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大きくなっても続くおねしょ…子供の自尊心を傷つける前に治療を

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年6月4日 9時26分

 今日6月3日から始まっているのが「世界夜尿症ウイーク」。おねしょ(夜尿症)に関する啓発活動が世界各国で行われる。「おねしょって病気なの?」と思った人もいるだろう。夜尿症は、状況によっては治療が必要で、かつ治せる病気だ。

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 小学校1年生だとクラスに3.5人は夜尿症──。こう言うのは、日本夜尿症・尿失禁学会理事長の大友義之医師(順天堂大学医学部付属練馬病院小児科科長)。

 しかし、小学校低学年で夜尿症で病院を受診している子供は少ない。

「放っておいても良くなる子供がいる一方で、そうでないケースもある。中学生ともなるとシモの世話を大人に関与されることに抵抗を覚え、治療につながっても途中で投げ出してしまう子供も。治りきらずに大人まで持ち越す人もいます」(大友医師=以下同)

 夜尿症は自尊心を低下させ、友人・学校関係に影響を与える。大友医師も小学4年までおねしょをしていたそうで、「自分に自信を持てなかった。友達との泊まりはできなかった」と話す。

「海外のデータでは、夜尿症のトラウマはいじめより高いとの結果。周りが思っている以上に大きなトラウマとなることを示しています」

■小1でも改善せず困っているなら受診

 夜尿症と診断されるのは、5歳を超えても月1回以上のおねしょが3カ月以上続く場合。「小学1年生に上がった段階で改善せず、本人、親が困っているなら受診」というのが、世界共通の認識だ。自尊心に影響を与える前に対策を講じることがベストだろう。

 夜尿の原因は「夜に作られる尿量が多い」「膀胱にためられる尿量が少ない」「眠りから目覚めにくい」の3つが複合的に絡んでいる。

 もう少し詳しく説明すると、「夜間多尿=夜間、尿が作られるのを抑える抗利尿ホルモンの分泌が少ない」「膀胱容量の減少=本来は睡眠中は膀胱の容量が多くなるが、膀胱が過活動で少量でも限界となる」「覚醒閾値の上昇=漏らしても起きられない」が原因。治療は、これらにアプローチする。

「夜尿症の7割に夜間多尿、5割に膀胱の過活動が見られます。日本での治療の流れとしては、『寝る前に水分摂取を控え、トイレに行く』『夕食は塩分控えめ』などの生活改善をまず指導します。これで1~2割が改善する。うまくいかなければ、夜間多尿や膀胱の過活動に効果がある薬を用います」

 薬で夜間の尿量が適正なものになってくると、徐々に抗利尿ホルモンをうまく分泌できるサイクルが出来上がってくる。

 また、子供の膀胱の過活動は膀胱の機能の未発達が関係している。薬で膀胱の緊張を緩めて尿をためられるようにするうち、膀胱が発達し、夜間でも十分にためられるようになる。薬は複数あり、年齢や症状で使い分けたり併用したり。夜尿症の改善に合わせて減量し、最終的にゼロへ持っていく。

 アラーム療法も効果がある。欧米では第1選択肢である、夜尿症のポピュラーな治療法だ。

「センサーをオムツやパンツにつけておき、漏れた瞬間にセンサーが感知しアラームが鳴る。それで目が覚めて漏れたと気付けば、それ以上漏らさないようにおしっこをこらえる。繰り返すうち、膀胱にためられる尿が増えていきます。夜間多尿や膀胱の過活動があっても、漏らした瞬間に覚醒できれば、それ以上漏らさなくて済む。アラーム療法で子供が目覚められない場合は、親が子供を起こし、トイレに行くよう促します」

 治癒までの期間として、「治療後、半年までに80%の子供で症状軽快」「治療後2年で治癒した子供は75%以上」といった報告がある。焦らずじっくり取り組むことが必要だ。

 なお、夜尿症は子供の性格や親の育て方などとは関係がない。叱って改善するものでもない。おねしょがなかった日はしっかりと褒めて、成功体験で自信をつけさせることが重要だ。

■どこを受診?

 現在は小児科医の間で夜尿症の認知度は高い。まずは近所の小児科を受診。症状改善が見られなければ、日本夜尿症・尿失禁学会のHPの「会員一覧」の欄に記載されている医師に相談を。

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