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わきの下やお尻に繰り返し…こんな「おでき」はすぐ病院へ

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年5月29日 9時26分

 おできで痛みがあるなら、速やかに皮膚科を受診した方がいい。こじらせると治療をしても元の状態には戻らない、不可逆性の変化が生じるものもある。ひどい場合は、手術となり、その後も再発を繰り返す。

  ◇  ◇  ◇

 おできの中でも次に該当するようなら要注意だ。

▽繰り返す(過去半年の間に2回以上)

▽できる場所が、わきの下、お尻、足の付け根(陰部)、女性では胸

「いずれも化膿性汗腺炎の特徴です」と言うのは、虎の門病院皮膚科・林伸和部長。慢性的な皮膚の病気で、毛穴がなんらかの原因で詰まり、皮膚の中の毛を包む組織(毛包)の膜が破れ、内容物が周囲に漏れ出して炎症が起こる。おできは一つではなく複数でき、赤く腫れ、痛みを伴う。

「自己炎症性疾患の一つで、毛穴が詰まりやすい体質の人がなりやすい。その体質が受け継がれる遺伝的要因もあります。喫煙や肥満との関連も指摘されています。欧米では女性に多く見られるとのデータがありますが、日本を含む東アジアでは男性の、特にお尻にできるケースが多く見られます」(林部長=以下同)

 毛包が破れて起こる炎症にはTNFαと呼ばれる物質が関係していて、化膿性汗腺炎では炎症が起きている部位だけでなく、その周りの炎症のないところでもTNFαがたくさんあるために、炎症が悪化し、前述の通り、慢性化するのだ。

 一般的な症状の経過は、「小さなしこりやこぶのようなものができ、時間が経つと赤く腫れる(結節)」↓「炎症が進行し、しこりが大きくなって破れ、膿が出て、痛みを伴う潰瘍となる(膿瘍)」↓「結節や膿瘍が皮膚の下でつながり、トンネルのようになる、痛みを伴う膿が漏れ出る(瘻孔)」↓「膿瘍の再発で皮膚が厚く太い縄のような傷痕が残る(瘢痕)」。

「1~2個しこりがある程度の軽症の人もいる一方で、重症化し、膿が出続ける人もいます。お尻の化膿性汗腺炎で膿が止まらず、おむつをはいていないとズボンが汚れてしまうという患者さんもいました」

 お尻や陰部など診察を受けるのが恥ずかしいと思いがちな場所にできることもあり、悪化してから受診するケースがほとんど。治療を受けずに我慢している人もいると推察されている。

■新たな治療薬が承認された

「化膿性汗腺炎はハーレー分類という方法で重症度を3段階に分けます。ハーレー分類1がおできだけ、ハーレー分類2が瘻孔と瘢痕、ハーレー分類3が瘻孔が全体に広がっている状態ですが、ハーレー分類1で受診する人はまれ。ハーレー分類2や3になってからの受診が大半です」 

 ハーレー分類1で治療を始めれば進行を抑えられるが、ハーレー分類3ではすでに不可逆性の状態になっており、手術しかない。

「皮膚を大きく取り除き、範囲が広ければ皮膚移植が必要となります。手術しても完治せず、手術した周りの皮膚や別の場所に化膿性汗腺炎が起こるケースも珍しくありません」

 以前は、化膿性汗腺炎の治療は抗生物質か手術しかなかった。抗生物質は効き目が高くなく、使い続けると耐性ができるので、「いい治療」とは言い難い状況だった。そんな中、2019年に化膿性汗腺炎の新たな治療薬として承認されたのが、生物学的製剤の「ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)」だ。

「偽薬(プラセボ)を使わない日本で行われた臨床試験では、治療が成功したと見なす『ハイスコア達成率50%』を12週後に86.7%の患者さんがクリアしています」

 ハイスコア達成率50%というのは、結節と膿瘍の数が少なくとも50%減少し、かつ膿瘍数および瘻孔数の増加がない状態のこと。

「ヒュミラの臨床試験では、症状が出てから10年超経過してから治療すると、10年以内に治療を開始した群と比べ1.92倍、治療に反応が悪いとの結果も出ています」

 ヒュミラに続き、抗生物質を超える効果のある新薬が、現在開発中だという。

 思い当たる症状がある方は、治療をあきらめず、不可逆性の状態に達する前に治療を開始することが望ましい。

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