2014年11月24日、JICAタイ事務所はバンコク都内のホテルで、ODA60周年記念セミナー「タイ日協力の歩みとこれから」(250名参加)を行なった。
在タイ日本国大使館佐藤大使がタイにおける今後の日本との関わりの動向について、また国際協力60周年を迎える今、日本のODAの特徴、新しい日本のODA大綱、タイへのODAの意義等について説明した。最後にタイの新たな役割として、TICA(外務省国際開発協力機構)等を通じたASEAN周辺国への支援の重要性を強調し、タイ政府の周辺国支援の動きに対してはタイと日本で手を携えて協力していくべきと話した。
次に、マナスウィ外務省副次官が、初期の純粋な援助受取国としてのスタートから、その後のグローバルパートナーとして第三国支援を行うことに合意した「日-タイパートナーシッププログラム(JTPP)」の展開、及び現在タイ外務省でドラフト中の「Four-Year International Development Cooperation Strategy (2015-2019)」に至る、「タイと日本の協力の歴史」について説明した。特に、農業開発、タイ独自の「足るを知る経済哲学」に基づいた農村開発、ユニバーサルヘルスカバレッジ政策、観光等、タイで実績のある分野について、地域拠点となることを目指していると述べた。
スリン元ASEAN事務総長は、「Thailand-Japan Partnership toward AEC and Beyond」と題した基調講演の中で、「タイは1人当たりの国内総生産(GDP)が5,000米ドルを超え、中進国以上となり、すでに先進国から援助を受けなければならない国ではなく、JICA等と協力し、援助国として開発途上国を支援する立場にある」と述べ、特に「人間の安全保障においては、厳しい立場にある個人が自分の安全を守ることができる力を持たせること、各個人のエンパワメントこそが重要であり、タイも人間の安全保障のための国際協力をより積極的に実施すべきである」と発言しました。また「ASEAN域内のみならず、アフリカ等の途上国においては、タイが中進国になるにあたって日本等から吸収し、実践、蓄積してきた知見が有効であり、JICAが設立に携わり、タイ国内有数の工科大学となったモンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)などを通じ、タイと日本の技術を周辺国やアフリカなどに展開していくことが望ましい」と提言した。加えて、「来年のAEC成立に向け、ASEAN域内が富める国と貧しい国に分かれたままでは、そして1日3ドル以下で暮らす人口がまだまだ多くいるような状況では、ASEAN統合の成功や持続的社会の形成もあり得ず、ASEANとの深い協力関係にある日本と協力しつつASEAN域内の途上国を支援することが何より重要である」ことを再度強調した。
プレゼンテーションセッションではJICAと関係が深いDr. コ゛ーソン(KMITL-工学高等教育協力)、Prof. Dr. ク゛ラセー(AIHD(マヒドン大学アセアン保健開発研究所)-プライマリーヘルスケア協力), Dr. モンティッフ゜(ERTC(タイ環境研究研修センター)-環境分野協力)、Dr. ハ゜ッタマー(NESDB(国家経済社会開発庁)-イースタンシーボード開発協力)より、それぞれの携わったプロジェクに関連して、タイ日協力の好事例と今後への提言を発表した。
続いて、JICA東南アジア・大洋州部長入柿秀俊氏は、「Challenges of JICA Cooperation to ASEAN」と題して、ASEAN2025の展望及びタイにおけるJICAの事業実績について説明した。
パネルディスカッションでは「Thailand-Japan Cooperation Post 2015」をテーマにJICAタイ事務所長池田修一氏をモデレーターに、スチャタ゛ーTICA局長、ティーラットPDMO(財務省公的債務管理局)財務部長、ネウィンNEDA(周辺諸国経済開発協力機構)長官、ハ゜ッタマーNESDB副長官をパネリストとし、これからのタイ日協力の方向性について意見交換を行った。PDMOのティーラット財務部長は、「長年の円借款の支援に感謝すると同時に、タイ財務省は、財政リスクを低減化するために、借入を管理してきたが、中進国となり、更に発展するために、インフラ整備事業に多大な投資資金が必要である。日本から現在支援いただいている都市鉄道の建設(下記に説明文有)は、車社会から脱却し、環境負荷を軽減するための重要なプロジェクトであり、こうした大きなインパクトのある事業に対し、日本政府には、より幅広い分野において円借款の条件緩和を積極的にご検討いただきたい」と語った。
セミナー終了後、タイ、外国、日系メディア向けにプレスカンファレンスを行った。プレスカンファレンスではJICAタイ事務所長の池田氏とスチャタ゛ーTICA局長が共同声明文を読み上げ、またプラキットKMTIL元学長及びKMTILを題材とした「一つの国際協力物語」を執筆した荒木国際開発ジャーナル社会長から、日本とタイの協力の成功事例の教訓について説明、その後質疑応答を行なった。
都市鉄道の建設とは、「名称 パープルライン。バンコク北部バンスー地区と北西郊外のバンヤイ地区(約23km・16駅)を結ぶ。鉄道路線土木工事に約800億円の円借款を供与。また、車両や信号等のシステムと10年間の維持管理は日系企業が受注し、2016年の運行時には、タイの都市鉄道で初めて日本製車両(JR東日本グループの総合車両製作所製)の走行が実現する見込み」。
