2015年5月18日、HSBC投信は、インドのモディ政権の経済や金融マーケットの現状や見通しについて分析を伝えた。
株式市場は、4月のインド株式市場は代表的株価指数であるSENSEX指数が前月末比-3.4%と下落。背景は、最低代替税(MAT)をめぐる混乱がある。1-3月期の企業決算発表が予想を下回った。5月上旬も、米国の利上げ開始時期を巡る憶測などから、冴えない展開となっている。しかし、インド企業の利益成長率は一時的に予想を下回ったものの、利益率自体は今後3~4年間で約2倍に上昇する見込み。資本投資効率の向上、財政・金融政策の緩和と経済成長の加速がこれを後押しする要因と見ている。
債券市場は、インド債券の利回りは、4月は概ねレンジ内での推移となったが、最終週以降、上昇している。これは、新規国債発行による供給増、原油価格の上昇、ルピー相場の下落による投資家の債券購入意欲の後退が主な要因となった。4月から5月にかけては新規発行が行われる一方、6月には一部の国債の償還が予定されている。当面は利回りが高水準で推移する中、投資家の買いも継続する見通し。
金融政策の波及効果は、市中金利は高止まり状態。今年に入り、政策金利は合計0.5%引き下げられたが、市中銀行の貸出残高伸び率は低下しており、2014年3月には前年同月比+13.9%だったが、2015年2月は+10.4%、3月は+9.5%にとどまっている。貸出の伸び率の鈍化は資金需要低迷に加え貸出金利の高止まりを反映している。
中央銀行が市中金利低下を促している。インド準備銀行(中央銀行)は4月の会合で政策金利の据え置きを決めたが、過去の利下げ効果が表れることを追加緩和実施の前提条件に挙げ、市中銀行に対し、政策金利の変更を貸出金利に適正に反映させるよう強く働きかけた。複数の銀行が貸出金利を0.15~0.25%引き下げている。市中銀行の金利引き下げにより自動車ローン、住宅ローン、その他のローン商品の金利も低下し、借り手の負担は軽減されることになる。金利低下の景気浮揚効果が期待される。
外国為替市場では、インドルピーは4月に対米ドルで約1.5%下落、5月に入ってからも軟調な展開。4月は海外からの投資資金の流出がルピー安要因の一つとなった。ルピーは、インドのインフレ率低下、経常収支改善、低水準の原油価格が下支え要因となる見通し。対米ドルでは現在の63ルピー台後半から強含み、中期的に60~64ルピーのレンジ内で推移すると予想している。
MATについての動き。外国人機関投資家がMAT遡及課税に懸念している。インド歳入庁は、外国籍投資ファンドに対し、従来は支払われていなかったキャピタルゲインへの最低代替税(MAT)を過去に遡及適用する旨の通知を送付した。外国機関投資家がこれに反発、税務専門家の間でも同税の解釈に混乱が生じた。
最低代替税(MAT)とは、会計上の利益の18.5%が法人税額(控除などを含めた税法上の算出額)を上回る場合に支払う税金。企業による最低限の納税を確実にするために1990年代半ばに導入された。また、4月下旬に2015年度予算の修正案が連邦議会に提出され、4月以降は外国籍債券ファンドとプライベート・エクイティ・ファンドついてはMATの納税義務が免除されること、加えて、有価証券の売却益、外国企業に支払われるロイヤルティー・技術サービス料はMATの課税対象から除外されることが明確にされた。
ジャイトリー財務相は、2月下旬の連邦政府予算演説で、外国籍株式ファンドは4月以降については、MATの納税義務が免除されることを明らかにしていたが、今回、債券についても外国機関投資家の懸念は払拭された。
政府の対応努力で市場の懸念薄れている。外国機関投資家の間で高まる反発を受けて、政府はこれを和らげるべく対応した。外国機関投資家と電話会議を行い、「シンガポールやモーリシャスを含め(二重課税を回避するための)租税条約締結国の外国ポートフォリオ投資家(FPI)は、過去のMATの支払義務はない」と繰り返し述べた。
モディ政権は事業活動推進に向け税制を整備している。一方、モディ首相は約1年前の就任以降、国内外の企業にとり、インドでの事業活動を営みやすい税制を整備し、新たに課税を遡及適用することは控えることを公約した。また、政府は今後4年間で法人税率を現行の30%から25%に引き下げる方針を示した。5月には物品・サービス税(GST)導入のための改正法案が下院を通過し、インド史上最も野心的な税制改革の実施が一歩現実に近づいた。GSTは従来の物品税、サービス税、州付加価値税(VAT)、入境税、入市税、その他の州税を統合したものであり、2016年4月1日からの導入が提案されている。
