2015年12月25日、インドの高速鉄道計画で日本の新幹線の採用が決まった。アジアの鉄道に詳しい鉄道ライター、北山くにみさんに実情を聞いた。
インドにおける高速鉄道の建設において、システムの受注が決まりました。インドネシアの高速鉄道の受注競争に敗れた日本にとっては、体制挽回の一歩となり、関係者からは安堵の声が伝わっています。
インドは中国と同様、著しい経済発展を続けており、人口も2022年頃には中国を抜いて世界一となることが見込まれています。インドでは目下、高速交通網の整備が急務となっており、鉄道システムを始めとする日本の技術の輸出先として、有望な市場となっていくのは間違いありません。今回の受注は安倍内閣が成長戦略のひとつに挙げているインフラ輸出の起爆剤となるのは間違いないでしょう。
インドの経済は今後も大きな伸びが期待されおり、インドが国際政治に与える影響力もますます大きくなることは必至です。そのインドと友好関係を強化することは、長期的な国益にも適っているのです。
インドと中国も領土問題を始めとする多くの係争案件を抱えており、地域の主導権争いは今後ますます激化するとの観測もあります。インドにとっては、日本との友好関係を強化することは中国を牽制することに直結します。現在は中国と必ずしも敵対するスタンスをとってはいないインドですが、中国に取り込まれるのは避けたいところです。今回の受注に際してもインド政府の政治的配慮が働いたのは間違いありません。
経済発展が続く中国ですが、その内実は共産党が事実上単独で支配する専制的な体制の国家です。また、法治国家としての基盤はまだまだもろく、法律の恣意的解釈も横行しています。その点、インドは古くから民主主義国家として発展している国で、官民ともに法律や契約を遵守する気風があります。日本とは自由経済や民主主義的な価値観を共有できる国なのです。その意味でも今回のインドでの受注は、日本にとって経済的のみならず、政治的にも大きな効果をもたらすのは間違いないでしょう。
高速鉄道システムとして高い技術水準を誇る日本の新幹線システムですが、長期的な鉄道インフラの輸出を進めていくには、新たな規格や技術の開発も不可欠です。私は遠からず、世界の高速鉄道は現在の粘着式(鉄輪式)から浮上式(リニアモーターカー)の時代にシフトしていくと考えていますが、日本のリニアモーターカーは実用化(営業運転)に時間がかかり過ぎているために、輸出につなげられていません。
ドイツも古くから浮上式リニアモーターカーの開発を進めており、中国にはそのシステム・インフラが輸出され、営業運転も実施されています。ところが、この方法は8mmしか浮上しないため、地震などの災害発生時には甚大な被害をもたらすとの懸念があります。そのためか、中国以外では実用運転されていません。
超伝導を採用した日本のリニアモーターカーは約10cm浮上することから、災害発生時の安全性は格段に高いのです。電気使用量が大きいという欠点はありますが、高速列車の鉄道事故は一度発生すると数百人単位の尊い人命が失われます。日本のリニアは災害が多い自国の弱点を克服するために長い期間かかって開発された極めて優れた技術なのです。2015年には時速604kmを記録して世界の鉄道関係者を驚かせています。
ところが、実用化(営業運転)されていないため、輸出にはつなげられていません。2027年に開業が予定されている品川~名古屋間の中央新幹線(超伝導式リニアモーターカー)は、国費を投入してでも、開業を前倒しする必要があるのではないでしょうか。JR東海は自前での整備を望んでいますが、超伝導リニアこそ、オールジャパンで臨むべきプロジェクトなのです。
新幹線計画が発表された時も、世界の鉄道関係者はその実現性に懐疑的でしたが、東海道新幹線の開業、そしてその後の安定した輸送実績は鉄道復権の起爆剤となり、その後の世界の交通体系の在り方さえ変えてしまったのです。
日本の鉄道インフラ輸出を長期的に進めるには、実用化された超伝導リニアを実証材料としてリニアの売り込みも進めていくべきなのではないでしょうか。日本の新幹線技術は国際的に高い評価を得ていますが、やがては色あせます。リニア技術の海外輸出を国策として押し進めていくべきなのではないでしょうか。
