2016年1月1日、住民の力で学校を運営。
シャン州インレー湖上のインポーコンユワティッ中学校分校(※1)では、毎朝202名の生徒がボートで通学する。小学校高学年や中学生のお兄さんお姉さんが、小学校低中学年の子どもたち3-4人を乗せて漕ぐグループ登校だ。ボートから落ちても溺れないように、インレー湖畔で育つ子どもたちは小学校に入学する5歳頃までには泳げるようになるそうだ。そんなインポーコンユワティッ中学校分校で、校舎完成から3年半にわたり地域で取り組んでいる学校運営について話を聞いた。
教育熱心なお国柄のミャンマーではあるが、充分な教育環境が整っているとは言い難い。特に地方では、割れたままの窓ガラスやはがれたままの床板で、生徒たちがケガをしてしまったり、教材や備品が不足してしまったり、都会に職を求めて教員が辞めてしまったり、と校舎が完成してからの学校運営面でも課題が山積しているのが現状だ。シャン州で学校建設事業を行う現地NGOセダナーは、そんな校舎建設後の学校運営についても、地域住民の力で解決することを目指している。校舎建設時の住民による労働奉仕が労賃として換算され、これを元手に、校舎建設後、地域開発事業が実施され、その収益が、校舎の補修、必要教材・備品の購入、補助教員の雇用など、学校運営に充てられる仕組みだ。
インポーコンユワティッ中学校分校建設時の住民の労働奉仕は約48万円と換算され、2012年5月3日の校舎引渡式典で、地域開発事業資金としてセダナーから手渡された。村の世話役、校長や保護者、僧侶などからなる「地域開発委員会」の話し合いにより、地域開発事業は、マイクロファイナンス(※2)に決定。地域住民に小口の融資を提供し、その事業収益を学校運営に役立てることになった。
「地域開発委員会」委員長のアウン・ミンさんによると、現在、周辺236世帯のうち176世帯がこのマイクロファイナンスを利用しているとのこと。融資上限は約3,500円で、利子は毎月3%。融資は、インレー湖周辺の主要産業であるトマトや唐辛子栽培、稲作、畜産などに活用される。1年後に返済義務があるが、開始から3年間の返済率は100%を誇る。
マイクロファイナンス利用者の一人で、中学生のお母さんである、タン・ティさんは、融資された3,500円と自己資金500円で子豚を購入。子豚の餌は、家庭の残飯を使用するので、飼育にはほとんど経費がかからず、1年後には2万円で販売することができた。返済額を差し引いても、この地域の平均月収に相当する収入を得られた。
マイクロファイナンス事業の収益は、これまでに、プリンターや変圧器の購入、教室の増築、補助教員の給料支払に活用された。校舎を案内する校長先生が「この電気もマイクロファイナンス事業収益で引くことができた」と得意そうに教室の蛍光灯をつけてくれた。保護者の努力で設置された電気は、教室だけでなく、子どもたちの未来も明るく照らしているのかもしれない。
(※1)「ミャンマー教育制度」写真参照
(※2)貧困者・低所得者向けに提供される小規模金融サービス。ここでは、小口融資を指す。
【執筆 : 日本財団 田中麻里】
シャン州インレー湖上のインポーコンユワティッ中学校分校(※1)では、毎朝202名の生徒がボートで通学する。小学校高学年や中学生のお兄さんお姉さんが、小学校低中学年の子どもたち3-4人を乗せて漕ぐグループ登校だ。ボートから落ちても溺れないように、インレー湖畔で育つ子どもたちは小学校に入学する5歳頃までには泳げるようになるそうだ。そんなインポーコンユワティッ中学校分校で、校舎完成から3年半にわたり地域で取り組んでいる学校運営について話を聞いた。
教育熱心なお国柄のミャンマーではあるが、充分な教育環境が整っているとは言い難い。特に地方では、割れたままの窓ガラスやはがれたままの床板で、生徒たちがケガをしてしまったり、教材や備品が不足してしまったり、都会に職を求めて教員が辞めてしまったり、と校舎が完成してからの学校運営面でも課題が山積しているのが現状だ。シャン州で学校建設事業を行う現地NGOセダナーは、そんな校舎建設後の学校運営についても、地域住民の力で解決することを目指している。校舎建設時の住民による労働奉仕が労賃として換算され、これを元手に、校舎建設後、地域開発事業が実施され、その収益が、校舎の補修、必要教材・備品の購入、補助教員の雇用など、学校運営に充てられる仕組みだ。
インポーコンユワティッ中学校分校建設時の住民の労働奉仕は約48万円と換算され、2012年5月3日の校舎引渡式典で、地域開発事業資金としてセダナーから手渡された。村の世話役、校長や保護者、僧侶などからなる「地域開発委員会」の話し合いにより、地域開発事業は、マイクロファイナンス(※2)に決定。地域住民に小口の融資を提供し、その事業収益を学校運営に役立てることになった。
「地域開発委員会」委員長のアウン・ミンさんによると、現在、周辺236世帯のうち176世帯がこのマイクロファイナンスを利用しているとのこと。融資上限は約3,500円で、利子は毎月3%。融資は、インレー湖周辺の主要産業であるトマトや唐辛子栽培、稲作、畜産などに活用される。1年後に返済義務があるが、開始から3年間の返済率は100%を誇る。
マイクロファイナンス利用者の一人で、中学生のお母さんである、タン・ティさんは、融資された3,500円と自己資金500円で子豚を購入。子豚の餌は、家庭の残飯を使用するので、飼育にはほとんど経費がかからず、1年後には2万円で販売することができた。返済額を差し引いても、この地域の平均月収に相当する収入を得られた。
マイクロファイナンス事業の収益は、これまでに、プリンターや変圧器の購入、教室の増築、補助教員の給料支払に活用された。校舎を案内する校長先生が「この電気もマイクロファイナンス事業収益で引くことができた」と得意そうに教室の蛍光灯をつけてくれた。保護者の努力で設置された電気は、教室だけでなく、子どもたちの未来も明るく照らしているのかもしれない。
(※1)「ミャンマー教育制度」写真参照
(※2)貧困者・低所得者向けに提供される小規模金融サービス。ここでは、小口融資を指す。
【執筆 : 日本財団 田中麻里】