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【書評】国際ジャーナリスト・岡野龍太郎 著『反骨の系譜—常陸国政治風土記物語』

Global News Asia 2021年12月29日 8時0分

 『高天原が関東にあった』。まるでこの言葉に導かれるように、私は、本書の虜になった。ものの名前には由来があるのは最ものことだが、筑波山と霞ケ浦には、単にその土地で古くから呼ばれているから以上のものを元々感じていたからだ。高天原から始まる歴史の中で名付けられたとすれば、雅だけではない日本人のルーツがあるはずだから。

 作者は、日本のみならず、古の中国の歴史も造詣が深い人なのだと思った。そして、繊細な言葉選びからうかがい知ることができる知性。なぜ、このような、地域のことを深く掘り下げながらも、様々な視点から、自分の生まれた土地の時間を描いた本が今までなかったのだろう。

 時折挿入されている「未完の創作」という小説にも、ぐいぐい引き込まれた。なぜこれが未完にならなければならないのか。作者には、是非にでも、一つの形として完成させてほしいと思った。しかし、完成させてしまえば、物語のふり幅が決まってしまう。未完にすることで、読者に想像する可能性を贈ってくれたともとることができる。

 気に入った点を細かに書いていくと、それは感想ではなく、本のネタバレに繋がってしまうので、私は書きたくはない。でも、頷きながら一ページずつをもどかしく開いていった。

 「1冊では足りない」。これが全部読んだ感想だ。「もっと知りたい」。タイトルである「反骨」、穏やかな風土のなかで、どう生まれて来たのか。三章ごとに1冊の本になれば、もっともっと詳しく知ることができるだろう。なぜ作者は、きっとすべてを知っているのに、ヒントだけをこの1冊に散りばめたままで一つの本にしたのか、深く残念に思う。

 ただそれが、「あなたも常陸国に来て、自分の目や足でその事実を探し出し、作者と同じ文献を読んで学べ」という、私の中にもあるだろう「反骨」の心に火を点ける仕掛けだとしたら、恐れ入ったというほかはない。

 すべての歴史は高天原から始まる。そして「それでいいのか?」この問いかけの原点にある反骨から生まれ育つ。大きな学びが詰まっている、溢れている。そう思った。

森田実 氏 (政治評論家)推薦
本書の著者・岡野龍太郎氏は、私が最も敬愛している友であり、実力あるジャーナリストである。私は、岡野氏に、自身の卓越した作家的能力を活かし著述家として生きることを勧めてきた。そして、いま、岡野氏の渾身の一書が誕生した。読者は、本書によって指導者はいかに生きるべきかを学ぶであろう。

これは物語である。そして二〇〇〇年余の時空を超えた常陸国の悠久の歴史への旅である。古代に筑波山と霞ヶ浦に象徴される美しい景観に育まれた常陸国の風土に滔々と流れる日本人の心の源流を探す物語でもある。さらに、これは物語であるが、現代の政治に対する政治評論でもあり、歴史の随筆でもあり、歴史の旅の旅行記でもある。(本書「序章 旅のはじめに」より)

著者紹介
岡野龍太郎(おかの・りゅうたろう)
昭和22年長崎市生まれ、水戸市出身。
中央大学卒。時事通信ニューヨーク特派員、衆議院政策担当秘書、経済産業大臣政務秘書官などを経て中国・青島大学名誉研究員。
時事通信ニューヨーク在勤時代は、70年代のニューヨーク、シカゴ、トロント、ヒューストンなど北米主要10数都市に長期出張するなど米加両国の都市事情に詳しい。その後、香港、シンガポールに長期滞在し、さらに10年前からは、北京、上海、青島はじめ瀋陽から海南島までの中国主要10数都市を数度にわたり訪れ、急成長する新しい中国と70年代の全盛期の米国両国の変化に精通する。大臣政務秘書官・政策担当秘書としての豊富な経験を有し、戦後結党当時の自民党から旧民主党の内情、さらには国内政治と霞が関の表裏を熟知する情報通である。
【編集 : fa】

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