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水分補給はしっかりしていているのに熱中症に…正しい対策は?

日刊ゲンダイ ヘルスケア 2024年6月18日 9時26分

 水分補給が熱中症対策で重要と知っている一方、「正しい水分補給」ができている人は多くない。暑さに体が慣れていない今、それほどの気温上昇でなくても熱中症を起こす可能性がある。「熱中症からいのちを守る」を出版した横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜医師に聞いた。

 東京都で保健体育教諭として働く女性(40代)は旅行先の沖縄で2度、熱中症になったことがある。水分補給はしっかりしていたのに、だ。

「思い返せば、ペットボトルの水しか飲んでいなかった。仕事柄『水分だけでは脱水症、熱中症は防げない』と知っていたのに、実践できていなかった」(女性)

 谷口医師によれば、汗を大量にかいているとき、水分補給だけでは、かえって脱水症状を招くことがあるという。

「汗とともに、汗に含まれるナトリウムも体外に出ていきます。そこへ水だけを補給すると、血液中のナトリウム濃度が低下します。すると、これ以上、ナトリウム濃度が下がらないようにするために一時的に喉の渇きが止まり、水を飲む気がなくなる。同時に、ナトリウム濃度を元に戻すために余分な水分が尿として排泄されてしまう。結果、脱水症状に至り、熱中症発症のリスクを高めるのです」(谷口医師=以下同)

 冷房が効いた状況での通勤、仕事、家事、買い物では、水やお茶など“普通の水分補給”で問題ない。しかし、屋外での活動で汗を大量にかく状況では、塩分入りの水分、または経口補水液の摂取が必要だ。

「汗をかいた分、補給してください。一度に大量の水を飲んでも吸収されづらいので、少量ずつこまめに飲むのがポイントです」

■1日3度の食事が基本

 さらには前述のように、体内の水分量が足らなくても喉の渇きが止まっている可能性がある。「喉の渇きを覚える前に」も押さえておかなければならない。

 ただし、水分補給の基本は「1日3度の食事」だ。

「熱中症対策というと、ペットボトルなどからの水分補給にだけ目が行きがちです。もちろんそれは意識して欲しいのですが、それは、きちんと食事を取った上でのこと。食事には多くの水分が含まれており、かつ糖分、ビタミン、ミネラルが含まれています。食事をしっかり取っていれば、そう簡単に熱中症にはなりません。言い換えると、食事摂取を怠ると、それが引き金で暑い時季に熱中症になる可能性があります」

 朝食抜きの人も多いだろう。しかし朝食を抜くだけで、1日に必要な水分摂取量の約3分の1が不足する。食欲がなくどうしても食べられなければ、水分を多く含む、夏が旬の野菜や果物を。

 熱中症にかかるリスクが高い人がいる。子供や高齢者、そして肥満や運動習慣がない人。

「筋肉量が少ないと体液量(水分量)の割合が減少し、熱中症になりやすい。健常者より多めに水分補給をしてください」

 とはいえ、熱中症で救急搬送される人には、健康な若者も少なくない。冒頭で紹介した熱中症経験が2度ある女性は、日頃から運動をしており、健康にも自信があった。

「自分は大丈夫という自信が、熱中症対策の不十分さにつながっているのではないか。最初はちょっとした不調程度なのが、気がついたらぐったりして体を動かせない、となるのが熱中症。不調が生じる前に手を打つ。もし何か変と思ったら、様子見や我慢をせず速やかに塩分入りの水や経口補水液を飲む。一時的であれば、清涼飲料水でも構いません」

 谷口医師が強調するのは「熱中症は予防でゼロにできる唯一の病気」。正しい予防を。

◆脱水症と熱中症

 大量の汗をかいたり水分補給不足で脱水症になると、体温調節が機能しなくなり体内の温度が上がり、熱中症を起こし、対処が遅れると命に関わる。脱水症は体内の水や電解質が汗で失われている状態、熱中症は高温の環境で生じる健康障害の総称。

◆清涼飲料水は脱水症状対策になる?

「清涼飲料水は糖分が多く、日常的に飲むと糖尿病のリスクを高めます。子供にとっても同じで、日常的な摂取はお勧めしません」(谷口医師)

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