2015年7月20日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo47」に、『広がれJICAプロジェクト・安全でおいしい酒を農家と大学、手をとり着実な歩み』と題する記事が掲載された。
アンコールビールほど一般的ではないが、カンボジアの農家で昔から造り続けらているスラソー。日本の協力は、酒造農家の収入増にも役立っている。
(記事)少しひんやりとした薄暗い建物に一歩入ると、甘酒のようなまったりとした香りに包まれました。タケオ州スバイロムデン村に住むロス・チャンティさん(35)の酒蔵です。
チャンティさんは、伝統的な手法で米蒸留酒「スラソー」をもう13年余り作っています。でも、同じ村でスラソーを作っているのは、3人。「酒造りは、ちっとも儲けにならない、と思われています。私もそう思っていました」チャンティさんによれば、スラソーを造るのは、豚のエサになる酒粕を得るのが主目的という人が多いようです。
また、農村では今も冠婚葬祭や宴席に欠かせないスラソーですが、一方で「美味しくない」「何が混ざっているか分からず危険」というイメージも浸透してしまっています。
そこで、2008年より名古屋大学とカンボジア王立農業大学は、日本人醸造専門家の協力を得て、安全で高品質な酒を造るための改良技術を研究・開発しました。その技術を酒造農家に身に付けてもらおうと、両大学によるJICAの草の根技術協力事業「伝統産業の復興による農産物加工技術振興プロジェクト」が2010年12月から3年間、タケオ州にて実施されました。
事業では、104軒の農家を対象に、酒のカメやシートをきちんと洗うなど、衛生・品質管理を学ぶ基礎研修が行われ、さらに、高い品質の付加価値商品の製造・販売を目指す農家のために上級研修が行われました。
その後プロジェクトでは、高品質酒製造ガイドラインに沿って工程管理・品質管理を行い、高い品質と安全性をクリアした農家の原酒を買取り、王立農業大学で貯蔵・ボトリングをします。そうして出来上がったのが、「スラータケオ(武玉)」です。
チャンティさんも、スラータケオの原酒製造農家の一つです。「プロジェクト参加前は30リットルで35,000リエル(8.75ドル)だったが、質を上げてからは47,000リエル(11.75ドル)になりました。今では酒造りが我が家の主な収入源です」と話します。
「衛生面だけでなく、良い麹の選び方、温度の管理などみんな自分でやっています。10年以上造っていてもなかなか安定しなかった味や質が、一定にできるようになりました」同州アンバッセイ村に住むプー・ドゥイさん(41)も、プロジェクトで手法を学び、スラータケオの原酒にもなる高品質の酒を造れるようになりました。やはり、酒の売値は2.5倍以上に上がったといいます。
ドゥイさんは、「以前はまずい、と言っていた村人も、今では喜んで飲んでくれます」と笑顔を見せました。プロジェクトを実施してきた王立農業大学は、名古屋大学の農学国際教育協力研究センターとともに2010年、大学内でCJHAPというスラータケオの販売会社を立ち上げました。
今ではプノンペンなどの飲食店やおみやげ店を中心に、月に500~600本を出荷しています。「大学の研究で終わらせるのではなく、それを社会に還元するのが大学の使命です。この事業は、大学と地域社会が手を携える素晴らしいモデルケースです」。王立農業大学のセン・モム副学長は言います。「販売市場の拡大など、まだ課題は多くありますが、農家と学生と研究者が互いに学びあっており、それぞれの社会に刺激を与えています。これからが楽しみです」。
【編集 : TY】
アンコールビールほど一般的ではないが、カンボジアの農家で昔から造り続けらているスラソー。日本の協力は、酒造農家の収入増にも役立っている。
(記事)少しひんやりとした薄暗い建物に一歩入ると、甘酒のようなまったりとした香りに包まれました。タケオ州スバイロムデン村に住むロス・チャンティさん(35)の酒蔵です。
チャンティさんは、伝統的な手法で米蒸留酒「スラソー」をもう13年余り作っています。でも、同じ村でスラソーを作っているのは、3人。「酒造りは、ちっとも儲けにならない、と思われています。私もそう思っていました」チャンティさんによれば、スラソーを造るのは、豚のエサになる酒粕を得るのが主目的という人が多いようです。
また、農村では今も冠婚葬祭や宴席に欠かせないスラソーですが、一方で「美味しくない」「何が混ざっているか分からず危険」というイメージも浸透してしまっています。
そこで、2008年より名古屋大学とカンボジア王立農業大学は、日本人醸造専門家の協力を得て、安全で高品質な酒を造るための改良技術を研究・開発しました。その技術を酒造農家に身に付けてもらおうと、両大学によるJICAの草の根技術協力事業「伝統産業の復興による農産物加工技術振興プロジェクト」が2010年12月から3年間、タケオ州にて実施されました。
事業では、104軒の農家を対象に、酒のカメやシートをきちんと洗うなど、衛生・品質管理を学ぶ基礎研修が行われ、さらに、高い品質の付加価値商品の製造・販売を目指す農家のために上級研修が行われました。
その後プロジェクトでは、高品質酒製造ガイドラインに沿って工程管理・品質管理を行い、高い品質と安全性をクリアした農家の原酒を買取り、王立農業大学で貯蔵・ボトリングをします。そうして出来上がったのが、「スラータケオ(武玉)」です。
チャンティさんも、スラータケオの原酒製造農家の一つです。「プロジェクト参加前は30リットルで35,000リエル(8.75ドル)だったが、質を上げてからは47,000リエル(11.75ドル)になりました。今では酒造りが我が家の主な収入源です」と話します。
「衛生面だけでなく、良い麹の選び方、温度の管理などみんな自分でやっています。10年以上造っていてもなかなか安定しなかった味や質が、一定にできるようになりました」同州アンバッセイ村に住むプー・ドゥイさん(41)も、プロジェクトで手法を学び、スラータケオの原酒にもなる高品質の酒を造れるようになりました。やはり、酒の売値は2.5倍以上に上がったといいます。
ドゥイさんは、「以前はまずい、と言っていた村人も、今では喜んで飲んでくれます」と笑顔を見せました。プロジェクトを実施してきた王立農業大学は、名古屋大学の農学国際教育協力研究センターとともに2010年、大学内でCJHAPというスラータケオの販売会社を立ち上げました。
今ではプノンペンなどの飲食店やおみやげ店を中心に、月に500~600本を出荷しています。「大学の研究で終わらせるのではなく、それを社会に還元するのが大学の使命です。この事業は、大学と地域社会が手を携える素晴らしいモデルケースです」。王立農業大学のセン・モム副学長は言います。「販売市場の拡大など、まだ課題は多くありますが、農家と学生と研究者が互いに学びあっており、それぞれの社会に刺激を与えています。これからが楽しみです」。
【編集 : TY】