【編集 : 高橋大地】
株式市場は、4月のインド株式市場は代表的株価指数であるSENSEX指数が前月末比-3.4%と下落。背景は、最低代替税(MAT)をめぐる混乱がある。1-3月期の企業決算発表が予想を下回った。5月上旬も、米国の利上げ開始時期を巡る憶測などから、冴えない展開となっている。しかし、インド企業の利益成長率は一時的に予想を下回ったものの、利益率自体は今後3~4年間で約2倍に上昇する見込み。資本投資効率の向上、財政・金融政策の緩和と経済成長の加速がこれを後押しする要因と見ている。
債券市場は、インド債券の利回りは、4月は概ねレンジ内での推移となったが、最終週以降、上昇している。これは、新規国債発行による供給増、原油価格の上昇、ルピー相場の下落による投資家の債券購入意欲の後退が主な要因となった。4月から5月にかけては新規発行が行われる一方、6月には一部の国債の償還が予定されている。当面は利回りが高水準で推移する中、投資家の買いも継続する見通し。
金融政策の波及効果は、市中金利は高止まり状態。今年に入り、政策金利は合計0.5%引き下げられたが、市中銀行の貸出残高伸び率は低下しており、2014年3月には前年同月比+13.9%だったが、2015年2月は+10.4%、3月は+9.5%にとどまっている。貸出の伸び率の鈍化は資金需要低迷に加え貸出金利の高止まりを反映している。
中央銀行が市中金利低下を促している。インド準備銀行(中央銀行)は4月の会合で政策金利の据え置きを決めたが、過去の利下げ効果が表れることを追加緩和実施の前提条件に挙げ、市中銀行に対し、政策金利の変更を貸出金利に適正に反映させるよう強く働きかけた。複数の銀行が貸出金利を0.15~0.25%引き下げている。市中銀行の金利引き下げにより自動車ローン、住宅ローン、その他のローン商品の金利も低下し、借り手の負担は軽減されることになる。金利低下の景気浮揚効果が期待される。
外国為替市場では、インドルピーは4月に対米ドルで約1.5%下落、5月に入ってからも軟調な展開。4月は海外からの投資資金の流出がルピー安要因の一つとなった。ルピーは、インドのインフレ率低下、経常収支改善、低水準の原油価格が下支え要因となる見通し。対米ドルでは現在の63ルピー台後半から強含み、中期的に60~64ルピーのレンジ内で推移すると予想している。
MATについての動き。外国人機関投資家がMAT遡及課税に懸念している。インド歳入庁は、外国籍投資ファンドに対し、従来は支払われていなかったキャピタルゲインへの最低代替税(MAT)を過去に遡及適用する旨の通知を送付した。外国機関投資家がこれに反発、税務専門家の間でも同税の解釈に混乱が生じた。
最低代替税(MAT)とは、会計上の利益の18.5%が法人税額(控除などを含めた税法上の算出額)を上回る場合に支払う税金。企業による最低限の納税を確実にするために1990年代半ばに導入された。また、4月下旬に2015年度予算の修正案が連邦議会に提出され、4月以降は外国籍債券ファンドとプライベート・エクイティ・ファンドついてはMATの納税義務が免除されること、加えて、有価証券の売却益、外国企業に支払われるロイヤルティー・技術サービス料はMATの課税対象から除外されることが明確にされた。
ジャイトリー財務相は、2月下旬の連邦政府予算演説で、外国籍株式ファンドは4月以降については、MATの納税義務が免除されることを明らかにしていたが、今回、債券についても外国機関投資家の懸念は払拭された。
政府の対応努力で市場の懸念薄れている。外国機関投資家の間で高まる反発を受けて、政府はこれを和らげるべく対応した。外国機関投資家と電話会議を行い、「シンガポールやモーリシャスを含め(二重課税を回避するための)租税条約締結国の外国ポートフォリオ投資家(FPI)は、過去のMATの支払義務はない」と繰り返し述べた。
モディ政権は事業活動推進に向け税制を整備している。一方、モディ首相は約1年前の就任以降、国内外の企業にとり、インドでの事業活動を営みやすい税制を整備し、新たに課税を遡及適用することは控えることを公約した。また、政府は今後4年間で法人税率を現行の30%から25%に引き下げる方針を示した。5月には物品・サービス税(GST)導入のための改正法案が下院を通過し、インド史上最も野心的な税制改革の実施が一歩現実に近づいた。GSTは従来の物品税、サービス税、州付加価値税(VAT)、入境税、入市税、その他の州税を統合したものであり、2016年4月1日からの導入が提案されている。
【編集 : 高橋大地】