2017年6月29日、HSBC投信は、インド経済レポートを伝えた。
(レポート)インド準備銀行は6月の会合で従来よりハト派寄りの姿勢を示した。金融政策スタンスは「中立」を維持。今後は経済指標を見極めながら、慎重に金融緩和の可能性を探ると見られる。
マーケットサマリー: 5月から6月にかけてのインド株式市場は、主要企業の良好な決算やモンスーン期(6月〜9月)入り後の順調な降雨量などを受けて、年初来の上昇基調を維持。債券市場もインフレ率の低下を背景に、堅調に推移。インドルピーは方向感乏しく小動き(6月23日現在)。
『トピックス』インド準備銀行は慎重なハト派寄りスタンス
インド準備銀行(中央銀行)は、6月7日の金融政策決定会合後の声明で、インフレ率及び経済成長率の見通しを下方修正するとともに、従来よりハト派的な姿勢を示した。
6月の会合では、金融政策委員会(MPC)のメンバーの意見が分かれた。同会合では、政策金利の6.25%での据え置きが決定されたが、6名のMPCメンバーのうちの1名は0.5%の利下げを主張、これに対し他の5名は、利下げは時期尚早との見解を示した。
インフレの短期見通しは、モンスーン期(6月〜9月)の降雨量が平年並みになるとの予想、原油価格の下落、インドルピーの堅調推移、7月導入の物品サービス税(GST)における大半の消費財への比較的低い税率の適用、などを背景に大きく改善した。
しかしながら、中央銀行は前回の会合で、以下の二つの理由から、金融政策スタンスについては「中立」を維持している。
第一は、最近のインフレ率の低下が、昨年11月の高額紙幣廃止の影響(消費者の購買力低下)、野菜・豆類の生産増、ベース効果(前年の水準が高かったことによる上昇率の低下)などによる一過性のものなのか、あるいは継続的なのか不確かな点である。
5月の消費者物価指数(CPI)は、食料品価格の下落を受けて、4月の前年同月比+3.0%から+2.2%へと低下した。また、ベース効果は6月、7月にさらにCPI上昇率を押し下げることが見込まれる。しかし他方で、農産物価格の下落を受けて、現在、インド各地で、農民による抗議運動が行われており、政府は農産物の最低支持価格(MSP)引き上げ圧力を受けている。また、農産物価格の低迷は、先行きの供給減に繋がる可能性もある。
第二に、中央銀行は、今年2月に金融政策スタンスを「緩和」から「中立」に変更したばかりであり、現時点においては、景気及びインフレのリスク・バランスは早急な政策スタンスの再変更を支持するものでない、と考えている。
中央銀行は、時期尚早な利下げにより、その後利上げを強いられ、市場の信頼を失うことを懸念しているようである。また、中央銀行は、現在、インド経済に求められているのは、民間投資の回復、銀行セクターの健全性向上、インフラ投資の障害除去、としている。金融緩和がより効果を発揮するには、これらの課題をクリアする必要がある。
中央銀行の今後の金融政策は経済指標に左右されることが見込まれる。中央銀行は、引き続き利下げには慎重な姿勢を続けると見込まれるが、インフレ率が引き続き低水準で推移すれば、金融緩和余地が生まれると見られる。
【編集 : KL】
(レポート)インド準備銀行は6月の会合で従来よりハト派寄りの姿勢を示した。金融政策スタンスは「中立」を維持。今後は経済指標を見極めながら、慎重に金融緩和の可能性を探ると見られる。
マーケットサマリー: 5月から6月にかけてのインド株式市場は、主要企業の良好な決算やモンスーン期(6月〜9月)入り後の順調な降雨量などを受けて、年初来の上昇基調を維持。債券市場もインフレ率の低下を背景に、堅調に推移。インドルピーは方向感乏しく小動き(6月23日現在)。
『トピックス』インド準備銀行は慎重なハト派寄りスタンス
インド準備銀行(中央銀行)は、6月7日の金融政策決定会合後の声明で、インフレ率及び経済成長率の見通しを下方修正するとともに、従来よりハト派的な姿勢を示した。
6月の会合では、金融政策委員会(MPC)のメンバーの意見が分かれた。同会合では、政策金利の6.25%での据え置きが決定されたが、6名のMPCメンバーのうちの1名は0.5%の利下げを主張、これに対し他の5名は、利下げは時期尚早との見解を示した。
インフレの短期見通しは、モンスーン期(6月〜9月)の降雨量が平年並みになるとの予想、原油価格の下落、インドルピーの堅調推移、7月導入の物品サービス税(GST)における大半の消費財への比較的低い税率の適用、などを背景に大きく改善した。
しかしながら、中央銀行は前回の会合で、以下の二つの理由から、金融政策スタンスについては「中立」を維持している。
第一は、最近のインフレ率の低下が、昨年11月の高額紙幣廃止の影響(消費者の購買力低下)、野菜・豆類の生産増、ベース効果(前年の水準が高かったことによる上昇率の低下)などによる一過性のものなのか、あるいは継続的なのか不確かな点である。
5月の消費者物価指数(CPI)は、食料品価格の下落を受けて、4月の前年同月比+3.0%から+2.2%へと低下した。また、ベース効果は6月、7月にさらにCPI上昇率を押し下げることが見込まれる。しかし他方で、農産物価格の下落を受けて、現在、インド各地で、農民による抗議運動が行われており、政府は農産物の最低支持価格(MSP)引き上げ圧力を受けている。また、農産物価格の低迷は、先行きの供給減に繋がる可能性もある。
第二に、中央銀行は、今年2月に金融政策スタンスを「緩和」から「中立」に変更したばかりであり、現時点においては、景気及びインフレのリスク・バランスは早急な政策スタンスの再変更を支持するものでない、と考えている。
中央銀行は、時期尚早な利下げにより、その後利上げを強いられ、市場の信頼を失うことを懸念しているようである。また、中央銀行は、現在、インド経済に求められているのは、民間投資の回復、銀行セクターの健全性向上、インフラ投資の障害除去、としている。金融緩和がより効果を発揮するには、これらの課題をクリアする必要がある。
中央銀行の今後の金融政策は経済指標に左右されることが見込まれる。中央銀行は、引き続き利下げには慎重な姿勢を続けると見込まれるが、インフレ率が引き続き低水準で推移すれば、金融緩和余地が生まれると見られる。
【編集 : KL】