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在日外国人の賃貸住宅事情ー日管協フォーラム

Global News Asia 2016年11月17日 9時0分

 2016年11月15日、東京・信濃町の明治記念館で、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会は、日管協フォーラム2016を開催した。

 国際交流部会のパネルディスカッションでは、外国人スタッフや海外で不動産ビジネスを行う経営者を交えて、各国の賃貸事業が紹介された。

 まず、イチイ荻野代表から『世界の賃貸借とマーケット、ユーザー特性の違いとは』と題して、基調講演があり、その後パネルディスカッションに移った。

 コーディネィターは、外国人向けの賃貸保証のサービス及び外国人入居者向けのサービスを展開するグルーバルトラストネットワークスの後藤代表が務めた。

 後藤氏から、在日外国人を理解するためにも、海外での賃貸住宅事情を知り、その人たちの考え方も理解しようという話があり、その後、各国の事情に詳しい担当者が、それぞれの国について解説した。

 フィリピン担当(セブ社会人留学 CEO 若村雄介氏)によると、フィリピンでは、外国人の高級一戸建てやマンションなどは、個人のエージェントは仲介を行ってはいるが、管理会社のようなサービスはあまりなく、多くの場合は、オーナーとの契約書に基づいて問題は対処されるとのこと。長年アメリカの統治下にあったので、契約書を遵守する文化はある。また、一般のフィリピン人が住む部屋は、張り紙などを見て、部屋を探すそうだ。

 タイ・ベトナム担当(エヌアセット 代表 宮川恒雄氏)によると、ベトナムでは、図面がなく、また業法なども整備されておらず、借主から手数料を取る習慣もないので、契約をするのも大変だという。こちらも仲介会社は存在するが管理会社というものは存在しない。また、タイ・ベトナムでは、入居審査のようなものもなく、条件なども明記がないので、何人で住んでも別段問題視されていない。また、水周りの故障なども良く起こるが、その場合はオーナーと直接やり取りをすることが、一般的らしい。

 ネパール担当は、ピープルジャパンにつとめる、ネパール人のワイバ・スニタ氏。ネパールは、オーナーと入居者が直接やり取りをするのが、通常だそうだ。しかし、多くの場合は、オーナーが所有する物件に住んでいるので、相談は比較的しやすい。停電や断水などは、まだまだ日常茶飯事で、住居に関しても細かいところまで、決め事はない状況だ。

 中国について語ったのは、ピープルジャパン、李玲玉氏。中国も、上海や北京などの大都市でも、管理会社はなく、オーナーとやり取りは、直接かあるいは物件を紹介した仲介会社になるそうだ。また李氏によると、中国の賃貸物件は、基本的な家具がついているケースも多く、日本に来て、何もない部屋を案内され驚いたと話していた。

 また、関連の法整備も遅れており、今は貸主の立場は、日本と比べるとかなり強いそうだ。

 最後に、韓国については、韓国出身の金グンエン氏(グローバルトラストネットワークス)が、現状を伝えた。韓国は、契約時に多額の契約金(ジョンセ)をオーナーに預けることで、家賃を払うことはなかったが、近年は金利も大幅に下がってきたので、家賃(ウォルセ)と併用しているとのこと。

 また、仲介会社はあるが、日本のような管理会社はほとんどなく、不動産管理業について日本から知識を得ているそうで、レオパレス、ダイワハウスなども日本から進出している状況。

 各国の賃貸住宅に関する諸条件は、様々で、ゴミの問題、騒音に対する意識、社会の寛容性など、日本とは大きな違いがあるのは現実だ。

 そして、それに対応するには、まだ日本の生活に慣れていない人たちには、多言語で相談出来る窓口を作ったり、母国語に翻訳された資料などを用意して、日本の状況を根気強く、教えて行くことが、管理会社として重要であろう。

 また逆に、日本人側としても、海外の人たちの常識についても、理解をして、可能なところは歩み寄ることも時には大切だという結論に至った。

 住まいの問題を通じて、海外の文化を知るという観点からも、とても有意義な機会であった。次回のフォーラムは、2017年11月14日に明治記念館で行われる予定。

【グローバルコミュニティー編集長 : 宮崎計実】

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