2017年12月26日、HSBC投信はインド経済レポートを伝えた。グジャラート州議会選挙では国政与党・BJPが過半数を確保し州政権を維持。但し、得票率は1%伸びたものの議席数は減少。BJPは都市部で高い支持率を集める一方、地方では苦戦を強いられている。今後は、都市部の有権者を意識した経済政策と地方の貧困救済策や農村対策とのバランスを取りつつ、財政規律も維持することが求められている。
(レポート)グジャラート州議会選で国政与党BJPが6期連続の勝利
インド西部のグジャラート州の州議会選挙が12月に行われ、国政与党・インド人民党(BJP)がモディ首相の地元で6期連続の勝利を収めた。また、BJPは、11月のインド北部のヒマーチャルプラデシュ州議会選挙では、国政野党の国民会議派から州政権を奪還した。この結果、BJPはインド29州のうち19州で単独または連立で与党となった。この19州は、総人口でインド全体の67%、国内総生産(GDP)で63%を占める。
州選挙では連勝のBJPだが、国政では上院の勢力図に直ちに変更はない。上院は定数250議席(2年ごとに3分の1を改選)のうち12議席は大統領指名で、残りの議席は州議会による間接選挙で選出される(下院は直接選挙)。BJPは州議会の過半数以上で多数派となっているが、上院で多数派を形成するには2020年の上院選挙まで待たねばならない。
今回のグジャラート州議会選挙は、BJPにとり重要な意味があった。まず、BJPは過去5期連続でグジャラート州議会を制しており、モディ首相個人の人気に陰りはないものの、有権者の間ではBJPによる長期支配に対し反発が見受けられた。例えば、同州は、国内で工業生産が最も盛んな州だが、州内の中小企業経営者を含む商工業者の多くは、モディ政権が2017年7月に導入した物品サービス税(GST)により、納税手続き面などで様々な困難に直面している。
また、GST導入の8カ月前の2016年11月には、モディ政権は高額紙幣廃止を断行し、インド経済界に衝撃を与えた。高額紙幣の廃止は、電子マネーの普及を後押ししたというプラス面もあったが、高額2紙幣が市中から消滅したことで、企業等のキャッシュフローや収益は短期的に打撃を受けざるを得なかった。こうした中で、今回のグジャラート州選挙は、BJPの支持基盤である同州の商工業者たちの改革に対する賛否を問うミニ国民投票とみなされていた。
グジャラート州議会(定数182)選挙におけるBJPの獲得議席数を見ると、当初の強気の予想を大きく下回る99議席にとどまった。これは、前回(2012年)より16議席少なく、2002年以来最低の結果である。しかし、2017年選挙を別の角度からみると、違う展開が見えてくる。すなわち、BJPの得票率は1ポイント伸び49%となっている。また、地域別には、都市部での議席獲得率がおよそ78%と高水準に達している。他方、国政野党の国民会議派の支持者が多い地方・農村部において、BJPは苦戦を強いられている。
国民会議派はグジャラート州選挙で、改選前より16議席多く、1985年以来最高となる79議席を獲得した。国民会議派は今後予定されるラージャスターン,マディヤプラデシュ、チャッティースガル各州の議会選挙で善戦すると予想されている。これら3州は、困窮に苦しむ農村人口が多く、BJPには厳しい選挙戦となりそうだ。
地方選挙の結果を予想して、それに基づいてインド資産の運用を判断することは、グジャラート州選挙の結果からも明らかなように、賢い戦略ではないと思われる。前述のように、グジャラート州選挙では、BJPが勝利し、得票率を1ポイント伸ばしたにもかかわらず、議席数は16減となった。グジャラート州のように2つの主要政党間で激戦となる選挙では、得票率のわずかな変動が獲得議席数を左右する可能性がある。
インドでは、2018年も主要州で議会選挙があり、2019年には連邦議会下院(定員545)総選挙が予定されている。それらに備えるBJP(2014年下院選で282議席獲得)は、グジャラート州選挙の結果から重要な教訓を学んだはずである。それは政府への要求が都市部と地方では異なることだ。BJPを引き続き支持することが予想される都市部の有権者は政府が約束した景気と雇用の拡大の実現をじっと待ってくれるだろう。しかし他方で、地方や農村部の有権者は天候不順と農産品価格の変動による影響を長期的に軽減してくれる抜本的な構造改革を求めている。
モディ政権が2014年5月に発足してから3年半あまりが過ぎたが、その経済改革はこれまでと概ね同じペースで進められるだろう。BJPは今後、都市部の有権者を意識した経済政策と地方の貧困救済策との間でバランスを取りつつ、財政規律も維持していかざるを得ない。当社では、地方経済の長期的な改善を実現するための唯一の方法は、製造業とサービス業における雇用創出だと考えている。その意味で、政府が今後数ヶ月で道路、橋、空港、都市部地下鉄路線の建設などのインフラ整備と住宅供給策を推進すれば、BJP支持層が大きく伸びる可能性はある。また、政府は農産品に関する最低支持価格(MSP)制度と全国雇用保障法(MNREGA)に基づく救済策を充実させることも見込まれる。
