2015年6月16日、HSBC投信は、インドのモディ政権の経済や金融マーケットの現状や見通しについて分析を伝えた。
5月のインド株式市場は上昇、債券市場の利回りは低下した一方、通貨ルピーは対米ドルで下落している。利下げ期待が株式·債券市場に好材料となり、インド準備銀行(中央銀行)は6月2日に利下げを実施した。
インド政府は、燃料価格の規制緩和、インフレ目標の設定、新たな天然資源配分方針、手当の直接給付制度(DBT:各種補助金など手当てを受益者の銀行口座に直接振り込む制度)、労働法改正、税制改革などを行なっている。また、インドを世界の生産·輸出基地とする「メーク·イン·インディア(インドでものづくりを)」構想、若者の技術力向上を図る「スキル·インディア」構想を含む多くの改革試案を推進している。
この1年間、主要経済指標は改善しており、インフレ率は低下、景気は緩やかに回復、経常赤字は縮小した。また、ルピー相場が比較的安定して推移している点も注目されている。
モディ首相は、インドへの投資促進を目的に、過去1年間、アメリカ、日本、中国、フランス、ドイツなど諸外国を積極的に訪問した。
米大手格付け会社ムーディーズ·インベスターズ·サービスは4月にインド国債の格付けの見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げている。これはインド経済に対する信認回復の表れであり、投資先としてのインドの魅力を向上させている。
1年目に複数の重要法案を成立させたモディ政権は、今年度も改革を積極的に推進すると見られる。物品·サービス税(GST)の導入、土地収用法改正等の重要法案の成立は難航しているが、モディ政権は改革前進に向けた強い決意を表明、また非伝統的な政策手段(大統領令発令など)を活用する用意があることも示しており、今後の展開に期待が持てる。
『注目されるモンスーン期の降雨量』
インド経済にとり、モンスーン期(6月~9月)の降雨量は非常に重要だ。雨量が少ない場合には、農産物の不作から経済成長率の低下、また食料品価格上昇からインフレの加速を招く可能性がある。
インド気象局は今年のモンスーン期の降雨量の予測を長期実績平均に対し93%から88%に下方修正した。90%以下は雨不足と見なされる。
市場では、インフレへの影響が懸念されているが、予想以上の降雨不足の場合でも、政府は在庫の取り崩しなど、供給サイドからの対応策を講じることが見込まれる。
6月末には状況がより明確になるが、現時点まででは、長期実績平均を5%上回る降雨量が観測されているとの現地報道もある。当面は、インド経済を見る上で、気象情報に注意したい。
『株式市場』
5月のインド株式市場は2カ月連続で下落した後、上昇に転じた。企業決算が低調となったものの、利下げ期待の高まりが上昇要因となった。
2015年1~3月期の企業業績は予想より弱い内容となり、MSCIインド指数構成企業のうち純利益が市場予想を下回った企業の割合は約50%に達したが上回った企業は約35%にとどまった。
企業収益の本格的回復は後ずれする見通しだが、投資効率の向上、財政·金融両面での緩和策と経済成長の加速を背景に、インド企業の利益率は今後3~4年間で約2倍に上昇する見込みである。
『債券市場』
5月はインド10年国債利回りが一時8%近くまで上昇した後に低下し、前月末を下回る7.64%で取引を終えた。
インド準備銀行(中央銀行)は6月2日、今年3回目の利下げを実施し、レポ金利を0.25%引き下げ7.25%とした。今年に入り前倒しで利下げを実施しており、当面は政策金利を据え置くと見られる。中央銀行は次の一手の前に、モンスーン期の降雨量、金融政策の波及効果、米国の金融政策、原油価格動向等の重要な要素を注視すると見られる。
『為替市場』
インドルピーは5月も対米ドルでは下落傾向となったが、大半の主要アジア通貨をアウトパフォームした。
アメリカの利上げ観測を背景とした米ドル全面高の流れが続いているが、対米ドルで65ルピーを超えるルピー安進行はインフレ圧力の高まりに繋がる恐れがあり、中央銀行は容認しないと考えられる。
今後のルピー相場について引き続き強気に見ている。アメリカとインドの間のインフレ率格差は安定ないし縮小傾向、原油安と経常赤字の縮小も引き続きルピー相場の下支え要因となろう。インドルピーは、対米ドルでは現在の64.1ルピーから強含み、中期的に米ドルに対して60―64ルピーのレンジ内で推移すると予想。
