2016年8月20日、インド政府はインド準備銀行(中央銀行)の次期総裁にパテル副総裁を指名した。この人事についてHSBC投信が解説レ―ポートを発表した。
インド準備銀行(中央銀行)のラグラム・ラジャン総裁の後任として、ウルジット・パテル副総裁を昇格させると発表した。新総裁は9月4日から3年の任期で総裁を務めることになる。
パテル氏は副総裁としてラジャン総裁とともにインドの金融政策に取り組んできた人物で、特にインフレ目標(現行4%±2%)の導入及び金融政策委員会(MPC)の設置を含む金融政策改革を主導してきた実績を持つ。
パテル氏は著名なエコノミストでもあり、米エール学で経済博士号を取得、国際通貨基金(IMF)でエコノミスト、インド財務省でコンサルタントを務め、2013年1月に中央銀行副総裁に就任していた。
一方、政策金利は、これまで中央銀行総裁が決定していたが、今後は金融政策委員会による合議制となる。同委員会は、パテル新総裁を含む中央銀行幹部3名と政府が指名する3名で構成されると見られており、委員会メンバーは数週間以内に発表される見通し。
金融政策の継続性が市場に安心感
パテル副総裁の総裁昇格は、現行の金融改革路線、金融政策の継続を意味するものと見られる。市場では、本年6月に、内外から信認の厚いラジャン現総裁が退任する意向を表明してから、中央銀行の将来の政策に対する不安感が一部で広がっていた。しかしながら、パテル氏の起用で、市場の不安感は払拭されることが見込まれる。これはインドの株式・債券市場、通貨ルピーにとって中期的なプラス要因となる。
一方、パテル氏はインフレ目標の設定で中心的役割を果たしたタカ派(インフレ抑制重視派)として知られている。足元のインフレ率は上昇しており、7 月の消費者物価指数(CPI) 上昇率は前年同月比+6.1%とインフレ目標圏(4%±2%)の上限を僅かながら上回っている。このため、パテル新総裁は当面、金融緩和に慎重なスタンスをとることが見込まれる。
しかし、インド気象庁では今年のモンスーン期(6月から9月)の降雨量(食料品価格を左右)は平年を上回ると予測しており、実際、6月から7月までは平年以上の降雨量が記録されている。このため、インフレ率は今後低下に向かう見通しであり、中央銀行は引き続き流動性供給拡大で銀行貸出金利の低下を図ると同時に、年内には利下げ余地も出てくるとみられる。
インドに対する投資家センチメントは改善している。経済ファンダメンタルズは新興国の中でもとりわけ良好であり、またモディ政権による構造改革の進展が成長ポテンシャルをさらに押し上げることが見込まれる。8月3日には注目の物品サービス税(GST)法案が上院で可決され、大規模な税制改革が導入される見通しとなった。そして今回はパテル副総裁の総裁昇格で現行の金融政策の継続が明確となった。インドの投資環境は良好との見方は変わらない。
【編集 : KD】
インド準備銀行(中央銀行)のラグラム・ラジャン総裁の後任として、ウルジット・パテル副総裁を昇格させると発表した。新総裁は9月4日から3年の任期で総裁を務めることになる。
パテル氏は副総裁としてラジャン総裁とともにインドの金融政策に取り組んできた人物で、特にインフレ目標(現行4%±2%)の導入及び金融政策委員会(MPC)の設置を含む金融政策改革を主導してきた実績を持つ。
パテル氏は著名なエコノミストでもあり、米エール学で経済博士号を取得、国際通貨基金(IMF)でエコノミスト、インド財務省でコンサルタントを務め、2013年1月に中央銀行副総裁に就任していた。
一方、政策金利は、これまで中央銀行総裁が決定していたが、今後は金融政策委員会による合議制となる。同委員会は、パテル新総裁を含む中央銀行幹部3名と政府が指名する3名で構成されると見られており、委員会メンバーは数週間以内に発表される見通し。
金融政策の継続性が市場に安心感
パテル副総裁の総裁昇格は、現行の金融改革路線、金融政策の継続を意味するものと見られる。市場では、本年6月に、内外から信認の厚いラジャン現総裁が退任する意向を表明してから、中央銀行の将来の政策に対する不安感が一部で広がっていた。しかしながら、パテル氏の起用で、市場の不安感は払拭されることが見込まれる。これはインドの株式・債券市場、通貨ルピーにとって中期的なプラス要因となる。
一方、パテル氏はインフレ目標の設定で中心的役割を果たしたタカ派(インフレ抑制重視派)として知られている。足元のインフレ率は上昇しており、7 月の消費者物価指数(CPI) 上昇率は前年同月比+6.1%とインフレ目標圏(4%±2%)の上限を僅かながら上回っている。このため、パテル新総裁は当面、金融緩和に慎重なスタンスをとることが見込まれる。
しかし、インド気象庁では今年のモンスーン期(6月から9月)の降雨量(食料品価格を左右)は平年を上回ると予測しており、実際、6月から7月までは平年以上の降雨量が記録されている。このため、インフレ率は今後低下に向かう見通しであり、中央銀行は引き続き流動性供給拡大で銀行貸出金利の低下を図ると同時に、年内には利下げ余地も出てくるとみられる。
インドに対する投資家センチメントは改善している。経済ファンダメンタルズは新興国の中でもとりわけ良好であり、またモディ政権による構造改革の進展が成長ポテンシャルをさらに押し上げることが見込まれる。8月3日には注目の物品サービス税(GST)法案が上院で可決され、大規模な税制改革が導入される見通しとなった。そして今回はパテル副総裁の総裁昇格で現行の金融政策の継続が明確となった。インドの投資環境は良好との見方は変わらない。
【編集 : KD】