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【ミャンマー】子どもたちの未来のために、学校教育支援(7)

Global News Asia 2016年1月29日 10時0分

 2016年1月29日、日本の歯医者さんがシャン州にやってきた(1)

 人生初の歯科健診にガチガチに固まる子どもたち。その緊張を、身振り手振りと覚えたてのミャンマー語でほぐそうとする日本の歯医者さんたち。2016年1月シャン州インレー湖地域の学校では、日本人歯科医師による歯科健診ボランティア活動が行われた。彼らは、機中泊を含む4泊5日の「TOOTH FAIRYミャンマーボランティアツアー」の参加者だ。宮城、千葉、静岡、大阪、兵庫、宮崎、長崎から、多忙な勤務をやりくりして駆けつけた歯医者さん12人によるシャン州での活動を紹介したい。

 日本歯科医師会と日本財団が2009年6月から実施している「TOOTH FAIRYプロジェクト」は、歯科治療で不要になった金属をリサイクルして得た資金で、国内外の子どもたちを支援している。2016年1月現在で、参加歯科医院総数6,127医院、3トン近く回収した貴金属の換金金額は累計9.7億円を突破。このTOOTH FAIRYの基金で、これまでにシャン州に10校、エーヤワディー地域に8校の学校が建設された。日本財団は歯科医師に、このTOOTH FAIRYで支援した学校の子どもたちに対する歯科ボランティアを呼びかけ、2013年から毎年ツアーを開催している。

 1月21日。シャン州ヘーホー空港に降り立った一行は、バスで西に2時間。最初のボランティア活動をするカンバーニ村に向かった。410世帯1,700人が暮らすカンバーニ村への歯科ボランティア訪問は、今回で2回目。一行が到着すると、村をあげての歓迎式典が開催された。昨年も同校を訪れた伊藤雅夫先生は、子どもの歯科・矯正・噛み合わせの専門48年という大ベテランで、「きれいな歯でしっかりかめるということは、毎日元気に働けるということです。私も歯を大事にしています。だから今も元気な72歳の”お兄さんです”」と挨拶。会場に集まった村の住民や子どもたちを和ませた。

 式典の後は、いよいよ歯科検診だ。校庭に教室の机と椅子を置いて、「青空歯科クリニック」が開設された。歯科医師は、健診担当、記録用健診フォーム記入担当、歯の状態チェックシート記入担当と3人1組でチームを組み、各担当をローテーションさせながら、小学生から中学生まで全校生徒288人の歯科健診を行った。子どもたちには、「磨けているけど、左の奥が虫歯になりかけているから注意してね」、「歯ブラシは優しく丁寧にね」などのアドバイスとともに、歯の状態チェックシートと新しい歯ブラシが手渡された。

 「TOOTH FAIRYプロジェクト」の国内難病児支援事業でもボランティア経験のある山崎猛男先生は、ミャンマーボランティアツアーは初参加。「めったに歯科健診がないからか、今日診た子どもたちは順番待ちをしている時から健診中もずっと、日本の子どもたちとは、比べ物にならないほど緊張していた」という印象を受けたそうだ。12人の歯科医師の感想は人それぞれだが、全員が口を揃えるのは、子どもたちの虫歯の多さだ。虫歯だらけで、歯の状態チェックシートが真っ黒になって返される子どもたちも相当数いた。

 ミャンマーでは、特に地方の子どもたちの虫歯が深刻だ。今回が3回目の参加となる訪問診療のスペシャリスト、角町正勝先生は、「ミャンマーの子どもたちの歯は、「虫歯の大洪水」と呼ばれた昭和30~40年代の日本と同じ状態」と説明する。カンバーニ村に同行したシャン州タウンジー歯科医師会のキン・タン・ヌエ先生も歯科医師不足を訴える。ミャンマーでは歯科大学卒業者は4,000人以上いるものの、収入面の不安や歯科設備・材料の不足から歯科医師の道を諦める人も多く、人口5,141万人のミャンマー全体で、歯科医師は約3,000人程度。カンバーニ村が位置するカロー郡でも人口16万人に対して歯科医師は、政府系病院で勤務する公務員歯科医師2名と歯科クリニック開業医の15名の計17名しかいない。さらに無歯科医の地域が広く、歯科受診も限られるため、「歯を大切にする」という意識がなかなか根付かないそうだ。

 健診も中盤になると子どもたちの緊張もほぐれてきた。自分の番が早く来ないかと目を輝かせる子。友達と自分の歯の状態チェックシートを見比べる子。健診を受ける友達につられて、その様子を興味津々に覗き込んでいた子の口も思わず大きく開かれる。今回の歯科健診を通して、初めて「歯を大切にする」意識が芽生えたのかもしれない。健診を終えた後も、自分の歯の状態チェックシートと歯ブラシを大切そうに握り締めている様子が印象的だった。
【執筆 : 日本財団 田中麻里】

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