【編集 : 高橋健二】
インドにおける高速鉄道の建設において、システムの受注が決まりました。インドネシアの高速鉄道の受注競争に敗れた日本にとっては、体制挽回の一歩となり、関係者からは安堵の声が伝わっています。
インドは中国と同様、著しい経済発展を続けており、人口も2022年頃には中国を抜いて世界一となることが見込まれています。インドでは目下、高速交通網の整備が急務となっており、鉄道システムを始めとする日本の技術の輸出先として、有望な市場となっていくのは間違いありません。今回の受注は安倍内閣が成長戦略のひとつに挙げているインフラ輸出の起爆剤となるのは間違いないでしょう。
インドの経済は今後も大きな伸びが期待されおり、インドが国際政治に与える影響力もますます大きくなることは必至です。そのインドと友好関係を強化することは、長期的な国益にも適っているのです。
インドと中国も領土問題を始めとする多くの係争案件を抱えており、地域の主導権争いは今後ますます激化するとの観測もあります。インドにとっては、日本との友好関係を強化することは中国を牽制することに直結します。現在は中国と必ずしも敵対するスタンスをとってはいないインドですが、中国に取り込まれるのは避けたいところです。今回の受注に際してもインド政府の政治的配慮が働いたのは間違いありません。
経済発展が続く中国ですが、その内実は共産党が事実上単独で支配する専制的な体制の国家です。また、法治国家としての基盤はまだまだもろく、法律の恣意的解釈も横行しています。その点、インドは古くから民主主義国家として発展している国で、官民ともに法律や契約を遵守する気風があります。日本とは自由経済や民主主義的な価値観を共有できる国なのです。その意味でも今回のインドでの受注は、日本にとって経済的のみならず、政治的にも大きな効果をもたらすのは間違いないでしょう。
高速鉄道システムとして高い技術水準を誇る日本の新幹線システムですが、長期的な鉄道インフラの輸出を進めていくには、新たな規格や技術の開発も不可欠です。私は遠からず、世界の高速鉄道は現在の粘着式(鉄輪式)から浮上式(リニアモーターカー)の時代にシフトしていくと考えていますが、日本のリニアモーターカーは実用化(営業運転)に時間がかかり過ぎているために、輸出につなげられていません。
ドイツも古くから浮上式リニアモーターカーの開発を進めており、中国にはそのシステム・インフラが輸出され、営業運転も実施されています。ところが、この方法は8mmしか浮上しないため、地震などの災害発生時には甚大な被害をもたらすとの懸念があります。そのためか、中国以外では実用運転されていません。
超伝導を採用した日本のリニアモーターカーは約10cm浮上することから、災害発生時の安全性は格段に高いのです。電気使用量が大きいという欠点はありますが、高速列車の鉄道事故は一度発生すると数百人単位の尊い人命が失われます。日本のリニアは災害が多い自国の弱点を克服するために長い期間かかって開発された極めて優れた技術なのです。2015年には時速604kmを記録して世界の鉄道関係者を驚かせています。
ところが、実用化(営業運転)されていないため、輸出にはつなげられていません。2027年に開業が予定されている品川~名古屋間の中央新幹線(超伝導式リニアモーターカー)は、国費を投入してでも、開業を前倒しする必要があるのではないでしょうか。JR東海は自前での整備を望んでいますが、超伝導リニアこそ、オールジャパンで臨むべきプロジェクトなのです。
新幹線計画が発表された時も、世界の鉄道関係者はその実現性に懐疑的でしたが、東海道新幹線の開業、そしてその後の安定した輸送実績は鉄道復権の起爆剤となり、その後の世界の交通体系の在り方さえ変えてしまったのです。
日本の鉄道インフラ輸出を長期的に進めるには、実用化された超伝導リニアを実証材料としてリニアの売り込みも進めていくべきなのではないでしょうか。日本の新幹線技術は国際的に高い評価を得ていますが、やがては色あせます。リニア技術の海外輸出を国策として押し進めていくべきなのではないでしょうか。
【編集 : 高橋健二】