2016年8月5日、ベトナムのホーチミン市の入国審査で中国人旅行者の所持するパスポートへ蔑視語である「Fuck you」が書き込まれた事件が中国メディアで大きく報じられたのは先月27日のことだ。中国メディアによると事件が発生したのは先月23日、中国広州からホーチミンへ到着、入国審査を受けた中国人女性が入国審査職員に書き込まれたと伝えている。
しかし、発表されるまで5日間経過しているのはやや不思議な印象を受けるのも事実だ。この事件は、ホーチミン市の日本人の間では話題となっているが、ベトナム人にはあまり話題になっていない。
2012年以降に発行された中国のパスポートの8、24、46ページには自国の領土だと一方的に主張する南シナ海と九段線が描かれており、ベトナムやフィリピンは猛烈に反発。ベトナム政府は、対抗処置として中国の2012年以降の新パスポートにはベトナムの入出国印を押さない対応を実施している。
ホーチミン市と中国を行き来する中国の事情通日本人は、問題発覚が遅くなった理由として、「英語教育を受けるようになった20代以下を除き一般的な中国人は英語の基本単語すら知らない人が多く、Fuck youの意味を知らない人が大半だと思われるので、気づかなったのではないかと思います。さらに言うと一般的な中国人はベトナムに対し大した関心を払っていないので、ベトナムの対中国に対する感情のギャップとは雲泥の差なんです」と語る。
ベトナム在住8年の日本人男性は、「ベトナムの入国審査や公官庁などの公的文章では青ペンが使われています。今回の落書きも青色でしたよね? また、ホーチミンのイミグレーション職員は首都ハノイから全員派遣されているのでより政治色が強い人たちが多く勤務しています」と入国職員が書き込んだのではとの見方を示す。
ちなみにタイの入国審査でも青ペンが使われることで知られており、書き込まれたページ画像を見るとタイの入出国印も確認できる。そのため、どうしてベトナム人が犯人だと決めつけるのかと疑問を呈するような情報がベトナムでは流れており、ホーチミン市の女子大生は、「いくら中国との関係が悪くてもベトナム人がそんな幼稚なことをするわけがありません。中国人の自作自演ですよ」と切り捨てる。
ホーチミン市の部品工場の駐在員として滞在する台湾人男性は、「中国人と間違えられることがあり迷惑しています。台湾と中国の違いを説明してもなかなか理解してもらえず苦労することもあります。今回の事件がどちらが書き込んだ犯人とかは正直どうでもよくて、越中間系が悪化することは台湾にとってはチャンスだと思っていますよ。台湾はベトナムといい関係を築いていますから」
「先ほど一般の中国人はベトナムに対して特に興味はないとは紹介したのですが、中国政府レベルでは違います。確かに中国が市民を装った工作員などプロを使っての自作自演の可能性も排除できません。中国は外交=内政なので、内部の不満が政府へ向かってくることを回避するため常に外へ外へ敵を作り、中国人を刺激し、ガス抜きに利用しています。以前は反日デモがそんなガス抜きに利用されたことが有名でしたが、最近は効果がなくなってきたため南シナ海や尖閣諸島など領土問題で人民を煽り共産党への求心力を高めようと必死なんですよ」(前出の中国事情通)
【執筆 : 我妻伊都】
しかし、発表されるまで5日間経過しているのはやや不思議な印象を受けるのも事実だ。この事件は、ホーチミン市の日本人の間では話題となっているが、ベトナム人にはあまり話題になっていない。
2012年以降に発行された中国のパスポートの8、24、46ページには自国の領土だと一方的に主張する南シナ海と九段線が描かれており、ベトナムやフィリピンは猛烈に反発。ベトナム政府は、対抗処置として中国の2012年以降の新パスポートにはベトナムの入出国印を押さない対応を実施している。
ホーチミン市と中国を行き来する中国の事情通日本人は、問題発覚が遅くなった理由として、「英語教育を受けるようになった20代以下を除き一般的な中国人は英語の基本単語すら知らない人が多く、Fuck youの意味を知らない人が大半だと思われるので、気づかなったのではないかと思います。さらに言うと一般的な中国人はベトナムに対し大した関心を払っていないので、ベトナムの対中国に対する感情のギャップとは雲泥の差なんです」と語る。
ベトナム在住8年の日本人男性は、「ベトナムの入国審査や公官庁などの公的文章では青ペンが使われています。今回の落書きも青色でしたよね? また、ホーチミンのイミグレーション職員は首都ハノイから全員派遣されているのでより政治色が強い人たちが多く勤務しています」と入国職員が書き込んだのではとの見方を示す。
ちなみにタイの入国審査でも青ペンが使われることで知られており、書き込まれたページ画像を見るとタイの入出国印も確認できる。そのため、どうしてベトナム人が犯人だと決めつけるのかと疑問を呈するような情報がベトナムでは流れており、ホーチミン市の女子大生は、「いくら中国との関係が悪くてもベトナム人がそんな幼稚なことをするわけがありません。中国人の自作自演ですよ」と切り捨てる。
ホーチミン市の部品工場の駐在員として滞在する台湾人男性は、「中国人と間違えられることがあり迷惑しています。台湾と中国の違いを説明してもなかなか理解してもらえず苦労することもあります。今回の事件がどちらが書き込んだ犯人とかは正直どうでもよくて、越中間系が悪化することは台湾にとってはチャンスだと思っていますよ。台湾はベトナムといい関係を築いていますから」
「先ほど一般の中国人はベトナムに対して特に興味はないとは紹介したのですが、中国政府レベルでは違います。確かに中国が市民を装った工作員などプロを使っての自作自演の可能性も排除できません。中国は外交=内政なので、内部の不満が政府へ向かってくることを回避するため常に外へ外へ敵を作り、中国人を刺激し、ガス抜きに利用しています。以前は反日デモがそんなガス抜きに利用されたことが有名でしたが、最近は効果がなくなってきたため南シナ海や尖閣諸島など領土問題で人民を煽り共産党への求心力を高めようと必死なんですよ」(前出の中国事情通)
【執筆 : 我妻伊都】