2016年9月20日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo61」に『小学校から中学校へ広がる「体育コミュニティ」の形成』と題する記事が掲載された。
(記事)日本の特定非営利活動法人「ハート・オブ・ゴールド」(本部・岡山市)が2006年から続けている小学校の体育教育振興プロジェクトが、全国へ、そして中学校へと広がりを見せています。ハート・オブ・ゴールドは、元マラソン選手の有森裕子さんが代表を務めるNGO。
カンボジアでは、体育や障害者スポーツの普及などの活動に取り組んでいます。JICAの草の根技術協力事業として2006年から実施してきた小学校体育科教育振興プロジェクトでは、体育の学習指導要領や指導書案を作成。それまで各学校で、指導の「目標」や「年間計画」もなく実施されていた体育の授業を改善し、拠点州で新しい教え方を広めるトレーナーの育成などに取り組んできました。
こうした小学校での事業と並行して始まったのが、中学校での体育振興です。小学校での学習指導要領・指導書の普及事業は、カンボジア政府に引き渡しますが、カンボジア側は続いて中学校での事業も要望。2015年にハート・オブ・ゴールドと覚書を交わし、中学校の学習指導要領案の作成 が始まりました。
今年末までに学習指導要領は完成し、続いて2017年から2020年まで、指導書の作成と普及が、プノンペン、バッタンバン、スバ イリエンをモデル州として始まります。
ハート・オ ブ・ゴールドの東南アジア事務所長、西山直樹さんによると現在、中学校の体育の授業は、週2時間で年間70時間。内容は、クメール体操や、サッカー、バレーボール、短距離走など。ただ、現場の先生たちからは「何を教えていいか分からない」「年間計画といわれても競技や教え方を知らない」など、悩みの声が上がっています。
「先生たちの話を聞いて思うのは、体育とスポーツの違いが明確ではないということです」と西山さんは指摘します。体育は、体力や技術だけではなく、そこから態度や協調性といった社会性やリーダーシップ、創造性等も含めた「生きる力」を身に付けるもの。
学習指導要領や指導書も、競技のルールや技術を教えるだけでなく、カンボジアの体育科教育が何を目指すのかを共有できるも のにする必要があります。 体育を、スポーツの競技指導ではなく、教育と考えることで、先生たちの教える姿勢も変わってきます。小学校の先生たちを含め、これまで実施してきたワークショップを通じてできた体育関係の教育者のネットワークではフェイスブックなどを通じて、情報の共有が始まっているといいます。
「おもしろいな、と思った教え方を伝え合ったり、体育を教える楽しみを分かち合ったり、だんだんとこの国に体育コミュニティが形成されているのを感じます」と西山さん。
2020年の東京オリンピックや、カンボジア代表選手が活躍をし始めた東南アジア競技大会(SEA GAME)など、体育・スポーツへの関心が高まる今、より幅広い国民の体力づくりに日本の力が貢献しています。
【編集 : YA】
(記事)日本の特定非営利活動法人「ハート・オブ・ゴールド」(本部・岡山市)が2006年から続けている小学校の体育教育振興プロジェクトが、全国へ、そして中学校へと広がりを見せています。ハート・オブ・ゴールドは、元マラソン選手の有森裕子さんが代表を務めるNGO。
カンボジアでは、体育や障害者スポーツの普及などの活動に取り組んでいます。JICAの草の根技術協力事業として2006年から実施してきた小学校体育科教育振興プロジェクトでは、体育の学習指導要領や指導書案を作成。それまで各学校で、指導の「目標」や「年間計画」もなく実施されていた体育の授業を改善し、拠点州で新しい教え方を広めるトレーナーの育成などに取り組んできました。
こうした小学校での事業と並行して始まったのが、中学校での体育振興です。小学校での学習指導要領・指導書の普及事業は、カンボジア政府に引き渡しますが、カンボジア側は続いて中学校での事業も要望。2015年にハート・オブ・ゴールドと覚書を交わし、中学校の学習指導要領案の作成 が始まりました。
今年末までに学習指導要領は完成し、続いて2017年から2020年まで、指導書の作成と普及が、プノンペン、バッタンバン、スバ イリエンをモデル州として始まります。
ハート・オ ブ・ゴールドの東南アジア事務所長、西山直樹さんによると現在、中学校の体育の授業は、週2時間で年間70時間。内容は、クメール体操や、サッカー、バレーボール、短距離走など。ただ、現場の先生たちからは「何を教えていいか分からない」「年間計画といわれても競技や教え方を知らない」など、悩みの声が上がっています。
「先生たちの話を聞いて思うのは、体育とスポーツの違いが明確ではないということです」と西山さんは指摘します。体育は、体力や技術だけではなく、そこから態度や協調性といった社会性やリーダーシップ、創造性等も含めた「生きる力」を身に付けるもの。
学習指導要領や指導書も、競技のルールや技術を教えるだけでなく、カンボジアの体育科教育が何を目指すのかを共有できるも のにする必要があります。 体育を、スポーツの競技指導ではなく、教育と考えることで、先生たちの教える姿勢も変わってきます。小学校の先生たちを含め、これまで実施してきたワークショップを通じてできた体育関係の教育者のネットワークではフェイスブックなどを通じて、情報の共有が始まっているといいます。
「おもしろいな、と思った教え方を伝え合ったり、体育を教える楽しみを分かち合ったり、だんだんとこの国に体育コミュニティが形成されているのを感じます」と西山さん。
2020年の東京オリンピックや、カンボジア代表選手が活躍をし始めた東南アジア競技大会(SEA GAME)など、体育・スポーツへの関心が高まる今、より幅広い国民の体力づくりに日本の力が貢献しています。
【編集 : YA】