2017年7月20日、JICAカンボジア事務所が発行する「カンボジアだよりNo71」に『「ジェンダー」の視点を政策に 女性の自立や地位向上を目指し』と題する記事が掲載された。
(記事)JICAカンボジア事務所が、カンボジアでジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた援助事業を始めたのは、1996年です。1991年の内戦終結後、日本の援助活動が再開してから最も早く始まったJICA事業のひとつでした。女性の経済的自立や社会的な地位の向上が、なぜ、戦後の国づくりに急務とされたのでしょうか。20年以上にわたる混乱と内戦で、カンボジアの人口構成は、男性が極端に少ないいびつな形になりました。残された女性たちを支えなければ、国全体の復興が進まない、という側面がありました。
ところが、カンボジアの社会には「男性は金、女性は白い布」という言葉があります。女性は一度汚れてしまえば元の純白には戻れない、という 比喩で、女性は脆弱な存在という考え方につながる側面があります。女性省が「女性は宝石(ネア リー・ラタナク)」という戦略文書をこれまで作成しているように、カンボジアの女性支援事業 は、こうした社会におけるこれまでの考え方とも向き合っていかなくてはならないものでした。
時が経ち、復興から経済成長へとカンボジア社会は変化を遂げました。しかし今度は、経済格差の縮小や貧困の削減が国づくりの大きな課題となりました。そして、自立への支援を必要とする社会的にも経済的にも弱い立場にある人たちの多くが、女性なのです。
◆ 女性支援は、活動や成果が短期間では目に見えにくい分野です。JICAのプロジェクトは1996年以来、カンボジア政府女性省への個別専門家派遣や技術協力プロジェクトといった形で継続してきましたが、具体的には何をしてきたのでしょう。「女性」といっても、さまざまな立場の女性がいます。そこで、JICAのプロジェクトは、女性省を主なカウンターパートとしつつ、その他の省においてもジェンダー主流化に向けた政策立案・実施能力の強化への協力を行うことに加え、他省との連携を通じて、国民の多くが住む農村地域において女性の経済的エンパワーメントを目指す活動を実施してきました。そうした活動におけるパイロット事業として導入されたのは、例えば「養鶏」です。
その対象地域では、小規模な養鶏の技術を住民たちに伝えるだけでなく、その研修においてジェンダーについての知識も得られる機会としました。その後、研修で得られた知識を自発的に活用し始めた農家の中には、現金収入が増えるだけでなく、女性が生き生きと働くことで様々な変化が地域社会にもたらされる事例が見られるようになりました。養鶏を通じて夫婦間の会話が積極的になり、互いの補完的な存在に気付くようになった夫婦。鶏泥棒の見張りのために、夫の深夜の飲酒が減ると ともに家庭内暴力も減った夫婦。教えを乞いに来た隣村の男性たちに研修で得た鶏へのワクチン供与を実践して見せるなど目の前で活躍する妻の姿を誇らしく思い、妻の発言や活動に理解を示すようになった夫もいました。
◆ これまでも、地方でのパイロット事業の実施を通じて、女性の経済的エンパワーメントを促進するための体制整備に貢献してきましたが、さらなる体制強化や能力強化の必要性が確認されていました。そこで今年3月からJICAの新たな事業とし て、「女性の経済的エンパワーメントのためのジェンダー主流化プロジェクト」が始まりました。 これまでのパイロット事業から得られた教訓を踏まえて、女性の経済的エンパワーメントを促進する取り組みが女性省の政策として持続的に運用さ れていくことを目指します。経済成長とグローバル化の中で、カンボジアの女性を取り巻く環境は年々変化しています。どん な社会であっても、女性が自分の意思で生き方を選び、暮らすことができるスキルを持てるよう、きめ細やかな支援が続きます。
【編集 : AY】
(記事)JICAカンボジア事務所が、カンボジアでジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた援助事業を始めたのは、1996年です。1991年の内戦終結後、日本の援助活動が再開してから最も早く始まったJICA事業のひとつでした。女性の経済的自立や社会的な地位の向上が、なぜ、戦後の国づくりに急務とされたのでしょうか。20年以上にわたる混乱と内戦で、カンボジアの人口構成は、男性が極端に少ないいびつな形になりました。残された女性たちを支えなければ、国全体の復興が進まない、という側面がありました。
ところが、カンボジアの社会には「男性は金、女性は白い布」という言葉があります。女性は一度汚れてしまえば元の純白には戻れない、という 比喩で、女性は脆弱な存在という考え方につながる側面があります。女性省が「女性は宝石(ネア リー・ラタナク)」という戦略文書をこれまで作成しているように、カンボジアの女性支援事業 は、こうした社会におけるこれまでの考え方とも向き合っていかなくてはならないものでした。
時が経ち、復興から経済成長へとカンボジア社会は変化を遂げました。しかし今度は、経済格差の縮小や貧困の削減が国づくりの大きな課題となりました。そして、自立への支援を必要とする社会的にも経済的にも弱い立場にある人たちの多くが、女性なのです。
◆ 女性支援は、活動や成果が短期間では目に見えにくい分野です。JICAのプロジェクトは1996年以来、カンボジア政府女性省への個別専門家派遣や技術協力プロジェクトといった形で継続してきましたが、具体的には何をしてきたのでしょう。「女性」といっても、さまざまな立場の女性がいます。そこで、JICAのプロジェクトは、女性省を主なカウンターパートとしつつ、その他の省においてもジェンダー主流化に向けた政策立案・実施能力の強化への協力を行うことに加え、他省との連携を通じて、国民の多くが住む農村地域において女性の経済的エンパワーメントを目指す活動を実施してきました。そうした活動におけるパイロット事業として導入されたのは、例えば「養鶏」です。
その対象地域では、小規模な養鶏の技術を住民たちに伝えるだけでなく、その研修においてジェンダーについての知識も得られる機会としました。その後、研修で得られた知識を自発的に活用し始めた農家の中には、現金収入が増えるだけでなく、女性が生き生きと働くことで様々な変化が地域社会にもたらされる事例が見られるようになりました。養鶏を通じて夫婦間の会話が積極的になり、互いの補完的な存在に気付くようになった夫婦。鶏泥棒の見張りのために、夫の深夜の飲酒が減ると ともに家庭内暴力も減った夫婦。教えを乞いに来た隣村の男性たちに研修で得た鶏へのワクチン供与を実践して見せるなど目の前で活躍する妻の姿を誇らしく思い、妻の発言や活動に理解を示すようになった夫もいました。
◆ これまでも、地方でのパイロット事業の実施を通じて、女性の経済的エンパワーメントを促進するための体制整備に貢献してきましたが、さらなる体制強化や能力強化の必要性が確認されていました。そこで今年3月からJICAの新たな事業とし て、「女性の経済的エンパワーメントのためのジェンダー主流化プロジェクト」が始まりました。 これまでのパイロット事業から得られた教訓を踏まえて、女性の経済的エンパワーメントを促進する取り組みが女性省の政策として持続的に運用さ れていくことを目指します。経済成長とグローバル化の中で、カンボジアの女性を取り巻く環境は年々変化しています。どん な社会であっても、女性が自分の意思で生き方を選び、暮らすことができるスキルを持てるよう、きめ細やかな支援が続きます。
【編集 : AY】