる「米国型経営」については、むしろ否定的なことである。
例えば、平均すれば生涯11回(おおむね4年に一度)以上転職する雇用流動性の高い米国社会で、バフェットは従業員を引き抜いたり引き抜かれたりしないことを自慢する。また、M&Aの際には既存経営陣が残留することを条件にし、敵対的買収は絶対に行わない。それどころかデューディリジェンス(会計士などの専門家による徹底的調査)さえ行わずに、お互いの「信頼関係」でビジネスを進めることを好む。
さらには、終身雇用制度どころか、「永久雇用制度」を採用している。形式的には現役最長老であった人物に敬意を表して104歳が定年となっているが、本人が希望すれば何歳でも働ける。
世間で「米国流」とされるスタイルとはむしろ真逆といえ、日本型経営に近いといえる。
バブル崩壊後、日本型経営に責任が擦り付けられ悪者にされたが、日本とは社会構造がかなり異なる米国でさえ、(バフェット流にアレンジされた)日本型経営が大成功を収めているのだ。
1400年の歴史を持つ日本において、日本独自の文化の中から生まれた日本型経営が有効であることは明らかだといえる。
実際、失われた30年の間に米国型経営に浸食された日本企業がどうなったかを見ればわかる。
特にこれからのインフレ時代には「米国型経営」に逆風が吹くから、リストラを繰り返して目先の利益を追う企業には投資を行うべきではない。
われわれが投資すべきなのは、長期的な将来を見据えて、じっくりと腰を落ちつけ日本型経営を行う企業なのである。 (人間経済科学研究所、国際投資アナリスト・大原浩) =敬称略