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露朝、軍事協力が加速「北朝鮮がウクライナに派兵」の情報、見返りはミサイル精密誘導技術か 日本は3方面と対峙することに

zakzak by夕刊フジ 2024年7月16日 6時30分

北朝鮮が、ウクライナのロシア占領地域に派兵する可能性が浮上している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名したことで、両国は事実上の軍事同盟関係となった。派兵の見返りにロシアから北朝鮮へ兵器の技術協力や、有事の際の連携が行われれば、日本にとって直接の脅威となる。対中国で抑止力強化を急ぐ日本にさらなる難題が横たわった。

北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は12日、北朝鮮が何百万発もの砲弾をロシアに与えているとし「ウクライナに対する残忍な戦争や侵略を続けることを可能にしている」と批判した。「ロシアが見返りに北朝鮮の核兵器やミサイルの開発を支援することを深く懸念している」と述べた。共同通信の単独会見に応じた。

韓国メディアによると、韓国国家情報院は、北朝鮮が「工兵」をウクライナに派遣することを「注視している」と報じた。東部ドネツク州などロシアが占領した地域の〝復興〟のため派遣されるという。米国防総省のパット・ライダー報道官も6月25日の会見で、北朝鮮の派兵について「注視している」と述べた。

畔蒜泰助氏「北の『非核化』『孤立化』の流れ止まるリスク」

ロシアの外交・安全保障に詳しい笹川平和財団の畔蒜(あびる)泰助上席研究員は「ウクライナ派兵は信憑(しんぴょう)性の高い情報ではないか。北朝鮮兵を前線に送り込むことは考えにくく、塹壕の設置などを行う工兵として派遣するのではないか。両国の連携強化は事実上、ロシアが北朝鮮の制裁を解除したに等しく、北朝鮮を『非核化』『孤立化』させる流れが阻止されることになりかねない。北朝鮮にとっては、これまで依存してきた中国に対しても戦略的に自立性を主張する機会を得ることにもなる。ロシアへの兵器や人員の提供は大きな外交カードだ」と解説する。

6月にはプーチン氏が24年ぶりに訪朝し、正恩氏と署名した「包括的戦略パートナーシップ条約」では、有事の際の軍事的相互援助などが盛り込まれた。北朝鮮はロシアから自国製兵器の実戦使用データを受け取り、兵器改良に活用しているとも指摘される。

畔蒜氏は「ロシアが孤立化を止めてくれたことで正恩氏には高揚感があり、兵器や人員を提供しているとも考えられる。今後、韓国がウクライナへ武器を供与した際、ロシアが報復として北朝鮮への軍事技術提供を加速させる恐れもゼロではない。日本に対しても潜在的に危険なシグナルになる」とみる。

露副首相が択捉島訪問プーチン政権5期目で初 防衛白書で危機感、北方シフト見直し

プーチン氏と正恩氏の会談以降、北朝鮮は立て続けにミサイルの発射実験を行っている。6月に発射した弾道ミサイルについて朝鮮中央通信は「複数の弾頭を搭載する多弾頭化の技術実験が成功した」と伝えた。7月には「4・5トン級の超大型弾頭」が搭載可能な新型戦術弾道ミサイルの発射実験にも成功したとされる。

ロシアのユーリ・トルトネフ副首相兼極東連邦管区大統領全権代表は12日、ロシアが不法占拠する北方領土の択捉島を訪問し、地元当局者らと面会した。プーチン大統領が通算5期目の任期に入って以来、ロシア政府高官の北方領土入りは初とみられ、日本を威嚇する狙いがうかがえる。

そのロシアを後ろ盾として北朝鮮が軍事力を増強することは、日本にとって直接的な脅威だ。

元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は「北ミサイルは米国を第一の目標とするが、在日米軍基地にも照準を合わせているだろう。これまでの発射実験ではたびたび失敗しており、課題は精度向上だ。このため、派兵の見返りとしてロシアから精密誘導兵器の技術輸入を求めると予想される。ロシア製の部品や、ミサイル・コントロールシステムの改良、技術者や、管制要員の派遣なども必要となるが、北朝鮮が直近で実施している発射実験も技術流入の一つの段階である可能性もある」と分析する。

12日に公表された2024年版防衛白書では、東アジアにおいても「ウクライナ侵略と同様の深刻な事態が発生する可能性は排除されない」と危機感を示している。

山下氏は「露朝の連携(有事の相互支援)に関する情勢認識については、すみやかに再分析を行い、必要なら安保3文書の改定(防衛力の強化)を行わなければならない。防衛力整備計画では対中国を見据えた『南西シフト』が目立つが、今後は北方防衛強化も視野に入れなければならなくなった。有事の際には南西、朝鮮半島、北方の3正面で対峙(たいじ)することになり、冷戦以来の厳しい局面といえる」と強調した。

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