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タイの観光復興に隠された危険! 中国人投資家の違法ビジネスが猛威を振るう

Global News Asia 2023年4月5日 10時0分

 2023年4月5日、タイでは、観光復興の目玉ともいえる4年ぶりのソンクラーン祭りを控えている。連日40度に迫る気温とともに、旅行業界も沸騰してきている。しかし、その影で中国人の投資による問題も新型コロナ以前に戻りつつあるようだ。

 複数のタイメディアが警鐘を鳴らしているのは、規制が解除されてから中国人による投資も復活しつつあるということだ。しかし、中には新型コロナ以前に問題となっていた投資規制を回避した厳密には違法なビジネスも復活してきているという。 バンコクにはヤワラートの中華街のほかにも中国人が集まるエリアがいくつかある。その中で、かつて問題視されていたのがホイクワン地区だ。地下鉄ホイクワン駅からラチャダー通りの交差点を東に向かう道沿いには、漢字の看板が多く軒を連ねている。新型コロナが発生する直前まで、中国から新たに入ってきた中小規模の資本によって急激に増加した中華系の店や企業オフィスだ。新型コロナの期間中は、かなり撤退したようだが、ここに来てまた復活してきているという。

 そこで問題となっているのは、それらの企業がいずれもタイ人資本として登記されていることだ。日本人の投資でも行われている慣習でもあるが、タイ人の法人とは名ばかりで、タイ人から名義だけを借りて実態は外国人による経営というものだ。前述の通り、日本人の間でも行われていた手法でもあるが、中国人はなぜか同じエリアに密集する。そのために、このホイクワン地区がリトルチャイナタウンと化している。バンコク都議会による調査では、ホイクワン地区だけで約3000人の中国人が居住し、中国資本とみられる店舗は60軒以上になっているという。

 ある火鍋レストラン経営者の一人は、今年2月初旬にタイ人パートナーと店を開業したが、労働許可を取得する方法を知らなかったという。現在も許可証は取得していない。そのため、名前を明かすことを拒否した。また、タイ人のガールフレンドの名義でレストラン事業をしているもう一人の経営者は、46%の株を保有しており、残りはタイ人パートナーであるガールフレンドの名義だという。

 こうした状況に地元で育ったという52歳の食料品店オーナーは、警戒心を強めている。地域でも一等地にある彼の店には、タイ人エージェントに連れられて何人もの中国人投資家がやってきては、「いくらなら売る?」と迫るように聞かれるという。それでも「中国人投資家には絶対に売らない」と拒み続けている。しかし、他方では中国人投資家らによる資金注入は、地域を若返らせ、活気をもたらしているとして歓迎している人もいる。その代表格でもある中華系不動産業者からはインタビューを拒否されてしまった。

 また、最近ではスワンナプーム空港にも近い、バンナートラート通り沿いに大規模な中国人用ビジネス街が出来つつあり、タイ人企業家から警戒が高まっている。こうした中国人による投資は、周辺の賃貸料高騰を招いている。周辺で火鍋レストランやスーパーマーケットの家賃は、ここにきて4倍になったという。

 こうした問題は、ヤワラートにも近い生花市場パーククロンタラートでも起きている。市場内で小分けされた販売スペースの賃料は、月20万バーツ(約77万円)にまで高騰しているが、以前は5万〜10万バーツだったことからも、多くのタイ人経営者が撤退を余儀なくされているという。そこに新たに入居しているのが中国人たちで、中国から運び込まれてくる安価な生花を売りさばいている。

 長年市場で生花を卸売している男性は、「タイ人には今の家賃を払う資金力はありません。この一年で知り合いの多くが去って行きました」と語る。 外国資本によってタイに活気と収益がもたらされることは大いに歓迎すべきことであろう。しかし、0ドルツアーの事例に見られるように、中国人たちのビジネスは、自身の仲間内に吸い上げられ、タイに投下されることは非常に少なくなっている。それに加えて、賃料や物価の高騰を招いているため、タイの市場が破壊され、タイ人のビジネス機会が大きく損なわれている。具体的には、中国人がドリアンを大量に高値で買い占めていることで、かつては1キロ20〜30バーツだったドリアンの小売価格が、キロ100〜150バーツと暴騰したままになっている。

 観光復興と共に、ビジネス復興も急ぐタイではあるが、急ぎすぎると手痛いしっぺ返しが待っているのかもしれない。これは現在、多くのタイ人企業家が抱いている不安だ。タイ政府は、中国人による投資を規制する法律や監視体制を整備する必要があるだろう。一方で、中国人との協力や交流も重要であることは間違いない。タイと中国は、歴史的にも経済的にも深い関係にある。そのバランスを見極めることが、タイの将来にとって重要な課題となっている。
【編集 : Buadaeng】

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