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Global Women Impactors~アジア女性社会起業家の「伴走者」を募る~(4)

Global News Asia 2017年4月24日 9時0分

 2017年4月24日、「私の商品はクラウド上にあります」そう言って、「Global Women Impactors」(※1)発足イベント会場を和ませたのはタイから来日したパチャラポーン・パンスワンさん。東南アジアでは、手工芸や食品を扱う女性社会起業家が多い中、彼女はIT分野の起業家だ。2008年、ITを通じた社会課題解決を目指し、健康と教育分野に特化したスマートフォンアプリを開発し、展開するOpendreamを立ち上げた。

 同社の特徴は、健康や教育分野の専門機関と連携して、質の高いアプリを開発しているところだ。例えば、タイで最初となる健康管理アプリ「DoctorMe」は、Thai Health Promotion Foundation(タイ健康促進財団)と共同で開発した。医学辞典や漢方薬辞典が収録されており、咳、喉の痛み、頭痛、腹痛など病気の諸症状の解説とその治療方法や、救急診療施設などが検索できる。自分の健康状態を記入できるカルテもあり、毎日の健康管理を習慣づけることにより健康意識を高めることが狙いのアプリだ。2011年の配信開始から、80万人にダウンロードされ、そのうち常時4万人は積極的な利用者となっている。

 また、国際機関と連携して、防災教育ゲームアプリも開発。洪水や地震、津波といった自然災害の多い東南アジア向けに、タイ語だけでなく英語を含めた多言語で展開している。「洪水」アプリは、Sai Fahという男の子が、「地震・津波」アプリには「Tanah」という女の子が主人公として登場。ユーザーが、Sai FahやTanahを自然災害から守るようにゲームを進めることで、防災に対する知識が身に付き、防災意識が向上することを目指している。通常の防災テキストで同じ内容を学んだ人に比べて、このゲームを終了したユーザーの方が、防災テストの成績が10-15%程度よかったという結果が出た。

 これまでのダウンロード数から計算すると、健康分野では約115万人、防災を含めた教育分野では65万人が、Opendreamのアプリを利用している。IT技術を使うことで、より多くの人に社会課題への意識啓発を促すことができるのが、Opendreamの強みだ。

 2017年3月に配信した最新のアプリは、タイで深刻な問題となっている汚職に対する意識啓発を目的とした「CORRUPT」だ。タイで実際に起こった汚職事件のケースを小説化して、主人公が、汚職が起こる前にタイムスリップして、どのように対応すればよかったのかユーザーと一緒に考えて冒険が進んでいく。配信開始から、20日間程度で5万人以上がダウンロードをした。

 「私たちは、自分たちが開発したアプリの内容には、とても自信を持っています」とパチャラポーンさん。ただ、Opendreamの仲間、20人全員がエンジニアで、「商売」をすることに対しては、苦手意識がある。それが、彼女が「Global Women Impactors」のメンターシップを希望した理由。「ゲームやアプリ開発が盛んな日本のメンターには、開発後のマーケティングや販売方法、宣伝の仕方を教えて欲しい」。「社会課題の解決をテーマにしても、売れるゲームやアプリができれば、より多くの人と一緒に、社会を変えていくことができる」と話していた。

「Global Women Impactors」では、パチャラポーンさんとともに、日本における社会課題解決型アプリの普及を広めてくれる「伴走者」を求めている。

さて、今月毎週4回に渡ったこちらの連載も、今回を持ちまして一区切りとなります。ご愛読いただき、ありがとうございました。2017年末には5ヶ月間のメンターシッププログラム「Global Women Impactors」の成果が報告さます。日本財団は、本連載でご紹介した3人の女性社会起業家と日本のメンター、国を超えた女性たちのコラボレーションを応援していきたいと思います。

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※1: 「Global Women Impactors」は、日本財団が2017年度より支援するアジアの女性社会起業家への事業能力強化支援を提供するメンターシッププログラム。メンターの応募(2017年4月1日~5月7日)はこちらのURLから↓
https://goo.gl/forms/EHp2VJlw5KzPeteV2

【執筆 : 日本財団 田中麻里】

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