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【コラム】韓国の校長先生になるには、命がけだ

Global News Asia 2022年10月12日 7時0分

 韓国の教職員の定年も、60歳(になる学年)までだろうか。人生100年時代、60歳はまだまだ小僧っこ、であり、洒落っ気があっていい。なのに、校長は基本だいたい白髪。白髪染めをしてはいけないと、教育委員会からお達しがあるのだろうか…。

 学校で、各家庭に文書を出すのは基本、校長名で出される。責任は校長なのかもしれないし、儀礼的なものかもしれない。けれど、現代で校長まで成り上がるには、現場で子どもたちと触れ合っているよりも、昇級試験漬け、教育委員会でご奉仕しなければなれない。人にもよるが、選ばれた人意識も強いし、退職後どこに天下りして「先生先生」と死ぬまで呼ばれ続けたい。なんの事件も起こらず、在任中は、部活の全国優勝とか名誉はあっても、いじめ問題とかは起こらず平穏に過ぎて欲しいと願って、校長先生になるのであろう。

 ところが、このコロナ禍。少なくとも2018年度で退職した校長の経験ではありえないことが起きている。前例がないのだから、文書の責任に関しても、どうとっていいものか謎ではあろう。

 韓国首都圏の中学校では、昨年秋に、新型コロナワクチン予防接種についての案内を出した。韓国であるとしても、そこは日本や他の国と同様に、ワクチン接種については、選択する権利もあるだろう。また今までの病歴からして接種できない人もいるだろう。宗教や個人の主義主張でワクチンを悪とする場合もある。

 1か月後、接種した生徒に副作用(副反応)が生じた。この学校だけでなく、副作用の被害にあってしまった中学生は6人、1人は死亡している。意識不明と四肢麻痺が各1人づつ。

 今年7月、ソウル中央地裁から、当該の校長あてに、A4用紙40枚にも渡る訴状が送られてきた。「ワクチンの副作用(副反応)を保護者に充分に知らせる努力を、校長がしなかった」というものだ。日本の教育委員会に当たる組織あてではなく、校長を名指しで訴えている。私費で弁護士を雇った校長もすでにいる。

 学校では、なんらかの問題があった際の保険に入ってはいる。しかし、昔から入っているものであり、新型コロナが補償範囲には含まれてはいない。

 おそらく訴えた家族は、学校を訴えても、組織と言うものは転勤や定年で「そこで一番偉い人」がうやむやになってしまうことを充分に知ったうえで、接種を勧める文書を出した責任者=校長という個人を生涯追っていくのであろう。

 コロナ禍にたまたま、校長になった。この残酷な運命を誰が、2019年クリスマスに予測したであろう。もちろん、健康な中学生生活を副作用で失った生徒たちにも非はない。

 金銭での解決になった場合、約2070万円を補償しなければならない。退職金では足りない可能性もある。

 教員として上り詰めたと思ったら、とんだコロナ禍。校長になどならずに、現場にいればよかったと反省してもう遅い。相手が許すまで、謝り続けていかなければならない。そこには賠償金もセット。それが、韓国。韓国人同士だって、容赦はない。
【編集 : fa】

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