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「自覚なし」の6人に1人は水虫あり…16年ぶりの大規模調査で判明

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年6月12日 9時26分

 水虫だが、それを自覚していない人がどれだけいるか? 足白癬・爪白癬の潜在患者率を調べる大規模な疫学調査が、16年ぶりに行われ、4月の日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会で第一報が発表された。調査を主導した「神奈川はた皮膚科クリニック」(横浜市神奈川区)の畑康樹院長に話を聞いた。

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 調査対象となったのは、2023年4~5月に国内211施設の皮膚科外来を受診した患者。この中から、受診理由を「足・爪の水虫の診察」と回答した人を除き、調査に参加同意を得られた患者へ足の健康調査を実施した。

「足白癬、爪白癬で受診していない患者をあえて選び、潜在患者率を調べました。結果、対象となった1万4588例のうち、足白癬・爪白癬が疑われた人は3310人(22.7%)。このうち確定診断や治療を希望したのは2755人(83.2%)で、足白癬だけの人は1045人、爪白癬だけの人は343人、足白癬と爪白癬両方がある人は634人という確定診断の結果が得られました」(畑院長=以下同)

 確定診断を希望しなかった人にも足・爪白癬が含まれている可能性があることから、前述の確定診断に至った人の割合を用いて、国内の足・爪白癬の潜在患者率を推定。足白癬がある人は13.7%、爪白癬は7.9%、足白癬または爪白癬のどちらかがある人は16.6%と結論づけた。

 つまり、自分が水虫だと思っていない人の中でも、7人に1人は足白癬、13人に1人は爪白癬、6人に1人は足に何らかの白癬を有している(囲み参照)。

「前回の2007年時以降、新しい抗真菌剤が登場し、白癬の治療は格段に進歩しました。しかし、潜在的な患者さんの割合は減っていない。足・爪白癬は感染症なので、治療しなければ他人にうつしてしまう。家族に1人、足・爪白癬の患者さんがいれば、家族全員が感染しやすい状況にあり、未治療の人がいる限り、お互いにうつしたりうつされたりを繰り返すピンポン感染が続きます」

 ピンポン感染は自分から他人へ、だけではない。爪白癬があれば、足白癬が治ってもまた繰り返す。

 足以外の部位への感染もある。白癬菌が体に増殖する体部白癬(ぜにたむし)、太ももの付け根に増殖する股部白癬(いんきんたむし)だ。

「体部白癬や股部白癬の患者さんが来院すると、私は必ず足や爪も調べます。足白癬や爪白癬が判明し、『足からうつったんですよ』と説明すると、驚かれます」

■爪水虫を治さない限り、再発・ほかへの感染を繰り返す

 足白癬や爪白癬は、長期的に見れば転倒のしやすさや歩きにくさにつながり、高齢者では骨折や寝たきりの原因になりかねない。

 まず念頭に置くべきは、「症状がない=足・爪白癬ではない」は違うということ。特に爪白癬は、「爪の色が白く濁る」「爪の厚みが増して変形する」「爪がもろく崩れやすい」といった爪の変化が見られるものの、痛みやかゆみを伴わないので放置しがちだ。ベテラン皮膚科医でも見た目だけでは診断をつけられないので、素人であれば「見た目で判断」は無謀。もしかして、と思ったら皮膚科医の受診を。

「足白癬は市販の塗り薬もありますが、爪白癬は市販薬はありません。塗り薬であれば年単位での日数がかかり、飲み薬は効果が高いものの、肝機能障害を生じることがあり、慎重に投与しなくてはならない。足・爪白癬ともに見た目がきれいになったからといって治療が終わりではない。白癬菌が完全にいなくなるまでには時間を要し、途中で治療をやめると再発、別の場所への感染を繰り返します」

 しかし、しっかり治すことの意味は大きい。自分のためにも、家族のためにも。

■ベテラン医師でも視診だけでは誤診リスクがある

 今回の調査では、確定診断はほぼ100%、顕微鏡検査を用いて行われた。

 足白癬、爪白癬と同じような症状の足・爪疾患は多く、ベテランの皮膚科医であっても視診だけでは誤診するリスクがあるからだ。前回は顕微鏡検査が必須となっておらず、顕微鏡検査での確定診断は80%に達していなかった。

 つまり顕微鏡検査なしで足・爪白癬と診断された人の中には「実は違う疾患だった」というケースもあり得る。

 前回の結果では「5人に1人が足白癬、10人に1人が爪白癬、4人に1人が足に何らかの白癬を有している」であり、今回はそれより減っているように感じるかもしれないが、畑院長は「顕微鏡検査の実施率が同一であれば、足・爪白癬の割合は前回、今回ともにあまり変わらないものだっただろう」と指摘する。

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