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【タイ・コラム】日本も見習うことが多い「LGBTQな人たちを取り巻く環境」

Global News Asia 2023年2月8日 6時0分

 タイはLGBTQに対して世界でも最先端な寛容な国として認識されている。しかし、日本では岸田首相が「同性婚を認めれば社会が変わってしまう。」とか、閣僚が「隣に住んで欲しくない。」などなど差別意識を隠しきれない状態で、先進国、特にG7の中でも最悪の状態とも言える。

 実は、タイでも法的に同性婚はまだ認められていない。しかし、政治家による差別的で無理解な発言は、ほとんど聞いたことがない。それは、トランスジェンダーが昔から身近に存在し続けていたからに他ならない。観光客も、タイ社会のアチコチで生き生きと仕事をしているトランスジェンダーの人々に何度となく出会っているだろう。世界一の美しいトランスジェンダーが集うティファニーなどのエンタメの世界だけでなく、普通の会社や工場、商店やレストランや屋台まで、タイ社会のあらゆる場所に彼らを見ることができる。少し話は脱線するが、時々タイでも、トランスジェンダー同士の結婚がにニュースになる。それは、男女が逆転した、つまり「オカマ」と「オナベ」の結婚などは話題になる。この場合は、現在の法律でも入籍ができるからだが、このケースはタイでもニュースになるようにレアケースでもある。

 こうしたLGBTQに寛容なタイ社会は、わたしが初めてタイを訪れた1992年にはすでに見ることができた。そして、タイに移住した2000年頃、ある経営者が「普通の男性や女性よりも、しっかり仕事をしてくれる。」と高い評価をしていた。実はタイでも、LGBTQな人へのイジメがある。特に男の子なのに、心が女の子といった性同一障害の子どもに対して、同級生らによるイジメが、小学校から高校にかけて多い。それは、仲間外れにされたり、不潔なもののように扱われたり、時には直接的に暴力を振るわれたりと日本と変わらないようなことがある。そんな環境で育った彼ら(彼女ら)は、自分の存在意義をしっかりと考える人が多くなるようで、仕事への取り組み方も普通の人よりも必死さ(真剣さ)が違っているようだ。

 わたしが直接体験したことでは、身内がトランスジェンダーと結婚したことがある。妻の妹が女性のトランスジェンダー、つまり日本の俗称で「オナベ」と呼ばれる男性と結婚したのだ。妻の妹とは言え、年が離れていたこともあり、わたしが学費などの面倒を見ていたし、16歳からはバンコクの自宅に下宿させて、高専にあたる学校に通わせた。それだけ自分の娘にも近い思い入れもあった子が、オナベと結婚と聞いて最初は大いに困惑した。しかし、相手の誠実な人となりを知るにつけ、その戸惑いも薄らいだ。そして、わたしが思い至った結論は「下手な男」と一緒になるよりはマシなんじゃないか。ということだった。最終的に二人は離れることになったが、家族付き合いの中では、相手に悪い印象を持ったことは一度もなかった。妹はその後、消防士として働く普通の男性と結婚し、今では子どもも授かって働きながら肝っ玉母さんとして子育てしている。また、オナベくんとは、少し前に街中で偶然会ったのだが、今では工場のマネージャーとして外国人労働者の管理を任されているそうだ。

 次にわたしがよく知るタイのエンタメ業界、中でもルークトゥンと呼ばれる歌謡界での状況を紹介しよう。タイの歌謡界は、お寺やショッピングモールから小さな市場に仮設されたステージでコンサートが行われる。そこではメイクアップやダンサーとして活躍しているトランスジェンダーの人も少なくない。興味深いのは、その多くが振り付けも担当するなどリーダー的な存在が少なくないことだろう。デザインの世界でも見られることだが、トランスジェンダーの美的感覚は、常人よりも優れているように思える。それはたぶん、両方の性について知っていることで、独自の見方や捉え方ができるからではないだろうか。このダンサーの世界でも、振り付けやメイクなど彼女らの美的センスが大いに活かされている。特にこの業界では、彼女たちがいなければなりたたないと思えるほどに彼ら彼女らはしっかりとしたポジションを確立している。

 最後に昨年わたしが日本語の歌詞制作を依頼された「4MIX」というユニットのリーダー「ニンジャー」が言っていた言葉を紹介しよう。「わたしはトランスジェンダーとかLGBTQとか呼ばれて、何か特別な立場か存在として見られることは好きではありません。性格もファッションも人がそれぞれ異なるように、性の自覚も人それぞれだと思います。それを自然なこととして、お互いに人として普通に認め合って、何も意識することなく暮らしていければいいと思っています。」

【執筆 : そむちゃい吉田】

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