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寝起きの頭痛が続いたら…「脳腫瘍」のサインかもしれない 年間2万人が発症

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年6月7日 9時26分

 日本人の4人に1人は頭痛を抱えている。中でも、一日中、頭全体が痛い、痛み止めを飲んでも改善しない場合には注意したほうがいい。「脳腫瘍」のサインかもしれない。「くどうちあき脳神経外科クリニック」院長の工藤千秋氏に聞いた。

  ◇  ◇  ◇

 脳腫瘍は、頭蓋骨内にできた腫瘍の総称だ。肺がんや乳がんなど、他の部位から転移した「転移性脳腫瘍」と、脳の細胞や神経、脳を包む膜から発生した「原発性脳腫瘍」に分けられる。さらに後者は良性と悪性に分類され、良性は増殖が緩やかで、正常な組織との境が明確なのに対し、悪性は増殖スピードが速く、正常な組織との境がはっきりしない。

 国立がん研究センターによると、国内で年間2万人が発症するとされ、小児から高齢者まで幅広い年代に起こる。

「原発性脳腫瘍だけでも150種類あり、腫瘍ができた部位により症状が異なりますが、一般的に頭全体の痛みが特徴で、痛みは1週間、2週間、1カ月など長期間にわたって持続します。中でも朝起きた際に強い頭痛が生じる『モーニングヘッドエイク』を訴える人が多い。睡眠中は二酸化炭素が体内にたまりやすく、血管が拡張するのと同時に周囲にある痛みをつかさどる神経も広がります。腫瘍があるとその神経を圧迫してしまうので、寝起きに頭痛が起こるのです」

 腫瘍が大きくなると脳内の圧力が高くなり、四六時中、治まらない激しい頭痛や吐き気のほか、めまい、ろれつが回らない、手足が思うように動かないといった脳梗塞のような症状が現れる。

 ある40代の男性は、半年前から頭痛の症状を自覚していたものの、仕事が多忙で疲れがたまり、酒とたばこの量が増えたのが原因だろうと放置していた。1カ月前から慢性的な激しい頭痛に加え、左手のしびれがひどくなったことからやっと病院を受診。MRI検査の画像を見ると、白い影が右側の脳の半分を占め、大病院で詳しく検査を行うと原発性の悪性腫瘍と判明した。腫瘍を取り除く手術を受け、抗がん剤治療も行ったが、すでに手遅れの状態で、頭痛やしびれの症状は改善しないだけでなく、余命半年と宣告された。

■早い段階で手術すれば改善できる

「脳腫瘍が悪性だった場合、進行が非常に速く発症から半年~1年以内に亡くなる人も少なくありません。ただ良性であっても、命をつかさどる脳の奥にある脳幹が圧迫される頭蓋底腫瘍の場合、放っておくと呼吸状態が悪くなり、命を落とすリスクが高い。風邪薬や痛み止めを飲んで3日たっても痛みが改善しないようであれば脳に何かしらの異常があるサインと考えられます」

 脳腫瘍が良性の場合、手術で腫瘍を全摘出すれば完治が期待できる。一方で、悪性や良性でも頭蓋底など、脳の深部に腫瘍があると手術で命を救えても後遺症が残るリスクが高い。ほかにも呼吸中枢や循環器中枢など、生命維持に重要な役割を担う延髄に脳腫瘍が癒着していると、手術で癒着を剥がす際に命を落としかねないという。

「良性でも悪性でも癒着の程度が深刻であれば、『ガンマナイフ』と呼ばれるガンマ線(放射線)で患部を集中照射し、部分的に焼き切る治療を行います。脳腫瘍は早い段階で手術を行えば症状が改善できるので、痛みや体の異変があれば迷わず脳神経外科を受診してください」

 脳の病気は早期発見、早期治療がカギ。脳腫瘍に限らず、脳に異常がないか自宅でセルフチェックできる方法を紹介する。

【片足立ち試験】 
 左右交互に片足で立ち、どちらか一方で、ふらついたり、きちんと立てない場合には脳の異常が疑われる。

【両上肢挙上試験】
 手のひらを上に向けた状態で両腕を肩の高さまで水平に持ち上げてキープし、左右どちらかの腕が内側を向いて下がると脳に異常がある可能性が高い。

 天寿を全うするためにも、万が一、普段と違った頭痛が続くようであれば専門医を受診したい。

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