【編集 : 高橋 大地】
5月のインド株式市場は上昇、債券市場の利回りは低下した一方、通貨ルピーは対米ドルで下落している。利下げ期待が株式·債券市場に好材料となり、インド準備銀行(中央銀行)は6月2日に利下げを実施した。
インド政府は、燃料価格の規制緩和、インフレ目標の設定、新たな天然資源配分方針、手当の直接給付制度(DBT:各種補助金など手当てを受益者の銀行口座に直接振り込む制度)、労働法改正、税制改革などを行なっている。また、インドを世界の生産·輸出基地とする「メーク·イン·インディア(インドでものづくりを)」構想、若者の技術力向上を図る「スキル·インディア」構想を含む多くの改革試案を推進している。
この1年間、主要経済指標は改善しており、インフレ率は低下、景気は緩やかに回復、経常赤字は縮小した。また、ルピー相場が比較的安定して推移している点も注目されている。
モディ首相は、インドへの投資促進を目的に、過去1年間、アメリカ、日本、中国、フランス、ドイツなど諸外国を積極的に訪問した。
米大手格付け会社ムーディーズ·インベスターズ·サービスは4月にインド国債の格付けの見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げている。これはインド経済に対する信認回復の表れであり、投資先としてのインドの魅力を向上させている。
1年目に複数の重要法案を成立させたモディ政権は、今年度も改革を積極的に推進すると見られる。物品·サービス税(GST)の導入、土地収用法改正等の重要法案の成立は難航しているが、モディ政権は改革前進に向けた強い決意を表明、また非伝統的な政策手段(大統領令発令など)を活用する用意があることも示しており、今後の展開に期待が持てる。
『注目されるモンスーン期の降雨量』
インド経済にとり、モンスーン期(6月~9月)の降雨量は非常に重要だ。雨量が少ない場合には、農産物の不作から経済成長率の低下、また食料品価格上昇からインフレの加速を招く可能性がある。
インド気象局は今年のモンスーン期の降雨量の予測を長期実績平均に対し93%から88%に下方修正した。90%以下は雨不足と見なされる。
市場では、インフレへの影響が懸念されているが、予想以上の降雨不足の場合でも、政府は在庫の取り崩しなど、供給サイドからの対応策を講じることが見込まれる。
6月末には状況がより明確になるが、現時点まででは、長期実績平均を5%上回る降雨量が観測されているとの現地報道もある。当面は、インド経済を見る上で、気象情報に注意したい。
『株式市場』
5月のインド株式市場は2カ月連続で下落した後、上昇に転じた。企業決算が低調となったものの、利下げ期待の高まりが上昇要因となった。
2015年1~3月期の企業業績は予想より弱い内容となり、MSCIインド指数構成企業のうち純利益が市場予想を下回った企業の割合は約50%に達したが上回った企業は約35%にとどまった。
企業収益の本格的回復は後ずれする見通しだが、投資効率の向上、財政·金融両面での緩和策と経済成長の加速を背景に、インド企業の利益率は今後3~4年間で約2倍に上昇する見込みである。
『債券市場』
5月はインド10年国債利回りが一時8%近くまで上昇した後に低下し、前月末を下回る7.64%で取引を終えた。
インド準備銀行(中央銀行)は6月2日、今年3回目の利下げを実施し、レポ金利を0.25%引き下げ7.25%とした。今年に入り前倒しで利下げを実施しており、当面は政策金利を据え置くと見られる。中央銀行は次の一手の前に、モンスーン期の降雨量、金融政策の波及効果、米国の金融政策、原油価格動向等の重要な要素を注視すると見られる。
『為替市場』
インドルピーは5月も対米ドルでは下落傾向となったが、大半の主要アジア通貨をアウトパフォームした。
アメリカの利上げ観測を背景とした米ドル全面高の流れが続いているが、対米ドルで65ルピーを超えるルピー安進行はインフレ圧力の高まりに繋がる恐れがあり、中央銀行は容認しないと考えられる。
今後のルピー相場について引き続き強気に見ている。アメリカとインドの間のインフレ率格差は安定ないし縮小傾向、原油安と経常赤字の縮小も引き続きルピー相場の下支え要因となろう。インドルピーは、対米ドルでは現在の64.1ルピーから強含み、中期的に米ドルに対して60―64ルピーのレンジ内で推移すると予想。
【編集 : 高橋 大地】