【編集 : 高橋大地】
在タイ日本国大使館佐藤大使がタイにおける今後の日本との関わりの動向について、また国際協力60周年を迎える今、日本のODAの特徴、新しい日本のODA大綱、タイへのODAの意義等について説明した。最後にタイの新たな役割として、TICA(外務省国際開発協力機構)等を通じたASEAN周辺国への支援の重要性を強調し、タイ政府の周辺国支援の動きに対してはタイと日本で手を携えて協力していくべきと話した。
次に、マナスウィ外務省副次官が、初期の純粋な援助受取国としてのスタートから、その後のグローバルパートナーとして第三国支援を行うことに合意した「日-タイパートナーシッププログラム(JTPP)」の展開、及び現在タイ外務省でドラフト中の「Four-Year International Development Cooperation Strategy (2015-2019)」に至る、「タイと日本の協力の歴史」について説明した。特に、農業開発、タイ独自の「足るを知る経済哲学」に基づいた農村開発、ユニバーサルヘルスカバレッジ政策、観光等、タイで実績のある分野について、地域拠点となることを目指していると述べた。
スリン元ASEAN事務総長は、「Thailand-Japan Partnership toward AEC and Beyond」と題した基調講演の中で、「タイは1人当たりの国内総生産(GDP)が5,000米ドルを超え、中進国以上となり、すでに先進国から援助を受けなければならない国ではなく、JICA等と協力し、援助国として開発途上国を支援する立場にある」と述べ、特に「人間の安全保障においては、厳しい立場にある個人が自分の安全を守ることができる力を持たせること、各個人のエンパワメントこそが重要であり、タイも人間の安全保障のための国際協力をより積極的に実施すべきである」と発言しました。また「ASEAN域内のみならず、アフリカ等の途上国においては、タイが中進国になるにあたって日本等から吸収し、実践、蓄積してきた知見が有効であり、JICAが設立に携わり、タイ国内有数の工科大学となったモンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)などを通じ、タイと日本の技術を周辺国やアフリカなどに展開していくことが望ましい」と提言した。加えて、「来年のAEC成立に向け、ASEAN域内が富める国と貧しい国に分かれたままでは、そして1日3ドル以下で暮らす人口がまだまだ多くいるような状況では、ASEAN統合の成功や持続的社会の形成もあり得ず、ASEANとの深い協力関係にある日本と協力しつつASEAN域内の途上国を支援することが何より重要である」ことを再度強調した。
プレゼンテーションセッションではJICAと関係が深いDr. コ゛ーソン(KMITL-工学高等教育協力)、Prof. Dr. ク゛ラセー(AIHD(マヒドン大学アセアン保健開発研究所)-プライマリーヘルスケア協力), Dr. モンティッフ゜(ERTC(タイ環境研究研修センター)-環境分野協力)、Dr. ハ゜ッタマー(NESDB(国家経済社会開発庁)-イースタンシーボード開発協力)より、それぞれの携わったプロジェクに関連して、タイ日協力の好事例と今後への提言を発表した。
続いて、JICA東南アジア・大洋州部長入柿秀俊氏は、「Challenges of JICA Cooperation to ASEAN」と題して、ASEAN2025の展望及びタイにおけるJICAの事業実績について説明した。
パネルディスカッションでは「Thailand-Japan Cooperation Post 2015」をテーマにJICAタイ事務所長池田修一氏をモデレーターに、スチャタ゛ーTICA局長、ティーラットPDMO(財務省公的債務管理局)財務部長、ネウィンNEDA(周辺諸国経済開発協力機構)長官、ハ゜ッタマーNESDB副長官をパネリストとし、これからのタイ日協力の方向性について意見交換を行った。PDMOのティーラット財務部長は、「長年の円借款の支援に感謝すると同時に、タイ財務省は、財政リスクを低減化するために、借入を管理してきたが、中進国となり、更に発展するために、インフラ整備事業に多大な投資資金が必要である。日本から現在支援いただいている都市鉄道の建設(下記に説明文有)は、車社会から脱却し、環境負荷を軽減するための重要なプロジェクトであり、こうした大きなインパクトのある事業に対し、日本政府には、より幅広い分野において円借款の条件緩和を積極的にご検討いただきたい」と語った。
セミナー終了後、タイ、外国、日系メディア向けにプレスカンファレンスを行った。プレスカンファレンスではJICAタイ事務所長の池田氏とスチャタ゛ーTICA局長が共同声明文を読み上げ、またプラキットKMTIL元学長及びKMTILを題材とした「一つの国際協力物語」を執筆した荒木国際開発ジャーナル社会長から、日本とタイの協力の成功事例の教訓について説明、その後質疑応答を行なった。
都市鉄道の建設とは、「名称 パープルライン。バンコク北部バンスー地区と北西郊外のバンヤイ地区(約23km・16駅)を結ぶ。鉄道路線土木工事に約800億円の円借款を供与。また、車両や信号等のシステムと10年間の維持管理は日系企業が受注し、2016年の運行時には、タイの都市鉄道で初めて日本製車両(JR東日本グループの総合車両製作所製)の走行が実現する見込み」。
【編集 : 高橋大地】