2015年1月21日現在、タイには在留届が出ているだけで、約5万人の日本人が住んでいる。在留届を出さずに滞在する人を含めれば、実態はその2倍から3倍もの邦人が住んでいるといわれている。その多くが、タイで賃貸物件(アパートやコンドミニアム)を借りて暮らしているのだが、そこにはトラブルが常に付いて回っている。
記者自身もバンコクに住んで10年以上経つが、これまでいくつかのアパートに暮らして、何度か引越しも経験してきた。そして、引っ越すたびにいくつものトラブルに見舞われた。
多いのは水回りのトラブルで、水が出ない、トイレや排水溝が詰まる、異臭がするなどなど。その都度に大家や管理人に修理を頼むのだが、当日に修理に来るのはとても早いほうで、数日待たされることも珍しくなかった。また、どう見ても共同溝の詰まりでもあるのに、その修理費を請求されることもあった。
今回は、記者自身の部屋が契約切れになったために新たに探していたところ、日系企業が管理しているという物件に巡りあった。部屋の仲介をする日系不動産は多いが、部屋の管理を一棟丸々扱うというのは、恐らく初めてではないだろうか。
記者が見つけた物件は、「AVORA31」というバンコクの都心で日本人も多く住む地域、スクンビット通り31の中ほどにある50部屋のコンドミニアム。そこで管理を請け負っていたのが、ディアライフ社というバンコクで2012年に創業された不動産会社だ。問い合わせしてみると、社長の安藤氏自らが応対してくれた。
まず、管理業務すべてを請け負うことになった経緯を訊くと、案の定な返事が返ってきた。
「当社ではこれまで普通通りの仲介業をしてきましたが、どうしても大家さんと借り主さんとの間でのトラブルが絶えません。しかも、大家さんがダメ、できないと言われてしまうと、借り主さんが不納得であっても、それ以上できないというジレンマが常に付いて来ました」
タイに住み慣れた記者でさえ、ストレスを覚える大家さんや管理体制には、ここも悩んでいたようだ。
「それならば、いっそ一棟丸々管理業務を請け負ってしまえば、紹介した借り主さんの満足も得られると思ったのです」
しかし、管理業務一切を請け負うとしても、採算的に合うのだろうか。
「当社はまず、修繕専門のスタッフを5人配置しました。交代で24時間待機させています。これはトラブルはいつ起きる分からないことと、当日のスタッフに専門技術がなくとも、まずは応急の手当だけでも対応をするためです」
このへんの発想は、やはり日本人ならではだろう。夜中に何かトラブルがあっても、普通は翌日にスタッフが来てからでしか、要請もできないのがタイでのスタンダードだ。
「これができるのも、オーナーから一定の予算で管理業務一切を請け負い、その範囲内でやっているからです」
とはいえ、その場その場で対応するのも大変なのでは?
