2016年1月22日、HSBC投信は、インド市場を見る眼~現地からの報告を発表した。レポートによると、インドは原油安ショックに強い。インフラ投資促進のための国家基金を設立。株式・債券・為替市場は、12月は株式・債券・通貨いずれも方向感に乏しい展開。世界的な投資家のリスク回避志向、国内では冬季国会での物品サービス税(GST)法案の不成立などがマイナス要因となる一方、良好な国内景気指標はプラスに働いたと伝えた。
下記はその詳細。
1. インドは原油安ショックに強い
原油価格の大幅下落は多くの国に打撃を与えているが、石油輸入国であるインドには恩恵をもたらしている。原油安は、インドの貿易・経常収支の改善とインフレ率の低下に寄与しており、昨年は4回の利下げが可能となった。
インドの石油純輸入額は、原油価格が下落基調を辿る中、ピーク時の2012年と比べ2015年は半分近くまで減少した。また、今後、仮に原油価格が1バレル=40米ドルで推移すれば、2016年の石油純輸入額はさらに大幅に減少し、2012年と比べると700億米ドルの輸入額減少になると推計される。原油価格の下落は、インドの貿易収支改善に大きく寄与することになる。
一方、政府は、税収増を目的に、原油の輸入関税の再導入を検討中と伝えられている。原油に対しては、2011/2012年度(2011年4月-2012年3月)まで5%の関税が適用されていたが、原油価格の大幅上昇を受けて、同年度に同関税は撤廃された。
最近の原油安は、政府が強い抵抗を受けることなく、原油輸入関税を再導入し、税収を増やす機会をもたらしている。
但し、最近の原油価格急落は、投資家のリスク回避志向を高め、世界的な株安の原因の一つとなっている。インド株式市場にもその影響が及んでおり、短期的にはこのマイナス面にも留意が必要である。
2.インフラ投資促進のための国家基金を設立
政府は、インド国内のインフラプロジェクトへの資金供給を目的に、国家インフラ基金(NIIF -National Investment and Infrastructure Fund)を設立、60億米ドル程度の投資が計画されている。
NIIFは、新規及び既存のインフラプロジェクトに投資、現在中断されているプロジェクトにも資金を提供する。
インドは、道路を中心とする輸送網整備や発電所建設などに大規模な投資を必要としているが、多くのインフラプロジェクトは資金不足から停滞している。NIIFの設立は、インフラ関連企業を強力に支援し、インフラプロジェクトの前進に大きく寄与することが見込まれる。
ジャイトリー財務相は、「シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシアを含む政府系ファンドや年金基金が、NIIFへの出資に関心を示している」としており、外国からの資本参加も期待できる。
<マーケットサマリー>
株式市場
インド株式市場のアウトパフォームに期待
12月のインド株式市場は月前半に下落し後半に値を戻す展開となり、結局、代表的株価指数のSENSEX指数は前月末比-0.1%で取引を終えた(図表1参照)。海外では米国の利上げ、国内では冬季国会での物品サービス税(GST)法案の不成立などが悪材料となった一方、堅調な国内景気指標はプラスに働いた。
2015年の年間騰落率(SENSEX指数は-5.0%)は2011年以来のマイナスを記録したが、他の主要新興国市場を上回った。当社では、2016年もインドのアウトパフォームが続くと見ている。その理由としては、高い経済成長率見通し、政策に対する信頼性、金利低下余地、企業収益の回復見通し、中国経済の減速に対する耐性、が挙げられる。
投資家のリスク回避志向の高まりを背景とした世界的な株式市場下落の影響は、インド株式市場にも波及している。しかし、リスクオフモードが後退し市場が落ち着きを取り戻せば、インド株式市場は再び他市場をアウトパフォームする展開になると予想される。
債券市場
4月以降に追加利下げを予想
12月のインド債券市場は、10年物国債利回りが0.02%低下し(価格は上昇)7.76%となった。
財政赤字は縮小しており、2015年4月-11月の赤字額は政府計画に対し87%にとどまった。インド準備銀行(中央銀行)は、政府の2016/2017年度の予算案で財政赤字削減見通しを確認した後、今年4月以降に追加利下げを行うと予想している。
消費者物価指数は11月の前年同月比+5.4%から12月は+5.6%に上昇ペースがやや加速した。しかしながら、原油価格が下落を続けていることなどから、今後、インフレ率は抑えられる見通しである。
為替市場
ルピーは底堅い推移を予想
12月のインドルピーは対米ドルで強含んだ。引き続きインドルピーは他のアジア通貨の対米ドル相場と同様の動きを示すと予想する。但し、相対的に良好な経済ファンダメンタルズ、潤沢な外貨準備高、中国人民元との連動性の低さなどから、インドルピーは比較的外的ショックに対する耐性が強いと見られる。