【編集 : CN】
(レポート)グジャラート州議会選で国政与党BJPが6期連続の勝利
インド西部のグジャラート州の州議会選挙が12月に行われ、国政与党・インド人民党(BJP)がモディ首相の地元で6期連続の勝利を収めた。また、BJPは、11月のインド北部のヒマーチャルプラデシュ州議会選挙では、国政野党の国民会議派から州政権を奪還した。この結果、BJPはインド29州のうち19州で単独または連立で与党となった。この19州は、総人口でインド全体の67%、国内総生産(GDP)で63%を占める。
州選挙では連勝のBJPだが、国政では上院の勢力図に直ちに変更はない。上院は定数250議席(2年ごとに3分の1を改選)のうち12議席は大統領指名で、残りの議席は州議会による間接選挙で選出される(下院は直接選挙)。BJPは州議会の過半数以上で多数派となっているが、上院で多数派を形成するには2020年の上院選挙まで待たねばならない。
今回のグジャラート州議会選挙は、BJPにとり重要な意味があった。まず、BJPは過去5期連続でグジャラート州議会を制しており、モディ首相個人の人気に陰りはないものの、有権者の間ではBJPによる長期支配に対し反発が見受けられた。例えば、同州は、国内で工業生産が最も盛んな州だが、州内の中小企業経営者を含む商工業者の多くは、モディ政権が2017年7月に導入した物品サービス税(GST)により、納税手続き面などで様々な困難に直面している。
また、GST導入の8カ月前の2016年11月には、モディ政権は高額紙幣廃止を断行し、インド経済界に衝撃を与えた。高額紙幣の廃止は、電子マネーの普及を後押ししたというプラス面もあったが、高額2紙幣が市中から消滅したことで、企業等のキャッシュフローや収益は短期的に打撃を受けざるを得なかった。こうした中で、今回のグジャラート州選挙は、BJPの支持基盤である同州の商工業者たちの改革に対する賛否を問うミニ国民投票とみなされていた。
グジャラート州議会(定数182)選挙におけるBJPの獲得議席数を見ると、当初の強気の予想を大きく下回る99議席にとどまった。これは、前回(2012年)より16議席少なく、2002年以来最低の結果である。しかし、2017年選挙を別の角度からみると、違う展開が見えてくる。すなわち、BJPの得票率は1ポイント伸び49%となっている。また、地域別には、都市部での議席獲得率がおよそ78%と高水準に達している。他方、国政野党の国民会議派の支持者が多い地方・農村部において、BJPは苦戦を強いられている。
国民会議派はグジャラート州選挙で、改選前より16議席多く、1985年以来最高となる79議席を獲得した。国民会議派は今後予定されるラージャスターン,マディヤプラデシュ、チャッティースガル各州の議会選挙で善戦すると予想されている。これら3州は、困窮に苦しむ農村人口が多く、BJPには厳しい選挙戦となりそうだ。
地方選挙の結果を予想して、それに基づいてインド資産の運用を判断することは、グジャラート州選挙の結果からも明らかなように、賢い戦略ではないと思われる。前述のように、グジャラート州選挙では、BJPが勝利し、得票率を1ポイント伸ばしたにもかかわらず、議席数は16減となった。グジャラート州のように2つの主要政党間で激戦となる選挙では、得票率のわずかな変動が獲得議席数を左右する可能性がある。
インドでは、2018年も主要州で議会選挙があり、2019年には連邦議会下院(定員545)総選挙が予定されている。それらに備えるBJP(2014年下院選で282議席獲得)は、グジャラート州選挙の結果から重要な教訓を学んだはずである。それは政府への要求が都市部と地方では異なることだ。BJPを引き続き支持することが予想される都市部の有権者は政府が約束した景気と雇用の拡大の実現をじっと待ってくれるだろう。しかし他方で、地方や農村部の有権者は天候不順と農産品価格の変動による影響を長期的に軽減してくれる抜本的な構造改革を求めている。
モディ政権が2014年5月に発足してから3年半あまりが過ぎたが、その経済改革はこれまでと概ね同じペースで進められるだろう。BJPは今後、都市部の有権者を意識した経済政策と地方の貧困救済策との間でバランスを取りつつ、財政規律も維持していかざるを得ない。当社では、地方経済の長期的な改善を実現するための唯一の方法は、製造業とサービス業における雇用創出だと考えている。その意味で、政府が今後数ヶ月で道路、橋、空港、都市部地下鉄路線の建設などのインフラ整備と住宅供給策を推進すれば、BJP支持層が大きく伸びる可能性はある。また、政府は農産品に関する最低支持価格(MSP)制度と全国雇用保障法(MNREGA)に基づく救済策を充実させることも見込まれる。
【編集 : CN】