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尿でがんのリスクを検知する「マイシグナル・ライト」ってなんだ?

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年6月1日 9時26分

 日本人の2人に1人が罹患し、死因の第1位を占めるのが「がん」だ。ただ、忙しいからとがん検診を後回しにしている人も少なくない。そんな人にとって、尿検査だけでがんのリスクをチェックできる「マイシグナル・ライト」が検診を受けるきっかけになるかもしれない。製品を開発した名古屋大学発のベンチャー企業「Craif株式会社」広報の松本尚樹さんに聞いた。

「マイシグナル・ライトは、尿だけで全身のさまざまながんのリスクをステージ1の段階から発見できる、がんのリスク検査です。がんは、がん細胞が増殖し蓄積されることで発症し、増殖する際にジアセチルスペルミンと呼ばれる代謝物が放出され、尿中に排出されます。マイシグナル・ライトでは、尿を独自の測定機器にかけ、尿中に含まれるジアセチルスペルミンの値からがんのリスクを判定しています」

 これまで同企業では、「マイシグナル・スキャン」と呼ばれるがんリスク検査を提供してきた。がん細胞から分泌され尿に含まれるマイクロRNAをAIで分析し、7種類(大腸、肺、胃、乳、膵臓、食道、卵巣)のがんをステージ1の段階からリスクを検知できる。現在、全国の600を超える医療機関で導入されているという。

「ただ、価格が1回につき6万9300円(税込み)で、ハードルが高いと感じるとの声もいただいていました。手ごろな価格で気軽に受けてもらえるよう、今回、1万9800円(税込み)で購入できるマイシグナル・ライトの発売に踏み切りました」

 検査手順は至って簡単だ。マイシグナルのECサイトで検査キットを購入後、自宅で採尿し検査ラボへ郵送する。約30営業日で検査結果報告書が自宅に届くほか、オンライン上でも確認できる。通常のがん検診のような検査前の食事制限は必要ない。

「両製品とも尿検査で行うのは同じですが、がん種を特定できるマイシグナル・スキャンと違い、マイシグナル・ライトでは種類の特定ができません。万が一、結果表で『リスクが高い』と判定された場合には、追加検査設備があるマイシグナル提携医療機関などへのご案内や、リスクの高いがん種を特定できるマイシグナル・スキャンの案内などアフターフォローを行っています。近年は、がん検診率の低さも問題視されているので、マイシグナル・ライトの結果をもとに、がん検診の受診を促せればと思っています」

■“低リスク”でも安心してはいけない

 国民生活基礎調査の統計を見ると、日本における5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頚がん)検診の受診率は低い。がん対策基本法が成立した2006年に比べて年々増加傾向にあるものの、22年においては50%未満と、80%を超えるアメリカと比較すると非常に低いことが分かる。

 内閣府が実施したがん対策に関する世論調査によれば、がん検診を受けない理由として最も多かったのが「心配なときはいつでも医療機関を受診できるから」、次いで「費用がかかり経済的にも負担になるから」「受ける時間がないから」などと、がん検診をためらう理由はさまざまだ。

 そこで、昨年3月末に閣議決定された「第4期がん対策推進基本計画」には、がんの死亡率減少を目的に、がん検診の受診率を60%に向上させる目標が盛り込まれている。

 がんを早期に発見できれば、手術や抗がん剤といった治療による身体的な負担だけでなく、経済面や時間面での負担も少なくなる。さらに、早期発見されたがんの5年相対生存率は90%以上との報告もされている。

 がんリスク検査はあくまでも“参考”で、低リスクや陰性だからといって安心はできない。

 自分の命を守るためにも、症状がないからと過信せず、定期的に自治体や医療機関が実施しているがん検診を受診したい。

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