中期的には米国とインドのインフレ格差に縮小傾向が見られるため、ルピー安による競争力維持を図る必要性は低下すると見られる。原油安、潤沢な外貨準備、経常赤字の縮小が引き続きルピー相場の下支え要因となる。ルピーは底堅い推移を予想している。
【編集 : FX】
下記はその詳細。
1. インドは原油安ショックに強い
原油価格の大幅下落は多くの国に打撃を与えているが、石油輸入国であるインドには恩恵をもたらしている。原油安は、インドの貿易・経常収支の改善とインフレ率の低下に寄与しており、昨年は4回の利下げが可能となった。
インドの石油純輸入額は、原油価格が下落基調を辿る中、ピーク時の2012年と比べ2015年は半分近くまで減少した。また、今後、仮に原油価格が1バレル=40米ドルで推移すれば、2016年の石油純輸入額はさらに大幅に減少し、2012年と比べると700億米ドルの輸入額減少になると推計される。原油価格の下落は、インドの貿易収支改善に大きく寄与することになる。
一方、政府は、税収増を目的に、原油の輸入関税の再導入を検討中と伝えられている。原油に対しては、2011/2012年度(2011年4月-2012年3月)まで5%の関税が適用されていたが、原油価格の大幅上昇を受けて、同年度に同関税は撤廃された。
最近の原油安は、政府が強い抵抗を受けることなく、原油輸入関税を再導入し、税収を増やす機会をもたらしている。
但し、最近の原油価格急落は、投資家のリスク回避志向を高め、世界的な株安の原因の一つとなっている。インド株式市場にもその影響が及んでおり、短期的にはこのマイナス面にも留意が必要である。
2.インフラ投資促進のための国家基金を設立
政府は、インド国内のインフラプロジェクトへの資金供給を目的に、国家インフラ基金(NIIF -National Investment and Infrastructure Fund)を設立、60億米ドル程度の投資が計画されている。
NIIFは、新規及び既存のインフラプロジェクトに投資、現在中断されているプロジェクトにも資金を提供する。
インドは、道路を中心とする輸送網整備や発電所建設などに大規模な投資を必要としているが、多くのインフラプロジェクトは資金不足から停滞している。NIIFの設立は、インフラ関連企業を強力に支援し、インフラプロジェクトの前進に大きく寄与することが見込まれる。
ジャイトリー財務相は、「シンガポール、アラブ首長国連邦(UAE)、ロシアを含む政府系ファンドや年金基金が、NIIFへの出資に関心を示している」としており、外国からの資本参加も期待できる。
<マーケットサマリー>
株式市場
インド株式市場のアウトパフォームに期待
12月のインド株式市場は月前半に下落し後半に値を戻す展開となり、結局、代表的株価指数のSENSEX指数は前月末比-0.1%で取引を終えた(図表1参照)。海外では米国の利上げ、国内では冬季国会での物品サービス税(GST)法案の不成立などが悪材料となった一方、堅調な国内景気指標はプラスに働いた。
2015年の年間騰落率(SENSEX指数は-5.0%)は2011年以来のマイナスを記録したが、他の主要新興国市場を上回った。当社では、2016年もインドのアウトパフォームが続くと見ている。その理由としては、高い経済成長率見通し、政策に対する信頼性、金利低下余地、企業収益の回復見通し、中国経済の減速に対する耐性、が挙げられる。
投資家のリスク回避志向の高まりを背景とした世界的な株式市場下落の影響は、インド株式市場にも波及している。しかし、リスクオフモードが後退し市場が落ち着きを取り戻せば、インド株式市場は再び他市場をアウトパフォームする展開になると予想される。
債券市場
4月以降に追加利下げを予想
12月のインド債券市場は、10年物国債利回りが0.02%低下し(価格は上昇)7.76%となった。
財政赤字は縮小しており、2015年4月-11月の赤字額は政府計画に対し87%にとどまった。インド準備銀行(中央銀行)は、政府の2016/2017年度の予算案で財政赤字削減見通しを確認した後、今年4月以降に追加利下げを行うと予想している。
消費者物価指数は11月の前年同月比+5.4%から12月は+5.6%に上昇ペースがやや加速した。しかしながら、原油価格が下落を続けていることなどから、今後、インフレ率は抑えられる見通しである。
為替市場
ルピーは底堅い推移を予想
12月のインドルピーは対米ドルで強含んだ。引き続きインドルピーは他のアジア通貨の対米ドル相場と同様の動きを示すと予想する。但し、相対的に良好な経済ファンダメンタルズ、潤沢な外貨準備高、中国人民元との連動性の低さなどから、インドルピーは比較的外的ショックに対する耐性が強いと見られる。
中期的には米国とインドのインフレ格差に縮小傾向が見られるため、ルピー安による競争力維持を図る必要性は低下すると見られる。原油安、潤沢な外貨準備、経常赤字の縮小が引き続きルピー相場の下支え要因となる。ルピーは底堅い推移を予想している。
【編集 : FX】