「もちろん、そうです。不思議とトラブルは続いてしまったりしますからね。そういったことにならないように、日頃からメーター類の点検をこまめに行なっています。例えば、先月に比べて、急に使用量が多くなっていたりすると、どこかで漏れていたりする可能性がある。それを見つけることでトラブルの予防になるわけです」
タイの出火原因でも割合が多い漏電も、このメーターチェックで予防できることも多そうだ。こうして一棟丸ごと管理するからこそできること。さらに管理の効率をも高められるわけだ。
こうしてみると、管理する企業にとっても、オーナーにとっても、さらに借り主にも良いことずくめのようだ。タイの居住環境は、施行のいい加減さも相まって、決して一筋縄ではいかない。日本のように、管理室に一声言えば済む、というところはまだまだ少ない。こうしたストレスフルな環境に目をつけたこのディアライフ社は、新たなビジネスを創出したのかもしれない。
とはいえ、記者が感心したのは、この発想が利用者、オーナーすべての利益につながるところだ。どうしても自社の利益確保が優先となり、他にかまっていられないのは、どこの企業も同じ。その中でこうした発想を実現できる企業が、日系企業にあったことが非常に頼もしく思えたし、ぜひ成功してほしいと願う事業である。
【取材/撮影 : そむちゃい吉田】
記者自身もバンコクに住んで10年以上経つが、これまでいくつかのアパートに暮らして、何度か引越しも経験してきた。そして、引っ越すたびにいくつものトラブルに見舞われた。
多いのは水回りのトラブルで、水が出ない、トイレや排水溝が詰まる、異臭がするなどなど。その都度に大家や管理人に修理を頼むのだが、当日に修理に来るのはとても早いほうで、数日待たされることも珍しくなかった。また、どう見ても共同溝の詰まりでもあるのに、その修理費を請求されることもあった。
今回は、記者自身の部屋が契約切れになったために新たに探していたところ、日系企業が管理しているという物件に巡りあった。部屋の仲介をする日系不動産は多いが、部屋の管理を一棟丸々扱うというのは、恐らく初めてではないだろうか。
記者が見つけた物件は、「AVORA31」というバンコクの都心で日本人も多く住む地域、スクンビット通り31の中ほどにある50部屋のコンドミニアム。そこで管理を請け負っていたのが、ディアライフ社というバンコクで2012年に創業された不動産会社だ。問い合わせしてみると、社長の安藤氏自らが応対してくれた。
まず、管理業務すべてを請け負うことになった経緯を訊くと、案の定な返事が返ってきた。
「当社ではこれまで普通通りの仲介業をしてきましたが、どうしても大家さんと借り主さんとの間でのトラブルが絶えません。しかも、大家さんがダメ、できないと言われてしまうと、借り主さんが不納得であっても、それ以上できないというジレンマが常に付いて来ました」
タイに住み慣れた記者でさえ、ストレスを覚える大家さんや管理体制には、ここも悩んでいたようだ。
「それならば、いっそ一棟丸々管理業務を請け負ってしまえば、紹介した借り主さんの満足も得られると思ったのです」
しかし、管理業務一切を請け負うとしても、採算的に合うのだろうか。
「当社はまず、修繕専門のスタッフを5人配置しました。交代で24時間待機させています。これはトラブルはいつ起きる分からないことと、当日のスタッフに専門技術がなくとも、まずは応急の手当だけでも対応をするためです」
このへんの発想は、やはり日本人ならではだろう。夜中に何かトラブルがあっても、普通は翌日にスタッフが来てからでしか、要請もできないのがタイでのスタンダードだ。
「これができるのも、オーナーから一定の予算で管理業務一切を請け負い、その範囲内でやっているからです」
とはいえ、その場その場で対応するのも大変なのでは?
「もちろん、そうです。不思議とトラブルは続いてしまったりしますからね。そういったことにならないように、日頃からメーター類の点検をこまめに行なっています。例えば、先月に比べて、急に使用量が多くなっていたりすると、どこかで漏れていたりする可能性がある。それを見つけることでトラブルの予防になるわけです」
タイの出火原因でも割合が多い漏電も、このメーターチェックで予防できることも多そうだ。こうして一棟丸ごと管理するからこそできること。さらに管理の効率をも高められるわけだ。
こうしてみると、管理する企業にとっても、オーナーにとっても、さらに借り主にも良いことずくめのようだ。タイの居住環境は、施行のいい加減さも相まって、決して一筋縄ではいかない。日本のように、管理室に一声言えば済む、というところはまだまだ少ない。こうしたストレスフルな環境に目をつけたこのディアライフ社は、新たなビジネスを創出したのかもしれない。
とはいえ、記者が感心したのは、この発想が利用者、オーナーすべての利益につながるところだ。どうしても自社の利益確保が優先となり、他にかまっていられないのは、どこの企業も同じ。その中でこうした発想を実現できる企業が、日系企業にあったことが非常に頼もしく思えたし、ぜひ成功してほしいと願う事業である。
【取材/撮影 : そむちゃい吉田】